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チーム・バチスタの栄光

ミステリ
チーム・バチスタの栄光 海堂尊 / 宝島社

第四回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

困難を極める心臓のバチスタ手術。ある大学病院に、そのバチスタ手術を二〇数回にわたって成功させてきた奇跡のチームがあった。だが、立て続けに手術中の死亡が三件起きた。原因は不明。患者の愚痴を聞くのが主な仕事になっている窓際万年講師の田口は、病院長に頼まれて、内部調査を手がけることになる……。

この作品、受賞がすんなり決まったのも無理はない。キャラクターの動かし方が実に巧みなのだ。わずかな言葉とささやかなエピソードだけで、個々のキャラクターをしっかり描いている。

関係者へのインタビューが延々と続く地味な構成の物語でありながら、そこに退屈さはない。会話を通じて関係者それぞれの個性が描き出される過程はたいへん鮮やかで、人物同士の関係までもがくっきりと浮かび上がる。

その描き方も、ミステリとしての謎解きを強く意識している。語り手の医師・田口による関係者インタビューが前半。その後、厚労省からやってきた変人官僚・白鳥が登場し、田口とは正反対のやり方でインタビューを行う。

普段の田口は、患者の愚痴を聞くのが主な仕事。作中でも、聞き手として相手からさまざまな話を引き出している。対して、後半の白鳥はいわゆる「空気を読めない奴」。傍若無人に気まずい発言を繰り返しては場の雰囲気をかき乱し、地雷を踏んで敵を増やす。

そんな対照的な二人によるインタビュー。同じ人物に異なる角度から光を当てることによって、異なる像が映し出される。この人物像の変転が、謎解きにも結びついている。

光を当てる角度を変えることで、まったく違った絵が浮かび上がる。そういう逆転の意外性こそ、ミステリの大きな魅力だろう。で、この作品はそんな「逆転の快楽」をたっぷり使って組み立てられている。

謎を解いた後の事件の解決まで描いているところも好印象。

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2006/01/18(水)

日常

[]30デイズ・ナイト / スティーヴ・ナイルズ、ベン・テンプルスミス

アメリカ最北の町を舞台にした吸血鬼もの……であるらしい。

ISBN:4896372085

[]迷宮の神 / コリン・ウィルソン

元サンリオ文庫の復刊。訳者・大瀧啓裕の“固有名詞の音は原語の音に可能な限り近づける”方針は本書にも適用されているようだ。

Dalzielを「ダルジール」と表記していたけれど、後になって実は「ディーエル」だと判明した……なんて例もあるので、考え方としては理解できる。

ただ、訳者あとがきをざっと見ると、著者名の「ウィルソン」を本当は「ウィルスン」としたかった……なんて書かれていて、私にはずいぶん細かいように思えた。

ISBN:4488013244

[]隣りのマフィア / トニーノ・ブナキスタ

以前ハヤカワ・ミステリ文庫から『夜を喰らう』が出たときは「トニーノ・ベナキスタ」という表記だったけれど、どちらが原音に近いのだろう(←少し大瀧啓裕に影響されている模様)。

ISBN:4167705052

[]魔術師の夜 / キャロル・オコンネル

キャシー・マロリーシリーズの最新作。読み始めたところ。

1: OK 2006年01月19日(木) 午後1時20分

映画関係の仕事では「ブナキスタ」表記みたいなので、それに合わせたんですかね。
http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=727780

2: 同書担当者の同僚 2006年01月19日(木) 午後5時40分

担当者に「ブぢゃなくてベ」と伝えたところ、一時的に「ベ」で進行していて、最終的に「ブ」になっていたので訳者の意向が反映されているのではあるまいかと思ふです。わたくしは個人的にブナキスタもルヘインも何となくヤ。でも「ネルスン・ドミル」も抵抗があるから一貫してないなあ。

3: ふるやま 2006年01月20日(金) 午前8時23分

なるほど、そういうことですか>OKさん&担当者の同僚さん
そういえば私も、最初に「ルヘイン」を見たときは違和感がありました。


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