■不良警官vs暴力団vs南米マフィア
逢坂剛 / 文藝春秋
組織の枠から逸脱した暴力刑事と昔気質の暴力団とが手を組んで、南米マフィアと対決する。
主役はこの暴力刑事。禿富鷹秋、通称禿鷹。ちょっと難のある命名ではあるが、この人物のワルさは確かにコンドルのようなイメージである。
最近はやりの「幼年期のトラウマ」も「精神異常殺人者」も出てこない。ジェイムズ・エルロイみたいに狂った妄念をこめるでもなく、一部で人気沸騰のジム・トンプスンのようなとんでもない境地に読者を誘うわけでもない。
いたずらに先鋭化したり刺激を追い求めることなく、扇情的な性や暴力の描写も抑えながら、この手のジャンルの往年のスタンダードを貫いている。
どちらかといえば古典的なノワールだ。そういえば著者自身、50年代前後の海外ミステリがお好きなようである(ハドリー・チェイスの『世界をおれのポケットに』復刊の推薦者は逢坂剛)。
ただ、最後のアレ(単行本p.356の10行目で言及されるようなこと)はちょっとよけいだったかな、と思う。