■スレイドの集い
マイケル・スレイドを好んでやまない人々の宴席に参加した。
1時間ほど遅れて行ったのだが、それまでずっとスレイドの話ばかりしていたらしい。恐ろしいことである。
ネタをばらしてしまうという恐怖感なしに人とマイケル・スレイドの話をできるというのは大変すばらしいことである。貴重な機会を作ってくださった幹事の方に感謝。
マイケル・スレイドを好んでやまない人々の宴席に参加した。
1時間ほど遅れて行ったのだが、それまでずっとスレイドの話ばかりしていたらしい。恐ろしいことである。
ネタをばらしてしまうという恐怖感なしに人とマイケル・スレイドの話をできるというのは大変すばらしいことである。貴重な機会を作ってくださった幹事の方に感謝。
そんなわけで、ずいぶん間が開いてしまった。
上下各400ページを超す大作。上巻300ページを過ぎても、話がどっちに転がってゆくのかまったく見えないところは前作『飛蝗の農場』ISBN:4488235069
にも通じる。とはいえお話自体はアレに比べるとずいぶんまっとうなつくりだ(あくまでもアレに比べると、だ)。
支配的な母によって、クラシック一辺倒の環境で育てられた天才的ギタリスト(東欧の音楽家に「君はギタリストなのにエリック・クラプトンを知らないのか! でもジミ・ヘンドリックスは知ってるだろ?」「それ誰だい?」なんて愉快なやりとりがある)と、彼の周囲の女性たちの物語。
母親の人物像が強烈で、ロス・マクドナルドを思い浮かべてしまった。凄まじいクライマックスの光景を支えているのも、ロス・マクドナルドとか、あるいは法月綸太郎なんかが描きそうな心情である。
長いだけあって、脇役についてもしっかり描き込まれている。パソコンに向かうとついゲームを始めてしまって全然原稿が書けない自称小説家なんて、とても他人事とは思えない。
ともあれ、10日くらいかけて読んだせいか、じっくり楽しむことができた。前作が気気に入った人にはもちろん、気に入らなかった人にも、ドロンフィールドなんて知らない人にもおすすめ。長いだけのことはある。
mixi経由で知った。
http://ent.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/ent_quiz.cgi
やってみた結果。
--ジャンル別得点表 ---------------
0_________10__________20点
映画 ■■■■■■■■■■■■■■■■
テレビ■■■■■■■■■
音楽 ■■■■■■■■■■■
書籍 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
芸能 ■■■■■■■■■■
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--講評---------------------
あなたは「エンタの玄人」
あなたは忙しい仕事や勉学のかたわら、世間の流行情報
チェックを怠らない努力家に違いありません。ジャンル別
にみると、「映画」「書籍」が好きですね。「音楽」「芸
能」は平均的に知っています。「テレビ」にはあまり興味
がないようです。仲間内で、あなたの好きなジャンルの話
題になった場合、率先して盛り上げましょう。情報は発信
する人に集まってくるものです。ちなみに、解答の傾向と
しては、特に「海外」ネタに詳しいですね。
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回答の途中でだんだん面倒くさくなった。「書籍」が5点くらいだったら、それはそれで愉快な結果だったのに。
題名が似てるけど、エラリイ・クイーンの初期作品じゃありません。念のため。
主人公は口八丁のジョニーと筋肉男のサム。二人の商売は本のセールス。野次馬相手にサムが筋肉をアピールして、ジョニーがあなたもこんなマッチョになれる! とあやしげなハウツー本を売りつけるのだ。それなりに本を売って稼いでいるはずなのに、なぜかふところの寒さに悩んでいる。そんなコンビが殺人事件に巻き込まれる愉快なミステリ。
のっけから事件のまっただ中。話は軽快に進行してゆく。まちがっても「20世紀アメリカミステリの金字塔」みたいな大げさなモノではないけれど、主人公コンビのやりとりに、おバカなエピソードの数々、そしてシビアな金勘定(なにしろ宿泊費が払えなくてホテルを閉め出されるところから始まるのだ)が楽しい。
そんなわけで内容については大いに満足。
が、帯の「アメリカ版“フーテンの寅さん”」にはかなり違和感を覚える。この小説は別に下町の人情とか、そういうものは描いていないのだが。むしろ、そういうものとはかなり離れたところに位置していると思う。
そもそも両者の共通点って、
「男はつらいよ」の第一作でも寅さんは本のタンカ売りをやっていた(訳者あとがき、p.222)
だけでしょ? それは二人組だから「アメリカ版PUFFY」ってのと大して変わらないような気がする(任意のデュオに置き換え可)。
フランク・グルーバーの著書であることに価値を見いだす人はともかく、「寅さん」的なものを求める人は裏切られるし、あのシリーズが苦手な人は遠ざかってしまうし、なぜあんなことを帯に書いたのか理解に苦しむ。
まだ本棚に本を並べているところ。文庫とポケミスを同じ棚にならべたときの、文庫の上の隙間が気になってしまう自分の貧乏性が悲しい。なんだか『魍魎の匣』の登場人物みたいだ。みっしり。
上ISBN:4488126073 / 下ISBN:4488126081
そんなわけで第一作を読み返している。第一作から暴走気味のおもしろさ。うひひひ。
職場で昼休みに読み終えた。大いに満足。興奮のあまり午後は仕事が手につかない予感。
第一作『ヘッドハンター』の殺人鬼がふたたび活動を開始するわけで、第一作を読んだ者としてはすでに犯人は分かっている。……にもかかわらず、そこに新たな驚きが!
もう大変ですよ。なにしろ、先住民の武装勢力と騎馬警察がにらみ合う戦争状態(軍隊投入直前、という状況なのだ)のカナダの原野を、首切り殺人鬼が暗躍しているのだ。闇雲に豪華絢爛なサイコスリラーである(そう呼んでしまうのも、この作品の多彩な要素を切り捨ててしまうという問題があるのだが)。
とりあえず興奮気味なのであとで書き直した方がよさそう。
いろいろ片づいたのでようやく読み始める。そんなわけで今の私は冷静さを欠いている。もっとも、スレイドを冷静に読む人がいるなんて信じられない。
電波文書みたいな目次を見ただけでもう昇天寸前。帰宅途上の電車の中でウヒウヒ喜びながら読んでいた。きっと、社会に野放しにしてはいけないタイプの人に見えたことだろう。いつ通報されてもおかしくない、そんな緊張感と隣り合わせの読書だ。
うひひひひ。まだ百ページちょっとしか読んでないのに、もう大変なことになっているよ。
スレイド童貞の皆さんは、一日も早く捨ててしまった方がいいと思う。創元も、スレイドの第一作『ヘッドハンター』を復刊することだし。
プレゼンテーションは無事終了。その後で仕事をする気は毛頭ないので、15:00過ぎにさっさと帰宅。
ちなみにこれは何をしていたかというと、某シンポジウムでの事例発表。終了後、来年度弊社に入社予定だという人が挨拶にきたので驚いた。自分が学生のころは、こんなところに行こうということすら考えなかったよ。
前途ある若者を暗い気分にさせてしまうのも何なので、弊社の内部の真実をはじめとするどす黒い話はしませんでした。ご安心ください。>関係各位
渋谷に出かけて、本好きな人たち5人で飲む。2人の方は初対面。そのうち1人は、実は大学入学当時、慶応推理研の例会に参加したことがあったという事実にびっくり。そう、十数年前に一度遭遇していたのですね。ウッドハウスをはじめ、いろいろな本の話をしながら四時間ほど過ごした。
実に楽しく有意義なひととき。コーディネートしてくださったnさん、どうもありがとうございました。
訳者の方からいただきました。どうもありがとうございます。
三部構成。各部タイトルの訳がすごいことになっている。
仮に四部構成だったらともかく、第五部まであったらどうなっていたんだろう? 教えてください生首さん。
で、一刻も早く読んでしまいたいところだが、目下勤務先の仕事が大変なことになっていて本を読む時間がほとんどとれない。悲しい。
スレイドを読む時間を捻出するには会社を辞めるのが一番の近道だが、どうしたものか。
明日はあるところでプレゼンテーションをすることになった。その中で、メタファーとはどういう概念なのかを簡単に説明しなくてはならない。
で、ふと思いついた例文がこれ。
私の赤いバラは白くなった。
メタファーの説明に使うんだから、もちろんバラが白くなったという主旨の文ではない。
どこに出てきたフレーズだっけ? としばらく考えるうちに思い出した。アリステア・マクリーンの『恐怖の関門』だ。
冒頭と末尾に置かれた「私の赤いバラは~」のフレーズが心に響く冒険小説。読んだのはけっこう前のことなので細かい筋書きはよく覚えてないけど、おもしろかったなあ。
最近はこの手の小説が新しく訳されることもめったにないし。持ってる本でも読み返そうか。……と、ふと見たら本の山の取り出しやすいところにハモンド・イネスが集中していた。
当分はハモンド・イネスを読んですごそう。でもスレイドを読んでからな。
プルーフをいただいた。あの『飛蝗の農場』ISBN:4488235069のドロンフィールドである。またしてもいかれた話であるらしい(わくわく)。先日、杉江松恋氏がこの本のことを話していたけど、不幸なことに私は酔っぱらっていたので細かいところを忘れてしまった(すみません)。何だか大変なことになってしまうというのは覚えているんだけど。この機会に、あまり予備知識を仕入れずに読もうと思う。
ハモンドすまん。スレイドとドロンフィールドの後だ。
これは強力なトリオだ。某社の勝てる要素が見あたらない。大変だ、このままでは会社を辞めて収入が激減してしまう。本を買うどころか日々の糧が心配だ。どうしよう? 教えてください生首さん。
アイルランドの伝承を下敷きにした怪奇/幻想小説集。
筋書きはオーソドックスな怪奇小説だが、収録作のすべてがアイルランドの風土に立脚しているところがポイント。
本書では2番目に収録されている「幻の島ハイ・ブラシル」で、アイルランド神話には海の底に住む邪悪な神が存在する、という記述を見て、おおクトゥルー神話だ、そういうネタは出てこないのか、とつい期待してしまった。
……あった! あった!
「深きに住まうもの」。題名からして嬉しくなってしまうくらいベタなクトゥルー神話である。ぐずぐずした男が逡巡しながらしたためる手記。ニューイングランドで幕を開ける物語。排他的な寒村への帰郷。結末がやや緊密さに欠けるけれど、ここまでお約束に忠実なのは素晴らしい。「インスマスの影」を読んだことのない人が読んでもおもしろくないんじゃないか、という懸念はあるけれど。
日本の皇室がバッキンガム宮殿を買い取ってしまう小説ISBN:4807493477ではなく、歌野晶午の新作。
主人公は無職/オタク/ロリコン。主な話し相手は「絵夢」と名付けた人形で、彼の脳内では「妹」になっている……という妄想まみれの男が殺人事件に関わってしまう話。冒頭からいろいろ趣向を凝らしているので、ストーリーについてはあまり触れない方がいいだろう。
ともあれ、表紙を開いたところから仕掛けはすでに始まっている。細部から物語全体にいたるまで、さまざまなレベルでの仕掛けが楽しめる作品だ。
ちょっと気になるのが、重要なポイントである主人公の造形。上に記したとおり、すさまじく類型的なのだ。人物造形はもともと歌野晶午の弱点だが、ここ最近の作品では他の要素で弱点をカバーしていた。が、今回は主人公の異様な内面が鍵を握っている物語だけに、そのステレオタイプぶりが目についてしまう。
まあ、それだけに非常に分かりやすい作品に仕上がっている。作中のオタクの妄想も、そんなに強烈なものではない。
外枠の形は『グルーム』に似ているという意見があって、それはその通りだと思うけれど、『グルーム』のような「内と外との緊張感」はここにはない。ミステリとしての仕掛けを支える手段としてのオタク描写であり、そういう意味ではうまく機能していると思う。