六番目の空耳と、読めなかった陰謀小説


恩田陸、という作家の名を初めて知ったのは、たしか誰かとの会話だった。ただ恩田陸という人のこういう題名の本が面白かったよ、というだけで、その時はたまたま内容については何も聞かなかった。

その題名を、なぜか『六番目の左翼』と聞き間違えた私は、「六番目」ってことは「第五列」にちなんだタイトルなのだと勝手に思い込み、『地下組織ナーダ』や『スパイM』みたいな、陰謀と暴力が渦巻く左翼組織の暗闘を描くねじれまくった物語を妄想しては勝手に興奮していた。

そんなふうに膨れ上がった妄想が打ち砕かれたのは、実物を目にした時だった。

あれ……もしかして……左翼じゃなくて小夜子?

正確な題名を知ったときが最大のサプライズ。左翼や陰謀とは関わりの薄い話だったけど、あの謎めいてもやもやとした空気は妙に心地よく、小夜子は小夜子で楽しいものだった。……でも、本当に読みたかったのは、妄想のなかの『六番目の左翼』だったのだけれど。

昨夜の遅い電車に乗った帰り道、向かいに座った人が『六番目の小夜子』を読んでいることに気づいて、ふとそんなことを思い出した。

六番目の小夜子 (新潮文庫)

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