第12回このミス大賞


今日は授賞式。
受賞した二作を、当日までに読み終えた。

『一千兆円の身代金』

 大物政治家の孫が誘拐される。犯人から政府への要求は、日本の財政赤字と同額の身代金だった……という派手な事件で始まる誘拐もの。
 良くも悪くもまっすぐな話である。
 冒頭こそインパクト勝負な感じだけど、そのあとは地に足のついた展開。さまざまな関係者の視点による叙述と、刑事たちの捜査から、徐々に犯人像が浮かび上がる過程で読ませる。
 そこで物足りないのが、犯人サイドもまっすぐなところ。政府側に対して、もっといろいろとひねった意地悪を仕掛けてもいいんじゃないか。素直さは人間にとっては美徳だが、読者を上手く騙すと賞賛されるジャンルでは不利な資質だ。そして、まっとうな正論をまっすぐに訴えられてもねえ……と思ってしまうのは、心が汚れてしまったせいなのだろうか。
 高額身代金の誘拐ものというと、つい『大誘拐』なんかと比べたくなってしまう。アレに比べると、物語が展開するスピードはこちらのほうが速い。だが、動き出した後のねじれっぷりに関しては、あまりに素直だと思う。

一千兆円の身代金

『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』

 渋谷の銀行に強盗が立て籠もる。犯人の指名で現場指揮を命じられたのは、捜査二課の郷間警部補。収賄や企業犯罪が専門の自分がなぜ? 困惑しながら、彼女は慣れない現場へと向かう……。
 見せ方が上手い。テンポよく進み、適度に意表をつく展開が待っている。現場と会議室の両方で事件は進行し、強引ながらも鮮やかに着地する。
 見せ方の上手さを支えているのは、キャラクターの作り方だろう。ちょっとした欠点を抱えていたり、その欠点が効いてくる場面があったり、一人ひとりの存在が心に残る。
 反面、「黒幕」の描き方が型通りではある。それでも、私はチープな陰謀劇が本当に好きなんだなあと実感した。これにがっかりする人がいるんだろうなあと十分理解はできるのだが。

警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官

そして受賞作とは全く関係ないけど、宝島社では昨日と今日でこんなことをしていたのですね。

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