■[入手本]ビートルズ・ファンタジー / ラリー・カーワン
1962年、ビートルズはブレイクを目の前にして解散した。それから25年。かつてのメンバーでただ一人それなりに成功を収めたポールは、自分の原点だったビートルズを甦らせようとするが……という歴史改変もの。
南北に分断された日本を描いた佐藤大輔『征途』は、同時にハインラインやティプトリーJr.がSF作家にならなかった世界を描いた小説でもあるのだが、「この世界のSFはどうなってしまうんだろう」ということが気になった覚えがある。
ちなみに本書では、ビートルズが存在しなかったために、イギリスの歴史そのものが変わってしまっている模様。
■[読了]獣の夢 / 中井拓志
大変満足。J.G.バラードの『殺す』あたりの先に踏み込んだ作品、と感じた。「空気読め」というときの「空気」にまつわる物語、とも言える。
猟奇犯罪を犯す側よりも、それを了解しやすい「物語」として受容する世間の側を描いてみせた作品。
■[読書中]チーム・バチスタの栄光 / 海堂尊
とある大学病院で、難度の高いバチスタ手術を30回近く成功させてきた外科チーム。ところが、三回の失敗が相次いで起きた。原因不明の術中死。病院長は、不定愁訴外来を受け持つ万年講師・田口に調査を命じた……という、病院を舞台にしたミステリ。
わずかな言葉でくっきりとキャラクターを浮かび上がらせて、大学病院内の人間関係をも描き出してしまう腕前は見事。院内リスクマネジメント委員会の委員長なんて、まだ登場すらしていないのに、その事なかれ主義の権化とも言うべき姿勢がすでに印象深い。