『地を穿つ魔』『タイタス・クロウの帰還』に続く第三作。
解説を書きました。
東京創元社ではホラーに分類しているけれど、これは明らかにヒロイック・ファンタジーと呼ぶべきものである(まあ、どちらにしても帆船マークだ)。
タイタス・クロウが何者かに囚われ、親友のアンリ・ド・マリニーは彼を助けに〈夢の国〉へと向かう。クロウの愛するティタニアは何の役にも立たず、ランドルフ・カーターは空中艦隊を出動させ、そしてニャル子さんが這い寄ってくる。
ウィルマース財団のことは忘れてあげてください。前作はまだ財団の編纂した文書という体裁を保っていたけれど、本書ではその様式も放棄されてしまう。ド・マリニーが〈夢の国〉に赴くまでの描写を除けば、全編が〈夢の国〉で展開する。
反則気味の設定が山盛りのタイタス・クロウよりも、アンリ・ド・マリニーが凄い物語である。遠い宇宙で不老不死の肉体に改造されたクロウと違って、普通の40代後半のおじさんである。もともとは骨董商で、身体頑健であるとか英国特殊部隊にいたとかそういう記述は特に見当たらない。
なのに、主人公のタイタス・クロウも霞む勢いでの大活躍。いつのまにか若い娘といい仲になっているし、隅に置けない四〇代である(ちなみに五巻ではまた別の娘さんといい仲になっている。彼女はどこかのティタニアよりもだいぶ有能だ)。
読んだ人の感想を探してみた。こんな記述を見つけて、解説者としては非常に嬉しく報われた気分です。
タイタス・クロウ・サーガ「幻夢の時計」が出てたんで買ってきた。とりあえずぱらっと解説ページ開いて超吹いた。……なんてものを引用するんだ! いやマジで!解説冒頭によりによってニャル子さんの一節が引用とか世界ってヤツぁなんて油断がなんねェんだ。
http://d.hatena.ne.jp/yaminoshinden/20111129
「ここまでやっちまっても大丈夫」ということを世間に知らしめた点において、〈タイタス・クロウ・サーガ〉と〈這いよれ! ニャル子さん〉は似たような位置にあるのではないだろうか。
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