沙藤一樹 / 角川ホラー文庫
少年たちのX-lay / X-Rain。
ある晴れた朝、小学生の「私」の前に現れた少年は、なぜかレインコートを着ていた。右目が潰れたその少年は、自分には感じられるという「X雨」のことを「私」に語るのだった。
たくらみに満ちた物語である。
ダーク・ファンタジー調の前半、主役は4人の小学生。彼/彼女たち4人だけが、なぜかX雨を感知できるようになってしまった。最初は雨音が聞こえるだけ、しかしやがて雨は目に見え、実際に体をぬらすようになる。だから、たとえ他人から奇異のまなざしを向けられても、彼らはコートを着て傘をさす。そして、彼らは雨以外のものも感知するようになるのだが……。
4人の関係には微妙なエロティシズムが漂い、世間から孤立する彼らの人間関係は次第に凄惨さを増してくる。いささか陳腐な小道具も出てくるが、しかし甘く見てはいけない。それらは陳腐であることを考慮した上で配置されている。
中盤の悪夢のようなねじれを経て、後半では前半のファンタジーがじわじわと変容する。その手法はさながら謎解きミステリ。謎解きの手法が前面に出すぎていて、構成にはややぎくしゃくしたところがあるけれど、そのよじれ具合がこの物語にはマッチしている。
なお、あとがきは決して先に読んではならない。
読後、あわてて前作『プルトニウムと半月』も読んだ次第。いやはや、こんな作家を見逃していたとは。