新井達夫/鳥影社
1940~50年代の一時期にアメリカで量産された一群の映画、フィルム・ノワール。この本では、その誕生から発展、そして消滅までのようすが考察されている。
『シェーン』をフィルムノワールの文脈に位置づける展開など、映画ファンならではの視点が興味深い。
観てみたい、と思わせる作品がいくつもあった。これこそ論評の力ってやつだね。
アメリカでは単なるB級量産映画扱いだったものを、「フィルム・ノワール」としてその価値を見出したのは例によってフランス人。映画に限らず、H・P・ラヴクラフトにジム・トンプスンにフィリップ・K・ディックなど、アメリカじゃろくに評価されず、フランスでの人気のおかげで再評価されてカルト的存在になったケースは珍しくない。フランス人がこの世にいなければ、アメリカの映画や小説はもっとつまらないものになっていたに違いない。