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『[ミステリ]』 で検索

2005/12/22(木) 狼の帝国

日常

[]狼の帝国 / ジャン・クリストフ・グランジェ

さっき読み終えた。たいへん興奮している。

ISBN:448821407X

ついこの間まで「今年のベスト」を選んでいたわけだが、これは来年のベスト有力候補だと断言してしまうくらいに興奮している。

『クリムゾン・リバー』の机の並べ方に随喜の涙を流した人、『コウノトリの道』は面白いけどまともすぎやしないかと思った人には、心の底からお薦めしたい(どっちも自分のことだ)。

彼は自分がスポンサーよりも抜け目がないと思い込んでいた。操られるのではなく、操ることができると思い込んでいたのだ。(p.303)

そうなっていたかもしれない。二〇〇一年九月十一日のことがなければ。(p.316)

……という文章からもうかがえるように、マクロなスケールの妄想と、個人レベルの不安感とが綺麗に重なり合う、きわめて水準の高い陰謀小説である。

このへんもあわせて読むといいだろう。

特に『陰謀と幻想の~』を先に読んでおくと、例えば次のような一節に激しく興奮できる。

〈灰色の狼〉はその失われた大陸を夢見ているのです。(p.443)

すごいよこれは。どうしましょうか。

2005/11/24(木) 怪盗ルパン

日常

[]怪盗ルパン

ポプラ社の全20巻セットISBN:4591996565を購入した。文は南洋一郎。原典からの大胆な改変が多いので、「訳」ではなく「文」になっている。

 その巧妙な改変を絶賛したのが、瀬戸川武資「南洋一郎は天才ではないだろうか」。この文章、セット中の『古塔の地下牢』ISBN:4591085333に解説として載せられている(巻末には「創元ライブラリ『夢想の研究』より」とあったけど、これが収録されてたのは『夜明けの睡魔』ISBN:4488070280じゃなかったっけ)。

 たしかに南洋一郎が手を加えたことがプラスに働いているケースも多いけれど、常にいい結果をもたらすとは限らない。

 たとえば『バーネット探偵社』をもとにした『ルパンの名探偵』。無料で調査を請け負う私立探偵バーネット(正体はルパン)が、事件を解決するついでに関係者から巧妙に金品を巻き上げてしまう連作短編だ。謎解きに加え、バーネットがいかにして利益を得るかという、二段構えの構成を取っている。

 原作でのバーネットは、悪辣な手口も駆使してモノを手に入れるのだが、『ルパンの名探偵』ではそのへんの容赦のない描写が多少抑えられている(慈善団体に寄付する描写を付け加えたり、あるいは「盗み」の描写そのものを省いたり)。子供向けだから、という配慮だろうけど、原作の毒が薄くなっているのも事実。

2005/10/04(火)

日常

[] サルバドールの復活 / ジェレミー・ドロンフィールド

 上下各400ページを超す大作。上巻300ページを過ぎても、話がどっちに転がってゆくのかまったく見えないところは前作『飛蝗の農場』ISBN:4488235069

にも通じる。とはいえお話自体はアレに比べるとずいぶんまっとうなつくりだ(あくまでもアレに比べると、だ)。

 支配的な母によって、クラシック一辺倒の環境で育てられた天才的ギタリスト(東欧の音楽家に「君はギタリストなのにエリック・クラプトンを知らないのか! でもジミ・ヘンドリックスは知ってるだろ?」「それ誰だい?」なんて愉快なやりとりがある)と、彼の周囲の女性たちの物語。

 母親の人物像が強烈で、ロス・マクドナルドを思い浮かべてしまった。凄まじいクライマックスの光景を支えているのも、ロス・マクドナルドとか、あるいは法月綸太郎なんかが描きそうな心情である。

 長いだけあって、脇役についてもしっかり描き込まれている。パソコンに向かうとついゲームを始めてしまって全然原稿が書けない自称小説家なんて、とても他人事とは思えない。

 ともあれ、10日くらいかけて読んだせいか、じっくり楽しむことができた。前作が気気に入った人にはもちろん、気に入らなかった人にも、ドロンフィールドなんて知らない人にもおすすめ。長いだけのことはある。

2005/09/13(火) コメディとみっしり

日常

[] フランス鍵の秘密 / フランク・グルーバー

ISBN:4150017751

 題名が似てるけど、エラリイ・クイーンの初期作品じゃありません。念のため。

 主人公は口八丁のジョニーと筋肉男のサム。二人の商売は本のセールス。野次馬相手にサムが筋肉をアピールして、ジョニーがあなたもこんなマッチョになれる! とあやしげなハウツー本を売りつけるのだ。それなりに本を売って稼いでいるはずなのに、なぜかふところの寒さに悩んでいる。そんなコンビが殺人事件に巻き込まれる愉快なミステリ。

 のっけから事件のまっただ中。話は軽快に進行してゆく。まちがっても「20世紀アメリカミステリの金字塔」みたいな大げさなモノではないけれど、主人公コンビのやりとりに、おバカなエピソードの数々、そしてシビアな金勘定(なにしろ宿泊費が払えなくてホテルを閉め出されるところから始まるのだ)が楽しい。

 そんなわけで内容については大いに満足。

 が、帯の「アメリカ版“フーテンの寅さん”」にはかなり違和感を覚える。この小説は別に下町の人情とか、そういうものは描いていないのだが。むしろ、そういうものとはかなり離れたところに位置していると思う。

 そもそも両者の共通点って、

「男はつらいよ」の第一作でも寅さんは本のタンカ売りをやっていた(訳者あとがき、p.222)

だけでしょ? それは二人組だから「アメリカ版PUFFY」ってのと大して変わらないような気がする(任意のデュオに置き換え可)。

 フランク・グルーバーの著書であることに価値を見いだす人はともかく、「寅さん」的なものを求める人は裏切られるし、あのシリーズが苦手な人は遠ざかってしまうし、なぜあんなことを帯に書いたのか理解に苦しむ。

2005/09/11(日) 生首に凝ってみろ

日常

[] ヘッドハンター / マイケル・スレイド

ISBN:4488126073 / 下ISBN:4488126081

そんなわけで第一作を読み返している。第一作から暴走気味のおもしろさ。うひひひ。

1: こじま 『3列書庫いいですな。うちにある2台の本棚を処分してこれに置き換えたい。やはりそこそこいいお値段しますね。』 (2005/09/13 12:23)

2: ふるやま 『まあ、決心の必要な値段ではありますね。どこにどの本を置こうかと悩みつつ並べているので、みっしり詰まった状態になるにはもうしばらく...』 (2005/09/14 7:08)