仁賀克雄編 / ソノラマ文庫
「モンスター」をテーマにしたアンソロジー。
■収録作
血の末裔 / リチャード・マシスン
吸血鬼にあこがれる少年の心情を描いた短編。吸血鬼に対するちょっと変わったアプローチが面白いと思ったら、よく見れば『地球最後の男』の作者ではないですか。納得。
鉄仮面 / ロバート・ブロック
第二次大戦中のフランス。レジスタンスの窮地を救った鉄仮面の正体は? ……鉄仮面の素顔にかかわる種明かしはとっても陰謀小説めいていてよい。地底のシーンが重要な位置を占めているところも地底小説好きには好印象。ホラーとして云々というのは抜きにして、私の嗜好には最も合う作品。
これぞ、真説フランケンシュタイン / ハリー・ハリスン
見世物小屋でフランケンシュタインめいた怪物をみた新聞記者と、興行師とのやりとりが主体の物語。この手の短編では定番のオチだけど、演出はなかなかいい。
魔犬 / フリッツ・ライバー
灯火管制下の大都会。百貨店に勤める一人の男の恐怖心は、はたして妄想なのか……? 「都市生活者の不安」をホラーの形で描いて見せた快作。
サド侯爵の髑髏 / ロバート・ブロック
サド侯爵の頭蓋骨を手に入れたディレッタントの運命は……? スタンダードな怪奇小説。
骨 / ドナルド・ウォルハイム
古代エジプトのミイラが蘇生する……という話だが、正直なところミイラが出てくる話なら他にも面白いものがあるだろうに、と思ってしまう。
射手座(サジターリアス) / レイ・ラッセル
フランスで起きた連続猟奇殺人を回想する老貴族と、その話を傾聴する青年。切り裂きジャック、ジキル博士とハイド氏、青髭(ジル・ド・レイ)といったネタを詰め込んだ作品。グラン・ギニョールの使い方など、初期のディクスン・カーみたいな雰囲気。