裁判員法廷


裁判員法廷 芦辺拓 / 文藝春秋

『十三番目の陪審員』で、日本に陪審制が導入されたら……というシチュエーションを描いてみせた作者が、間もなく実際に開始される制度を題材にした法廷ミステリ。

第一部は、被告にとって極めて不利な状況を、弁護士が鮮やかに逆転してみせる、芦辺版ペリイ・メイスンみたいな一編。続く第二部はまた別の事件。あの弁護士はいったい何を立証しようとしたのだろう? と、微妙にすっきりしない状況で評議を進めることになった裁判員たちの様子が描かれる、芦辺版「十二人の怒れる男」。

ここまでは、小粒ながらよくできた法廷ミステリ、の枠にとどまっている。

卒倒しそうになったのは第三部の大仕掛け。一見地味なこの本に、こんな大技が仕掛けられていようとは! 読後にプロローグを読み返してみると、この時点からすでに仕込みが始まっていることに気づかされる。第三部が芦辺版の何なのかは、書かない方がいいだろう。

裁判員制度について知りたいという読者には、その欲求を満たしつつも得体の知れない不意打ちを仕掛け、よくできたミステリを期待する読者をも十分に満足させる一冊だ。なお、プロローグで作者も述べているように、本書は必ず第一部から順番に読むこと。

以下は余談。

第三部にこんな人が登場する。

もともとは、彼自身物書きで、ブームのジャンルに二番煎じ三番煎じの原稿をぶつけて荒稼ぎし、あとには草も生えないという凄腕で知られていた。愛弟子という名の、その実ピンハネ対象でしかないライター集団を引き連れて、下世話な言い方をすれば業界を“ブイブイ言わせて”いた時期もある。

まさかこの中にモデルがいたりはしないよね。

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