パズル

ASIN:415208605Xアントワーヌ・ベロ / 早川書房

 二人の選手が同じジグソーパズルに挑戦し、完成時間を競うスピード・パズル。そんな架空の競技の普及によって発展した、架空のジグソーパズル業界を描いたミステリだ。

 冒頭、パズル関係者を次々と襲う連続殺人犯の存在と、その事件の概略が語られる。本編のメインは、パズルのピースに見立てられた48の断章。雑誌記事やパズルの実況中継、手紙、議事録などが一見無造作にちりばめられている。これらを組み合わせることによって、真実が浮かび上がるのだ。

 個々のピースを構成するエピソードも興味深い。難解パズルコンテストに出展された、すべてのピースが同じ色に塗られたパズルは、認識論上の難題を提示する哲学的な作品だ。あるいはパズル協会が巨費を投じて行う、パズルを解くという行為に関する科学的な実験。レンガを積むものと解体するものの二者が織り成すメタ・パターンは、さながら「数学的な美」ともいうべきものを浮き彫りにする。

 ……というのはウソです。

 難解パズルもレンガの実験も、実は笑うところなのだ。知的な文体で、とても空疎な内容を綴るおかしさ。そう、本書のピースはたいていバカバカしいホラ話である。あからさまかどうかの違いはあるけれど。そもそも、やたらと女の子をいただいてしまうデンマークの木こりがパズルチャンピオンになるエピソードを読んで、シリアスな話だと思えるだろうか?

 本書にはふたつのパズル団体が登場する。ヨーロッパに本拠を置き、パズルの知的側面を追究するパズル協会と、アメリカの大富豪が率いる、スピード・パズルを普及させたパズル連盟。パズル協会は「アメリカでパズルを売るには、アメリカ人がチャンピオンになるところを見せないと!」とあからさまな八百長試合をやらかす分かりやすい人たち。いっぽうの連盟は、「難解パズル」みたいな哲学的深遠さを装った愚行を重ねている。アメリカ人にはストレートなバカ、ヨーロッパ人にはひねったバカ、という役割分担だ。

 ともあれ、えらく意地の悪いコメディだ。全編ニヤニヤしながら楽しめる。

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