ペイン

ASIN:B00006JL84 部屋で自慰にいそしんでいる男の姿。別室には、転がる酒瓶と、床に倒れた寝巻姿の人物。母親だろうか。男に抱き起こされて、部屋へと引っ張られていく……

という冒頭から、主人公の男が置かれたダメな境遇が容赦なく描かれる。

だいぶ前に「これはバカミスだ」とオススメされた映画。(せっかくすすめていただいたのに、見るのがずいぶん遅くなってしまいました。ごめんなさい)

このダメ境遇の青年、向かいに住む美女の部屋をこっそり覗いていたのだが、ふとしたことからその美女と親しくなる。ところがある晩、ベジタリアンのはずの彼女が肉をむさぼり食う姿を目にしてしまう……。そんな主人公と彼女の関係だけでなく、どこか病んだ家族の様子、誘拐犯らしき人物との遭遇……と、いくつかの事件が併走し、互いに影響しながら主人公を混迷へと追いやっていく。

現実と妄想の境が崩れて主人公の正気が失われていく過程に力を入れていて、謎の解決はおおむね乱暴な投げっぷり。だが、ひとつだけ後半に強烈な驚きが仕掛けられていた。このネタだけは、しっかりと伏線が張られていて、絵としての衝撃も大きく、劇中で最もびっくりさせられた。

ただしこの衝撃、別になくても人物描写やストーリーが行き詰まるわけではないのですね。かくして、なんでそんなところに凝るんだ? と驚きながらも呆れることに。物語内での位置づけからすると過剰なまでのインパクト……という点では、ジャック・カーリイ『百番目の男』のアレみたいだ。

こういうバランス配分を誤った作品、人には薦めないが好きである。

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