無頼の掟


ASIN:4167661896 ジェイムズ・カルロス・ブレイク / 加賀山卓朗(訳) / 文春文庫

1920年代のルイジアナ。ソニーは危険と隣り合わせの暮らしに憧れ、叔父たちについて銀行強盗に。だが、初舞台で捕まってしまい、脱獄困難な刑務所に送り込まれる。しかも、数々の犯罪者たちを葬った伝説の鬼刑事が、ソニーを息子の仇として付け狙っていた……。

犯罪小説で、恋愛小説で、成長小説で、……と、いろいろな切り口で読むことのできる熱気あふれる小説。

主人公たちもさることながら、主人公を追う鬼刑事ボーンズの個性に圧倒される。登場ページ数は少ないにもかかわらず、この本で最も印象に残るキャラクターのひとりだ。この手の冒険活劇の敵役として、実にツボを押さえた装飾が施されている。

黒いスーツに身を包み、数々の悪漢たちを正当防衛に持ち込んで殺しながらも、一度も裁かれたことはない。最大の特徴は、ペンチだ。

彼はかつて犯罪者に撃たれて左手を失い、そこにペンチを取り付けている。フレディ・クルーガーのナイフ爪のようなものか。ただし、刃物ではなくペンチを選ぶところに、ボーンズの陰惨な暴力指向が垣間見える。主人公の行方を知ってそうな奴を捕まえては、ペンチを使って拷問する。この作品、陰惨な描写はそれほどない(あ、男なら思わず前を押さえて不安になる描写があった)のだけれど、こいつの登場シーンだけは陰惨だ。禍々しい雰囲気が漂う。

「手」という汎用的な道具を、用途の限られた道具に置き換えるというのは、キャラクターの性格付けとしては実に強力だ。特に、こういう活劇調の小説では。そういえば、特撮ものなんかも、敵味方問わず手を機械に置き換えたキャラクターがいろいろ登場していたように思う(最初に思い浮かんだのがライダーマンだったりするのがちと悲しい)。

……ペンチのことばかり書いてしまったが、読みどころは他にも多く、そのすべてを網羅するのは難しい(解説をまるごと読んでもらったほうが早い)。ラスト1行半の幕の引き方はあまりにも鮮やかで、深く息をつきながら読み終えた。

と言いつつやはりペンチのことが気になるのだが、あれはどういう仕組みで開閉しているんだろう。彼の左手は吹き飛ばされたはずなのに。これがサイバーパンクというものか(←違います)。

まあ、いろいろありますが、なにはともあれペンチ最強。

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