第二次宇宙戦争


火星人兵器を手にした人類の運命は……?

ISBN:4584178887伊吹秀明 / ワニ・ノベルス

 タコ型火星人のイメージを世間に流布したH・G・ウェルズの『宇宙戦争』の後日談。

 地球に侵攻した火星人が細菌で死に絶えてから十四年、第一次大戦下の西部戦線にイギリス軍が送り込んだ秘密兵器、それは火星人の戦闘機械だった……! という幕開けから、一転して舞台は革命直後の混乱のさなかのシベリアへ。ロシアの混乱に乗じた、日本軍の秘密計画が語られる。

 異星人のテクノロジーを手にした地球人という設定は、いろいろなアニメでも見たような気がするし、本書と同じような時代を背景にしたものでは山田正紀の『機神兵団』なんてのもある。そういう他の作品との最大の違いは、やはりこれが他ならぬウェルズの『宇宙戦争』のパスティーシュである、というところ。原典に登場した事物もふんだんに描かれ、ウェルズの小説(作中ではもちろんノンフィクションと言うことになっている)をラジオや映画にした人物たちも姿を見せる。「火星人襲来」のラジオ放送でパニックを巻き起こしたオーソン・ウェルズはちょっと皮肉な役を与えられ、「宇宙戦争」を映画化したジョージ・パルはUFOの目撃者として出演する。

 また、火星テクノロジーの軍事利用がその後の軍事技術に及ぼす影響なんてのも描かれている(この辺、やはり架空戦記の作家ならでは)。プロローグで西部戦線に姿を見せる火星人兵器はその典型だ。

 と、本書に詰め込まれているアイデアは実におもしろい。ただし残念なことに、ストーリーテリングがかなりぎくしゃくしているし、登場人物の心の動きも説得力に欠ける。20年以上にわたる、地理的なスケールも大きな物語を、けっこうあっさりと片づけてしまっているのが原因だろうか。これは意図的に避けたのだと思うが、1930年代後半の(史実では緊迫していた)国際情勢について、何も触れられていないのも不満が残る(火星人が攻めてきたともなれば、それなりに歴史の流れも変わるはず)。

 ……もっとも、数々の魅力的な素材だけでも十分最後まで読まされてしまうのだが。『米軍基地に宇宙人の死体が』といった宇宙人陰謀話が広まる以前の宇宙人像には、懐かしさすら感じてしまう。

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