マレー・ラインスター / 創元SF文庫
舞台は南極基地との中継拠点となっている荒涼とした孤島。南極基地からの飛行機が謎めいた不時着をして、乗員は全員死亡。そして、島に駐在する隊員たちも、何物かに生命を脅かされる……。
舞台が舞台だけに、どうしても『遊星よりの物体X』 や『遊星からの物体X』 、あるいはその原作「影が行く」なんぞと比べたくなってしまう。どうしても、サスペンスという点では見劣りしてしまう。怪物の(生い立ちはともかく)正体もわかりやすい。
でも、けっこう面白く読めてしまう。
というのも、これは怪物の正体と対処法を解き明かすミステリとして構成されているからだ。現象をもとに仮説を立て、それが破れると新たな説を立てる。そうするうちに怪物の正体とその生い立ちがじわじわと浮かび上がる……のだが、別にこわくないのはやっぱり難点か。
こういう話で人物描写を云々することにあまり意味があるとは思えないが、ひとつおもしろい記述があった。ある女性に思いを寄せる若者が登場するのだが、彼は彼女が自分よりも年上なので「不釣り合い」だとあきらめてしまうのだ。いったい何歳違うのかと思えば、せいぜい4歳程度の差だったりする。書かれた年代を割り引いてもちと極端な気がした。
ちなみにこの23歳の女性は、孤島に置かれた基地の長官の秘書を務めている。で、この長官というのがいわばヒーロー役で、彼女と相思相愛だったりする。いっそすがすがしいくらいにおっさんの願望充足な話でもあるわけだ。
ええと、何の話だ? 孤島で怪物が暴れる小説について書いてたはずなんだが。