囁く血

エロティシズムとホラーの強烈な結合

ジェフ・ゲルブ&マイケル・ジャレット編 / 祥伝社文庫

 さあ、下品な本の話ですよ。子供とまじめな大人は見ないようにね。

『震える血』(原題 Hot Blood)、『喘ぐ血』(原題 Hotter Blood)に続く、エロティック・ホラーアンソロジー第3弾(原題はHottest Blood!)。

 収録作の一部が割愛されている(残念!)が、巻を追うごとにテンションが上がっているのがよくわかる。ネタがかぶってばかり(しかも男性にのみ痛いネタ)だった1巻、スプラッタパンク色がにわかに濃くなった2巻に比べると、収録作のバランスもとれているし水準も高いように感じる。

 デイヴィッド・J・ショウ*1「心の在処」、ジョン・シャーリィ「愛咬」あたりは、スプラッタパンクの本領発揮ともいうべき作品(特に前者!)。そんな一方で、グレアム・ワトキンス「妖女の深情け」みたいな艶笑小話ふうの愉快な佳品も収録されている。

 しかし本書の頂点はやはりグレアム・マスタートン「おもちゃ」とクリス・レイチャー「異形のカーニバル」。フリーキーな性描写の、後を引くよなえげつなさに思わず愚息も萎え萎え。ある種の肉体破壊ではあるが、スプラッタ描写よりも遙かに凄惨である。特に後者、井上雅彦ふうの題名に騙されてはいけない。男なら、こんなふうにナニされるのだけは避けたいものである。

 それにしても、完訳でないのは惜しまれる。どーせそんなに厚くないんだから、「文体が難儀」とか「日本の読者には受けない」とか言わないで訳してくれてもいいのに(しかし、日本人向けでないえっちホラーってのはどんなネタだ)。

*1 : 2008/01/04追記:カナ表記が違うけど、『狂嵐の銃弾』のデイヴィッド・J・スカウです。

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