無頼船長トラップ

ブライアン・キャリスン/ハヤカワ文庫NV

第二次大戦下の地中海。トラップ船長とその一味は、戦火をくぐり抜けてボロ船カロン号で密輸に励んでいた。だが、英国海軍の示した報酬に釣られて、北アフリカに向かう枢軸国の補給船を襲う任務を引き受けることに……。

強欲にして陰険、それでいながらなぜかうさんくさい連中に人望のあるトラップ船長のキャラクターが強烈。ひたすら己の利益を追求するトラップだが、人々が「国のため」に戦う時代に、徹底して「俺のため」に動くその姿にはある種の清々しさが漂う。

作者ブライアン・キャリスンはかつて商船に乗っていたせいか、どちらかといえば輸送船側が主役で、それを襲う通商破壊側が敵役、という図式の作品が多い。主人公が「襲う側」というのは珍しいのだが、彼らの乗るカロン号がとんでもないオンボロ船、というあたりでバランスを取っているようだ。

ちなみに、作中ではマルタ島の基地への大規模な物資輸送を試みたペデスタル作戦の様子が描かれており、だいたいの時期がうかがえる。

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