ドキッ! 女だらけの暗殺集団

[] ハシシーユン暗殺集団 / テッド・ベル  (1)

ISBN:4150410860 ISBN:4150410879

 表紙からも分かると思う。頭をカラッポにして楽しむ冒険アクションものである。主人公は海賊の末裔で大金持ちで元英国海軍中佐といういかにもなヒーロー。敵は女性ばかりの暗殺集団。いやあ実に楽しそう。

 しかも「クライブ・カッスラー絶賛」である。「スティーヴン・キング絶賛」には全く情報量がない(何でも褒めるからだ)けど、カッスラーである。傾向が明確ですね。少なくともパトリシア・ハイスミスみたいな作風ではない(……って、表紙を見れば分かるか)。

 で、登場人物表がまた素晴らしい。これだ。

イチノヤマ……力士

 力士! 力士だ!

 元軍人やテロリストや米国国務長官に混じってスモウ・レスラーである。どういう活躍を見せるのかまったく分からないが、同じ日本人としてイチノヤマを応援したい(実はモンゴル人だったりしないよな。モンゴル人でも応援するけど)。

 読んでみると、けっこう早い段階でイチノヤマの素性が明らかになる。彼を含む四人の力士は、優れたボディガードを求めるある人物に誘拐されて、国外に連れ去られたのだ。

 当時、四人の力士の失踪に日本じゅうが大騒ぎとなった。だが、四人の行方は杳として知れず、そのうちに日本は不況のどん底に陥り、消えた力士たちのことは忘れ去られた。

 ひどいよテッド! あんまりだ!

 なんだか作者に対して腹が立ってきたが、ミステリマガジンに書評を書くためにも、そしてイチノヤマの活躍を見届けるためにも、がんばって最後まで読もうと思う。

[] 応募原稿読了

 スモウレスラー冒険活劇はさておき、やっと応募原稿を全部読み終えた。今回は面白いものが多くて、2~3本を選び出すのが大変。6本くらいならいいのに。「このミス」アンケートだって6本選ぶんだから。

 ……なんてことも言ってられないので、明日の朝までになんとか決めてしまおう。

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ケッチャムさんのとんち話

[] 黒い夏 / ジャック・ケッチャム

ISBN:4594049834

 キャンプ場で、ある若者が面白半分に二人の女性を銃で撃つ。そんな凄惨なプロローグで幕を開ける。それから四年後、ある刑事が事件の再捜査を始めるところから本筋が始まる。

 ケッチャムといえば陰惨な描写だが、本書では(冒頭はともかく)あえてそれを抑えている。とはいえ、不穏な気配を濃厚に醸し出す筆さばきはケッチャムならでは。いびつな若者の日常を描くだけで不穏。ページを繰る手が止まらない。

 詳細は次号ミステリマガジンにて(書評担当本なのです)。

HitBitとは関係ない某社

 某社グループ従業員向けの情報誌に、杉江松恋さんによるブックガイドの紹介記事が載っていた。ふと見れば『名探偵ベスト101』ISBN:4403250734も取り上げられているではないか。自分の勤務先に関係するもので、こういうのを見るとちょっと驚く。

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犬の系図と冬将軍

ミステリマガジン8月号……というよりも犬の系図

ISBN:B0009WSSKS

「隔離戦線」のページで豊崎由美さんが、『ベルカ、吠えないのか?』ISBN:4163239103について、「犬の系図を載せて欲しかった」ということを書かれている。

 私も欲しい。もっとも、単純に犬の系図が載ってるだけだと、最初に読むときには目の毒だ。きっと、未読のページに出てくる犬まで載っているから。

 電子化されていて、現在読んでいるページのノンブルを入力すると、その範囲ですでに書かれているはずの情報だけまとめて出してくれる。そういうインタラクティヴな犬系図が欲しい、と思った。

[]雪中の奇跡 / 梅本弘 (2) 読了

ISBN:4499205360

 文章がアレだというのを差し引いても面白く読むことができた。強大な敵に劣勢な軍隊で挑むという泣かせるシチュエーションのおかげだろう。多数の写真も、文章がアレなのを補っている(もっとも、フィンランドの地理なんてよく知らない上に、地図が少ないので戦況がわかりにくい)。

 ナポレオンにしてもヒトラーにしても、ロシアに攻め込んだ外国の軍隊は”冬将軍”に痛い目にあわされている。そのロシアの兵士たちが、フィンランドの冬に苦戦するさまは興味深い(温暖な地方から集めてきた兵士も多かったようだ)。ここでの経験が、後のドイツ軍との戦いにも活かされたのだろうか。

 同じ著者による、第二次ソ・フィン戦争を描いた『流血の夏』ISBN:449922702Xも手に入れてみた。

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アルレッキーノの柩とかフィンランドとか

[]アルレッキーノの柩 / 真瀬もと (2) 読了

ISBN:4152086475

 楽しめる作品。紹介文はガジェットを前面に押し出していたけれど、どちらかというと主人公を初めとする人々の心情の動きが主体となるおはなしだ。

 小道具の扱いは意外にあっさりしている。特に「十二人の道化クラブ」に集う人々はもっと奇人揃いで、あやしい会則ももっと前面に出てきてもよかったのではないかと思う。芦辺拓やマイケル・スレイドみたいな、呆れたガジェット偏愛を期待してしまったのだが、そういう趣旨の作品ではない。

 ただ、登場人物の描き方もけっこうあっさりしているので、もっと執拗にねちねちと描いてくれてもよかったと思う。

[] 雪中の奇跡 / 梅本弘  (1)

ISBN:4499205360

 1939年。ソ連は人口370万の小国フィンランドに侵攻。旧式な装備の小規模な軍隊しか持たないフィンランドはあっさり敗れるかに見えた。だが、彼らは抵抗を続け、次々とソ連軍を壊滅に追いやる。その善戦は「雪中の奇跡」として世界に報じられた……という、「冬戦争」の全貌をまとめた書物。

 貧弱な軍隊で圧倒的な敵に挑むというシチュエーションが泣かせる。私にとっては、世界の中心で会いににいきます、とかそういうのよりも泣ける。

 著者もフィンランド軍に感情移入するあまり、ときどき地の文でフィンランド軍のことを「我々」なんて書いていたりする。別に『裁くのは誰か?』ISBN:4488256023みたいな趣向ではない(と思う)。著者はフィンランド人ではないので、『病める巨犬たちの夜』でもないはずだ。……というかですね、文章がとても下手なのが泣ける。

 そんなわけで泣いてばかりです。おもしろいけど。

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Musical Baton

Musical Baton

mixi経由で霜月蒼さんから。最近、あちこちで見かけるアレだ。

「○○な人へのn個の質問」みたいだなあ、と思いつつ……

コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量

24GB。

最後に買ったCD

Sentenced “The Funeral Album”

ISBN:B0007Y08VK

フィンランド産ゴシック風メタルバンド、最後(嗚呼)のアルバム。

今聴いている曲

で、そのアルバムの中から”The end of the road”。もうおしまいですか……

よく聴く、または特別な思い入れのある 5 曲

最近よく聴くのはこんな感じか。なお、アルバム単位にした。

!Motorhead “No Sleep’til Hammersmith”

ISBN:B00005NHO3

サイト名の由来はコレ。最初から最後までヤケクソ気味の轟音がとぎれることなく鳴り響く。かっこいい。

!Black Crows “The Southern Harmony And Musical Companion”

ISBN:B000062XB3

渋い。

!Black Label Society “Mafia”

ISBN:B0007IA58C

骨太。ザック・ワイルドはだんだん歌い方がオジー・オズボーンに似てきているように思う。まあ、もともとオジー・オズボーンのところにいたわけだが、だからといって歌い方が似るのは不思議だ。

!Sentenced “The Cold White Light”

ISBN:B0000695TK

もともと荒涼とした雰囲気を醸し出すのが巧みだったけど、それが頂点に達したのがコレかな、と思う。

!The 69 Eyes “Paris Kills”

ISBN:B0000677FY

これまたゴシック風。Sentencedが荒野の激情なら、こちらは都会の憂鬱といったところか。

バトンを渡す5人

ふつうに回答しておいてなんですが、こういう「すべての人はつながっていて云々」みたいな空気を醸し出そうとするモノはあまり好きではないので、ここで止めちゃいます。あしからず。

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女刑事の死

ASIN:4151756019ロス・トーマス / 藤本和子訳 / ハヤカワ・ミステリ文庫

(解説)ゲームはポーカー・フェイスで

 ディプロマシーというゲームをごぞんじだろうか。

 プレイヤーの数は六、七人。各自が二〇世紀初頭のヨーロッパ列強各国を受け持って、自国の勢力拡大を目指してしのぎを削る。サイコロを振ったりカードを引いたりという不確定要素は皆無で、プレイヤー同士の駆け引きがものをいう。史実の列強のように二枚舌外交を繰り広げて秘密協定を結び、ときには裏切りも交えつつ、合従連衡を繰り返して覇権を目指す……という、複雑怪奇な国際関係の雰囲気をうまく再現している。純真な方にはおすすめできない。相手を欺くことも辞さない、冷徹な交渉を楽しむゲームなのだ。

 一対一の駆け引きではない。それぞれの利害を抱えた多数の陣営による、錯綜した駆け引き。それは、ロス・トーマスが描く、多彩な登場人物の織りなす複雑な駆け引きの絵図にどこか似ている。

 ロス・トーマスのデビュー作は一九六六年の”Cold War Swap”。日本では『冷戦交換ゲーム』という題名で刊行された。

 舞台は東西冷戦下のドイツ。腕利きの情報部員パディロは、米ソの情報機関同士の密約によって、ソ連に亡命した数学者を取り戻すのと交換に、ソ連に引き渡されることに。所属機関に裏切られたパディロを、親友である酒場の経営者マッコークルが助けに向かう。

 冷戦を背景にしながらも、米ソの対立とはまったく別の対立軸を描いてみせたこの作品には、後の作品にも共通するトーマスの個性がたっぷり詰まっている。

 たとえば、癖のあるキャラクターの造形。あるいは、登場人物どうしの複雑な利害関係の網。同じ側に属していても、一枚岩なんてことはありえないのだ。そして、そんな構図の中で描かれる、裏切りと密約が絡み合ったコン・ゲーム風の騙し合い。

 キャラクターの造形、そして軽妙な会話の楽しさは、トーマス作品の土台を支える重要な要素である。また、登場人物たちの織りなす人間関係と、そこから導かれる先の読めないプロットは、トーマス作品ならではの独特のものだ。彼の物語の展開は、ときに難解と評されるくらいに錯綜している。というのも、登場人物たちが、さまざまな場面で相手と自分の手札を見極めて、虚々実々の駆け引きを繰り広げ、事態を複雑にしてゆくからだ。

 デビュー作の邦題にある「ゲーム」という言葉は、原題にこそ含まれていないものの、ロス・トーマスの作品世界を的確に表している。ここには、単純な熱血漢などいない。誰もが冷徹なゲーム・プレイヤーなのだ。勝負に臨むときはポーカー・フェイス。感情をあらわにすることはほとんどない。

 もっとも、ゲームの合間には、ふと心の底をあらわにする瞬間がある。このさじ加減もまた、トーマスならではのものである。

 本書『女刑事の死』も、そんなトーマスらしさを十分に備えた作品だ。

 妹の死を知らされた兄が、故郷の街に帰ってきて事件の真相を探る……という展開だけなら普通のミステリだ。だが、彼は実はある任務を帯びていて……と、次から次へと別のプロットが飛び出す。それでいて、物語は破綻することなく進行する。構成の緻密さでは、本書はトーマス作品の中でも頂点に位置する。

 主人公ベンジャミン・ディルは、ゲーム・プレイヤーとしての姿勢を貫いている。特に身を守るための切り札の残し方は巧妙で、ワシントンという政治の中枢で生き延びているだけのことはある、と思わせる。また、交渉のためにいささか過激な行動に及んだことを指摘されるくだりも印象深い。

「おれはずっとああいうやりかたをしてきたんじゃないかな」
「でも、演技ではあるんでしょ?」
「そうさ」とディルはいった。「演技さ」ほんとにそうなのだろうか、と彼には確信がなかった。

 演技なのかどうか、当人も確信が持てないくらいに、駆け引きのための振る舞いが身にしみついている。

 もちろん、ゲームの最中はポーカー・フェイス。感情を吐露することはほとんどない。だが、ディルが決して冷淡な人間ではないことは、あのラストシーンをお読みになった方ならばおわかりだろう。右の引用部で言及されている過剰な行動も、亡き妹を思うがゆえのものだったのかもしれない。

 語るべきことはまだまだたくさんあるけれど、そろそろ終わりにしよう。

 ロス・トーマスは一九九五年に亡くなるまでに二十五の長編を発表し、そのうち十六作が翻訳された。だが、二〇〇五年六月現在、新刊として入手できるのは本書だけである。

 本書が初めて訳されたのは一九八六年。それまで「好事家向け」だったトーマスの人気が上昇するきっかけになったのがこの作品で、本書以降の邦訳作品は年末の人気投票にも顔を出すようになったという。

 本書のハヤカワ・ミステリ文庫での復活をきっかけに、多くのミステリ・ファンのもとに、再びロス・トーマスの数々の名作が届くようになることを願っている*1

*1 : 2008年1月現在、他の作品はまだ復活していない。悲しい。

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ロス・トーマスとか

[] 女刑事の死 / ロス・トーマス

ISBN:4151756019

 解説を書かせていただいた本が届いていた。以前ミステリアス・プレス文庫として出ていた本の、ハヤカワ・ミステリ文庫での再刊である。

 実はこれ、ロス・トーマスとしては異色の作品なのですね。マジメなところが。他の作品だと、登場人物はみんな必要以上に肩の力が抜けてたりするのだけど。願わくば、こいつが異色作であることが明確になるくらいにロス・トーマス作品がたくさん復刊されますように。

 ちなみに帯は「九代目林家正蔵氏絶賛」。氏が熱心なミステリ好きであるという事実を知ったのは、たしかスチュアート・カミンスキーのリーバーマン刑事ものを読んだときだった。なにしろ「解説・林家こぶ平」である。そういえば朝日新聞の記事でも、「私のヒーロー」としてあげていたのがマット・スカダーだった。

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384人のお祖母さん

あるいは『誕生パーティの11人』ISBN:4488227015

そんなわけで20歳になりました。

お前が20歳のわけはないだろう、という方もあるかもしれませんが、要するに『12時の音楽浴』 / 海野D ISBN:4150300739 ということです。

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「このミス大賞」折り返し

[]半分読了

 今のところ、なかなか面白かったのが2作ほど。

 7/4までには何とか読み終えられるかな。

[]The Marine Art of GEOFF HUNT / Geoff Hunt

ISBN:0851779719

 今月末にでるHMMの書評で、パトリック・オブライアンの帆船小説を担当したのだけれど、その表紙の絵を描いている画家の本。

 メインはやはり帆船の絵。過去の世界のものだけに、けっこう綿密なリサーチを重ねて描いているようで、そういう凝り方には好感が持てる。帆船だけじゃなくって、中には現代のイギリス海軍の艦艇やヨットレースの風景を描いた絵も。

 私はそっちの方面はあまり強くないのだけれど、イギリス帆船小説の世界がお好きな方なら、深く楽しめるかもしれない。

[] アルレッキーノの柩 / 真瀬もと  (1)

早川書房の方が送ってくださった。ありがとうございました。

ISBN:4152086475

ヴィクトリア朝のロンドン。「十二人の道化クラブ」という怪しげな会員が集うクラブで起きる怪事件。密室殺人にダイイング・メッセージ、降霊会に稀覯本に殺人鬼の手記と、古典的な探偵小説の味わい満載の本格ミステリ。

……らしいのだが、まだ読み始めたところ。

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2005-06-14

「このミス大賞」

 ここしばらく、通勤電車の中で本を読み、家では「このミス大賞」応募原稿を読む生活が続いている。

 平日は帰りが遅いので、読むのは深夜。眠気に負けて中断することが多い。……が、睡眠時間を削ってでも最後まで読みたい作品に出会えることもあるのが嬉しいところ。こういうことがあるから、面倒だとわかっていても引き受けてしまうのだ。

 ちなみに、通勤電車で読んでいるのは……逢坂剛だったりJ・P・マンシェットだったりマーガレット・ミラーだったり、ほとんど再読ばかりだ。

ジーヴズの事件簿 / P.G.ウッドハウス

 で、これも通勤電車で読んだ。

ISBN:416324090X

 しばらく前に国書刊行会から出た『比類なきジーヴス』ISBN:4336046751とほぼ同じ内容。文春のほうが収録作品数は多く、さらにイーヴリン・ウォーや吉田健一によるウッドハウス讃も収められている。

 国書も文春も、引き続きウッドハウスの本を刊行する模様。ただし国書刊行会はジーヴスの活躍する作品をとりあげ、文春はウッドハウスが描いた他のキャラクターにスポットを当てるので、2巻目からは内容が重なることはないはずだ。

 のび太のくせに生意気な若旦那のバーティと、常に冷静沈着なドラえもんであるジーヴスの愉快なお話。気楽に楽しめるけれど、実はきわめて入り組んだ筋書きで、それを複雑と感じさせない手際が素晴らしい。

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