the TWELVE FORCES

~海と大地をてなずけた偉大なる俺たちの優雅な暮らしぶりに嫉妬しろ!~

the TWELVE FORCES戸梶圭太 / 角川書店

 アメリカのエンターテイメント作家が書く小説は、しばしばジェットコースターにたとえられる。息もつかせぬ勢いでめまぐるしく展開する物語は、確かにジェットコースターを思わせる。

 この『the TWELVEW FORCES 海と大地を(以下略)』も、そんなジェットコースターの影響がうかがえる作品だ。もっとも、作品のスタイルは、ジェットコースターとはかけ離れているけれど。

 ジャングルで発見された謎の物体。世界的な大富豪ランドルフは、それが古代人の作った二酸化炭素除去装置かもしれない、ということを知る。かくして、その正体を探るために世界各地から学者、傭兵、冒険家がスカウトされ、あげくのはてには芸術家までもが招かれる。二酸化炭素除去装置で、この地球を救うために……。

 とまあ、こんなあらすじを書いてもあまり意味のない話である。

 主役はランドルフ、そして彼の集めたヘンな連中。ストーリーの展開そのものよりも、ひとつひとつの場面で、彼らがいかにヘンな活躍をするか、に力が注がれている。

 この作品を楽しむには、登場人物に強く感情移入しながら読むよりは、観客として眺めているほうがいい。

 章は細かく分かれているので、いっぺん読み終えてしまえば、実は適当なところからでもそれなりに楽しく読める。一気呵成に読ませるところに意義があるジェットコースタータイプとは趣をことにする作品なのだ。

 没入するよりも、眺めるタイプ。

 線としての流れよりも、点としての個々の場面。

 そう、これはジェットコースターではなく、言うなれば「読む花火大会」なのだ。

 しかもいささかやけくそ気味の花火大会である。 最後には派手な大玉を打ち上げてくれる。構成そのものは破綻気味の作品ではあるけれど、もともと「流れ」に整合性を持たせることなんかあまり意識していなかったに違いない。

 読んだら感動するとか考え方が変わるとか、そんなことは決してないだろう。

 変な付加価値をつけずに、純粋に娯楽に徹して見せた作品だ。

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