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このミステリーがすごい!2005年版

読書
ASIN:4796644067 宝島社

ざっとアンケート回答を眺めたところ。(2004/12/07現在)

ちなみに私が選んだのはこんな作品。


国内
1.『裸者と裸者』打海文三
2.『Q&A』恩田陸
3.『紅楼夢の殺人』芦辺拓
4.『サウダージ』垣根涼介
5.『天才パイレーツ』戸梶圭太
6.『モンスターズ1970』井上雅彦・菊地秀行・田中啓文・友成純一

海外
1.『マンハッタン狩猟クラブ』 ジョン・ソール
2.『地獄の世紀』サイモン・クラーク
3.『奇術師』クリストファー・プリースト
4.『形見函と王妃の時計』アレン・カーズワイル
5.『荊の城』サラ・ウォーターズ
6.『迷宮の暗殺者』デイヴィッド・アンブローズ

『地獄の世紀』を挙げた人が、私のほかには集計外の内藤陳さんだけ、というのがちと寂しい。

学生のころ、所属していた大学サークル枠で海外作品のベスト6を選んだことがある。ちょうどマイケル・スレイドの『グール』が出た年で、私は嬉々としてこいつを上位にぶち込んだ。しかし悲しいことに、その年の「このミス」で、他に『グール』を選んだ人は誰もいなかった。唯一『グール』に言及していたのはバカミスのページだけ。

10年以上前のあの寂しさを、また思い出してしまった。冬の夜は長く寒い……

本の愉しみ、書棚の悩み

読書
ASIN:4794213336 アン・ファディマン / 相原真理子訳 / 草思社

 引っ越しを前に、本の整頓に追われる日々。ふと本屋で見かけたこんな題名の本が気になってしまった。なにしろ「書棚の悩み」である。他人事とは思えない。

 読者としての本とのつきあい方に関する14のエッセイを収めた本である。ちなみに著者は作家で、結婚相手も作家。最初のエッセイでは、ふたりの蔵書を一つにまとめようとしたときのエピソードが語られる。てきとーな夫と緻密な妻が、おのおのの整理法をすり合わせながら蔵書を統合するという難業に立ち向かう、うるわしい物語である。

 本を、読者の人生の断片を形成するものとしてとらえ、書棚をその人の内面がうかがえる場所としてとらえている。明言こそしていないものの、「どんな本を持っているか教えてくれたまえ。君がどんな人物か当ててみせよう」と言わんばかりだ。本を読み、しかも読み終えた本を手元に置きたがる人ならば、共感できるところも多いだろう。

 本を整頓中の身として印象深かったのは、著者が古本屋で買った『本とその収納』という本の話。この本を書いたのはウィリアム・E・グラッドストン、19世紀のイギリスで何度も首相を務めた政治家である。政治と同じくらいに本にも情熱を注いだ人で、
心から本を愛するものは、命ある限り本を家へおさめる作業を人まかせにはしないだろう。
 なんて言葉を遺している。かくしてここでは、グラッドストンが(大英帝国を維持するのと同じようにして)大量の蔵書を管理していた様子が語られる。あいにく、すぐに実行するのは難しいのだが……。ちなみに、可動式の書棚を考案したのはこの人であるらしい。

……そんなわけで非常に楽しく読んだのだけど、どうしよう、また一冊増えちゃったよ。かくして「書棚の悩み」が尽きる日は決してくることがない。

2003/06/23(月) 表紙買い

読書
CDを買うときに、ジャケットだけを見て、そのまま勢いで買ってしまうことがある。

それと同じように、表紙だけを見て買ってしまった本がある。私の場合、ジャケ買いはともかく、表紙買いには「当たり」が多いような気がする。

そんな「当たり」をいくつかご紹介しよう。

ミルクから逃げろ!

ASIN:4899980353 表紙もいいけど、牛乳瓶の形をしたしおりがついてるところがいい。戸梶圭太ばりのアイデア。

フィルス

ASIN:4901142100 表紙は赤、青、黄色の3バージョンあった。
 この本、諸般の事情でうちに2冊あったので、1冊を人にあげることにした。そこで先方に「青と黄色のどっちがいいですか」と聞いたところ、「青と黄色って?」と戸惑わせてしまった。
 ところで表紙のブタは、イギリスのおまわりさんの帽子をかぶっていたりする。これ、本国じゃちょっとした問題になったらしい。
 内容はといえば、股間に湿疹、腹にサナダムシを抱えた、お下劣刑事の鬼畜な日常。ところがどっこい、これが凄まじく泣かせる話なのだな。私にとっては1999年翻訳ものの最高傑作。

愛はいかがわしく

ISBN:4048970089 表紙はゴージャス。借金まみれのしょぼい詐欺師のお話を、こんな景気のいい表紙で飾ってみるというひねり方は好きだ。やっぱり、負け犬野郎の見果てぬ夢、なんだろうな。→詳細

バカなヤツらは皆殺し

ISBN:4562033053 男としてはちょっと嬉しいアングルに惹かれたわけじゃないけど、買ったその日に一気読み。こいつはこれまでに読んだ小説の中でも、確実にベスト10に入るだろう。表紙買いでそんな作品に出会えるってのは、とても運がよかったと思う。→詳細

驚異の発明家の形見函

ISBN:4488016359 いろいろな品が詰め込まれたこの箱が、どうやら「形見函」と呼ばれるものらしい。

 読んでみれば、これが実に内容に合った表紙であることが分かる。この形見函に配された品の一つ一つから紡ぎだされる、ある発明家の生涯。それはやがて、この形見函へと収斂してゆく。

 想像力を刺激してくれる表紙だ。

紙葉の家

ISBN:4789719685 表紙買いというよりはレイアウト買い。本屋で見かけたら、とにかくページを適当にパラパラとめくってみて欲しい。びっくりするから。

地獄のコウモリ軍団

ISBN:4105900153「モンティ・パイソン」に欠かせない、テリー・ギリアムのアニメを思い出した。内容も、モンティ・パイソンとはいささか流儀が異なるものの、やっぱりブラックユーモアがあふれている。毒気の効いた短編集だ。

けだもの

ISBN:4167527626すみません、表紙買いではありません。解説書きました。

ゴヤの「我が子を喰らうサトゥルヌス」は、編集の方が画集を眺めていて「これだ!」とひらめいたとのこと。そういえば、この絵に描かれたサトゥルヌスの狂気は、ある登場人物の妄執にも重なるものがある。

The Twelve Forces―海と大地をてなずけた偉大なる俺たちの優雅な暮らしぶりに嫉妬しろ!

ISBN:4048732617これも表紙買いというよりは、むしろ作者買いな一冊である。
写真で見ても分からないけど、けっこう凝ったつくりなのだ。→詳細

戸梶圭太は、本のデザイン面にも気を配って、自分というブランドのイメージをきちんとコントロールしようとしている。この本に限らず、彼の著書に見られる装丁などの工夫からは、小説「だけ」に触れてきた人間には決して真似のできないセンスが感じられる。

予備知識

読書
書評を書いてる人間が言うことじゃないけれど、新刊本の情報って多すぎる、と感じることがある。どうかすると、本を読む前に内容があらかたわかっちゃう、なんてこともある。

最近(2003/01)残念だったのは、T・ジェファーソン・パーカー『サイレント・ジョー』。
たまたま、本になる前のゲラの段階で、この作品を読ませていただく機会があった。
この作品では、主人公がある属性を負っていて、それはしばらく読まないと明かされない。で、周囲の人が主人公に会ったときの微妙な態度の変化やら、それを受け入れている主人公の独白やらが妙に気になるのだ。これは作品のメインの謎でもなんでもないんだけど、こういう読者の引っ張り方はいいなあ、と思ったものだ。
そんなわけで、本になったのを見たときはちょっとがっかりした。主人公が負う属性の説明が、あっさり本のカバーに書かれていたのだ。
これじゃ、作者の工夫ってなんなんだろう、と思う。

逆に好感が持てるのは、スティーヴン・グリーンリーフ描く私立探偵マーシャル・タナーのシリーズ(実は上記『サイレント・ジョー』と同じ版元)。
実はこのシリーズ、「こんな終わり方で、もう次は出ないんじゃないか」と思わせるような終わり方をする作品がある。
この作品の訳者あとがきがすごーく思わせぶりなのですね。いつもなら「次の作品の冒頭はこんなふう」みたいなことが書いてあるのに。
もうショックのあまりamazonで続刊の有無を検索してしまいました。
『最終章』というシリーズのおしまいを想起させる題名の作品でも、これが本当にシリーズの終わりなのかどうかはネタばらし警報を発した後に書いてたくらい。
こういう気配りって、いいよね。

ついでに、予備知識なしに読むことができてよかった本をいくつか。
  • 山田風太郎『太陽黒点』 ……「びっくりする」とだけ教えられた。廣済堂文庫版は帯や裏表紙でいろんなことを暴露していて、作品の魅力を台無しにすることに全力を尽くすかのような本作りだった。
  • J・グレゴリイ・キイズ『錬金術師の魔砲』 ……上巻裏表紙を見て「こりゃ面白そう」と上下巻一気読み。
  • ジェレミー・ドロンフィールド『飛蝗の農場』 ……仕事として読むことになり、「どれどれ」と読むうちに引きずり込まれた。
  • スティーヴン・グリーンリーフの某作品 ……次巻の存在自体がある種のネタばらしになってる作品。
  • クライブ・カッスラー『マンハッタンを死守せよ』 ……マンハッタンを死守するのは最後の最後だったりする。
  • ジム・トンプスン『内なる殺人者』 ……「よく知らない犯罪小説家」が書いたものを読んでびっくりする、ってのがトンプスンとの最良の出会い方だと思う。「ノワールの帝王」御製の一品をかしこまって拝読するんじゃなくて、ね。

2002/11/13(水) 2002年ベスト6

読書
2001年11月以降の新刊から。
結局、「このミステリーがすごい!」のアンケート回答はこんなふうにしました。

国内

  • 『トカジャンゴ』戸梶圭太
  • 『トカジノフ』戸梶圭太
  • 『ダーク・ムーン』馳星周
  • 『狐闇』北森鴻
  • 『まどろむベイビーキッス』小川勝己
  • 『秘神界』朝松健・編
涙をのんで『ハルビン・カフェ』を落とす。

海外

  • 『髑髏島の惨劇』マイクル・スレイド
  • 『ドラキュラ崩御』キム・ニューマン
  • 『ミルクから逃げろ!』マーティン・ミラー
  • グルーム』ジャン・ヴォートラン
  • 『闇に刻まれた言葉』ジャック・オコネル
  • ミスターX』ピーター・ストラウヴ
涙をのんで『さらば愛しき鉤爪』を落とす。

候補


海外は:
  • 『髑髏島の惨劇』マイクル・スレイド
  • 『ドラキュラ崩御』キム・ニューマン
  • 『ミルクから逃げろ!』マーティン・ミラー
  • 『ミスターX』ピーター・ストラウヴ
  • テキサス・ナイトランナーズ』ジョー・R・ランズデール
  • 『さらば愛しき鉤爪』エリック・ガルシア
  • 『グルーム』ジャン・ヴォートラン
  • 『アイスマン』ジョー・R・ランズデール
  • 『¥999』フレデリック・ベグベデ
  • 『闇に刻まれた言葉』ジャック・オコネル
ここから6冊。

9年前、「このミス」アンケート回答者中ただひとり『グール』を1位に推した者としては、やはり『髑髏島』を挙げないわけにはいかない。



国内は:
  • 『トカジノフ』戸梶圭太
  • 『トカジャンゴ』戸梶圭太
  • 『ダーク・ムーン』馳星周
  • 『狐闇』北森鴻
  • 『ハルビン・カフェ』打海文三
  • 『秘神界』朝松健・編
  • 『アウトリミット』戸梶圭太
  • 黒焦げ美人』岩井志麻子
  • 『デッドウォーター』永瀬隼介
  • 『デッド・ロブスター』霞流一
  • 『グラン・ギニョール城』芦辺拓
  • 『最後の記憶』綾辻行人
  • 『夜の禿鷹2』逢坂剛
ここから6冊。

今年は戸梶一色だ! ……とか思ってたけどちょっと迷っているところ。

読んどきゃよかった

 読み残し。候補にはなったかもしれないもの。
  • 『天球の調べ』エリザベス・レッドファーン