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時限捜査

ミステリ
ASIN:4488269036ASIN:4488269044 ジェイムズ・F・デイヴィッド / 公手成幸訳 / 創元推理文庫

予備知識のない状態で読むことをおすすめしたい。
下巻末尾の解説も、致命的なネタばらしをしているわけではないが、読むのは本編読了後にした方がいいだろう。他の新刊案内、あるいは書店で現物を見て気になっていた方は、ここから先も見ない方がいいかもしれない。

アメリカ西海岸の都市、ポートランド。事故で娘を失って、酒浸りから復職した過去を持つ刑事が、幼児ばかりを狙う連続殺人者を追う。その捜査の過程で、奇妙な人物の存在が浮かび上がる。どこからともなく現れては人々に注意を促し、時には事故や事件を未然に防いで人々を救う青い肌の男。この男と殺人者にはどんなつながりが……?

殺人犯を追う刑事の捜査を描いたスタンダードなミステリ……と思ったら、強烈な展開が待ち受けている。帯や裏表紙ではやたらと「家族の絆」みたいなテーマを強調している*1が、確かに間違いではない。主人公はもちろん、中盤から登場するヒロインも、そしてそれ以外の人物も、家族やそれ以外の何かを失った過去を抱えている。喪失感といかに向き合うかというテーマは、無茶な仕掛けの存在にも揺さぶられることのない、本書の大きな柱だ。

ちなみに、この作品の刊行と同じ2009年7月には、別の作家の『無限記憶』という本も出ていて、これは『時間封鎖』という作品の続編。題名が漢字四字で創元の本、という以外は特につながりもないはずだが、なぜか紛らわしい。

*1 : おそらく、無茶な仕掛けの存在を予感させないための心配りだろう。


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