夏の滴

ISBN:4048733095 桐生祐狩 / 角川書店(→角川ホラー文庫

幕開けは、子供たちの夏休みのひとこま。東京に引っ越した仲間を訪ねて、子供だけで急行列車に乗ろうとする場面だ。

……そんな冒頭のシーンからは想像できないくらいにヒドい話である。確実に「バトル・ロワイアル」よりも不健全かつ鬼畜きわまりない話であり、よく選考委員が賞を与えたものだと思う。というか、モラルを説いた人が賞を与えるべき作品ではない。

といっても、特殊なモラルを提示しているわけではない。なにしろ、世の中ではこの話に近いできごとも実際に起きている。むしろ、「それを言っちゃオシマイだろう」ということを堂々と言ってしまった作品である。特に、身障者や差別をめぐる部分はその色合いが濃い。

ふと連想したのはロス・マクドナルド。といっても内容が似ているわけではなく、『さむけ』あたりに描かれる人間関係が少し本書の人間関係にダブって見えた程度。

ちなみに、ネタからはラリイ・ニーヴンとかハリイ・ハリスンのSFを思い出してしまった。というか、最近ならば超自然要素を含まない作品としても書けなくはない領域である。

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