メッセージ欄
2008年12月の日記
▼ タイタス・クロウの帰還
【ホラー】
ブライアン・ラムレイ (著), 夏来 健次 (翻訳)
『地を穿つ魔』の続編。
前作の結末から十年。邪神の襲撃に遭い、行方不明となっていたド・マリニーが半死半生で発見された。彼の心に響くのは、離ればなれになったタイタス・クロウの助けを求める声。その声に応えるド・マリニーの助けを得て、ついにクロウは現代の地球に帰ってきた。時間と空間を超えた、クロウの驚異の旅路が語られる……。
クトゥルー眷属邪神群との決戦はまだまだ先。本書では、タイタス・クロウが帰還するまでのオデッセイが語られる。恐竜が大地を闊歩した過去から、人類滅亡後の遠い未来まで。さらには宇宙の彼方に栄える異質な文明との交流も(これがあまり異質な文明という感じがしなくて苦笑。SF向きの作家ではなさそうですね)。
陰謀小説めいた前作とは全く異なる、異境の旅の驚異を描いた物語。小説としてはきわめて荒削りだが、おもちゃ箱をひっくり返したような奔放な楽しさは前作を上回るところも。
『地を穿つ魔』の続編。
前作の結末から十年。邪神の襲撃に遭い、行方不明となっていたド・マリニーが半死半生で発見された。彼の心に響くのは、離ればなれになったタイタス・クロウの助けを求める声。その声に応えるド・マリニーの助けを得て、ついにクロウは現代の地球に帰ってきた。時間と空間を超えた、クロウの驚異の旅路が語られる……。
クトゥルー眷属邪神群との決戦はまだまだ先。本書では、タイタス・クロウが帰還するまでのオデッセイが語られる。恐竜が大地を闊歩した過去から、人類滅亡後の遠い未来まで。さらには宇宙の彼方に栄える異質な文明との交流も(これがあまり異質な文明という感じがしなくて苦笑。SF向きの作家ではなさそうですね)。
陰謀小説めいた前作とは全く異なる、異境の旅の驚異を描いた物語。小説としてはきわめて荒削りだが、おもちゃ箱をひっくり返したような奔放な楽しさは前作を上回るところも。
▼ アインシュタイン・セオリー
【ミステリ】
マーク・アルパート(著), 横山 啓明 (翻訳)
科学史家デイヴィッドの恩師が何者かに襲撃され、謎めいた番号を言い残して死んでしまった。FBIはなぜかデイヴィッドを捕らえて尋問する。このときから、デイヴィッドは強大な破壊力を実現する物理理論の争奪戦に巻き込まれてしまったのだ。
その理論の生みの親はアインシュタイン。彼は生前ひそかに統一場理論を確立していた。だが、理論の悪用を恐れたアインシュタインは、愛弟子の手を借りてその理論を封印してした。そして今、その理論を手に入れようとする者たちが動き出す……。
悪用されたくないなら書き残すなよ、とアインシュタインに突っ込みたくなるような話だが、冒頭から山場の連続で、最後まで飽きることなく読めた。序盤でおもちゃの水鉄砲ひとつで身を守る場面や、自閉症の少年が愛するゲームをはじめ、脇役や小道具の使い方は巧妙。
ただし、前述したような突っ込みどころが目立つのも確か。さすがに、単なる物理法則であればいずれ誰かが再発見してしまうのでは……というところについては一応回答らしきものが用意されていた(これがニコラ・テスラの謎の発明品だったりしたら、もっと再現も難しくなるのだが)。また、論文の隠し方も気になる。どうせ隠すなら、愛弟子もよく考えて隠し場所を選ぶべきだと思った(後から明かされる「バックアップ」の存在はむしろ巧妙なのだが)。
とはいえ、いわゆるジェットコースター風サスペンスとしては十分に楽しめる作品だ。
欲を言えば、せっかく物理理論を話の核に持ってくるのであれば、こんなマクガフィンみたいな扱いではなく、『数学的にありえない』くらいに物語の展開と不可分になっていれば……と思う。
科学史家デイヴィッドの恩師が何者かに襲撃され、謎めいた番号を言い残して死んでしまった。FBIはなぜかデイヴィッドを捕らえて尋問する。このときから、デイヴィッドは強大な破壊力を実現する物理理論の争奪戦に巻き込まれてしまったのだ。
その理論の生みの親はアインシュタイン。彼は生前ひそかに統一場理論を確立していた。だが、理論の悪用を恐れたアインシュタインは、愛弟子の手を借りてその理論を封印してした。そして今、その理論を手に入れようとする者たちが動き出す……。
悪用されたくないなら書き残すなよ、とアインシュタインに突っ込みたくなるような話だが、冒頭から山場の連続で、最後まで飽きることなく読めた。序盤でおもちゃの水鉄砲ひとつで身を守る場面や、自閉症の少年が愛するゲームをはじめ、脇役や小道具の使い方は巧妙。
ただし、前述したような突っ込みどころが目立つのも確か。さすがに、単なる物理法則であればいずれ誰かが再発見してしまうのでは……というところについては一応回答らしきものが用意されていた(これがニコラ・テスラの謎の発明品だったりしたら、もっと再現も難しくなるのだが)。また、論文の隠し方も気になる。どうせ隠すなら、愛弟子もよく考えて隠し場所を選ぶべきだと思った(後から明かされる「バックアップ」の存在はむしろ巧妙なのだが)。
とはいえ、いわゆるジェットコースター風サスペンスとしては十分に楽しめる作品だ。
欲を言えば、せっかく物理理論を話の核に持ってくるのであれば、こんなマクガフィンみたいな扱いではなく、『数学的にありえない』くらいに物語の展開と不可分になっていれば……と思う。
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