2006-01-15

[]神の血脈 / 伊藤致雄

第6回小松左京賞受賞作。

ISBN:4758410593

[]獣の夢 / 中井拓志

小学生による小学生の遺体損壊事件。そんなショッキングな事件が起きた小学校で、九年を経て再び似たような事件が……という物語。

事件がネットで話題になっていて、専門に取り上げるサイト群が存在する……というあたりからしても、扱っている領域は『quarter mo@n』ISBN:4043464029に近い。

007/ダイ・アナザー・デイ

たまたまTVで放映されているのを見た。

今回の敵役は北朝鮮の軍人。なぜか北朝鮮の軍事施設に日本の兜や日本刀が飾られていたが、そんなことがどうでもよくなってしまうくらいの豪快な展開にただ笑って圧倒されるばかり。

北朝鮮はこの映画に抗議したらしいが、おそらく金正日が登場しないからではないか。「チーム・アメリカ」みたいに重要な役にすればよかったのに。クライマックスはサイボーグ化した金正日とボンドの死闘とか。

しかし最も笑ってしまったのは作品本体ではなく、終了後の「この作品はフィクションであり、実在のものとは関係ありません」というおことわり。呆れながら笑ってしまった。いや、あのね……。

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2006-01-14

やっぱり体調が

思わしくないのでおとなしく寝ている。

[]チーム・バチスタの栄光 / 海堂尊

第4回「このミス」大賞受賞作。

[]最後の喝采 / ロバート・ゴダード

ISBN:4062752905

[]逸脱者 / グレッグ・ルッカ

アティカス・コディアックシリーズ第4作。

ISBN:4062753073

ISBN:4062753103

[]幸運は誰に? / カール・ハイアセン

きわめて精緻に組み立てられたバカなお話。メインの宝くじ争奪戦に加え、田舎町の「奇蹟」ビジネス(涙を流すインチキ聖母像などなど)や広大な森林をめぐる買収話などが絡み合うプロットは決して単純なものではないが、個性の強いキャラクターのおかげで分かりやすいものになっている。

それぞれのキャラクターが好き勝手に動き回っているようでいながら、最後はパズルが完成するかのように個々のサブプロットが落ち着くべきところに収束する。八方破れに見えて、実はしっかり計算されている。読む側はその巧妙さに圧倒されることもなく、バカバカしく愉快な展開を楽しむばかり。

世の中、上手いけれど上手さが目立ってしまう作品も多い(私にとってはトマス・H・クックの一連の『~の記憶』なんかがそうだ)。それに比べると、もはや技巧を読者に意識させないのがハイアセン。素晴らしい。

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2006-01-13

風邪気味なので

ちと早めに退社。

帆船と戦車と吉田とドイツ

現在、amazon.co.jpの本のおすすめがアレグザンダー・ケントと吉田戦車で埋め尽くされている。すすめられるのは身に覚えがないこともないのだが、どういう組み合わせだ……。

で、ようやくそれ以外の本が出てきたと思ったらこんなのでした。

ISBN:4499228832

吉田戦車の次はドイツ戦車。

[]幸運は誰に? / カール・ハイアセン

民兵組織(?)“ホワイト・レベル・ブラザーフッド”が改名にいたるくだりなどがたいへんバカバカしくてよい。

ちなみに「NATOの共産主義者」によるアメリカ侵略を警戒する白人優越論者が出てくるが、彼らの妄想はハイアセンが話を面白くするために考えたものではない。実際にそういう陰謀の存在を信じている人がアメリカに存在し、いっしょうけんめい武装していたりするのだ。

例えばこんな人。

ISBN:1881532054

ISBN:1881532143

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2006-01-12

[]アメリカン・コミックス大全 / 小野耕世

アメコミの多彩な側面を綴った本。

ISBN:4794966741

[]奇妙な情熱にかられて / 春日武彦

ミニチュア/境界線/贋物/蒐集 というキーワードに沿って、引用してみたくなるような風変わりなエピソードや小説の一部分をいくつも並べている。この本自体がある種の蒐集の産物と言えるかもしれない。

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2006-01-11

短編部門予選

ぽつぽつ読む。

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2006-01-10

[]喉切り隊長 / ジョン・ディクスン・カー

大いに楽しんだ。ナポレオンの時代を舞台にしたスパイ小説としてもたのしめる。最後に明かされる真相にいたっては、本格ミステリのものというよりは、むしろ国際謀略小説のものだろう。それにしても宮部みゆきの某作品みたいな趣向である。

ISBN:4150703620

[]幸運は誰に? / カール・ハイアセン

大当たりの宝くじをめぐって、おかしな人たちが騒動を巻き起こす……ようである。

のっけから陰謀史観まみれの小悪党が登場する。作者曰く「責任転嫁の達人」。まあ、陰謀史観というのは「なんでも人為的な事態と解釈する」ことなので、そういう見方は外れていない。

ISBN:4594050786

ISBN:4594050794

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2006-01-09

[]TSUNAMI / 高嶋哲夫

某書評用。実はそれほど期待せずに読み始めたのだが、意外に面白く読むことができた。大災害パニック小説というか、日本の防災体制の脆弱さを訴える話。

やはり、規格通りの耐震工法を採用すべきでした。構造部材にもかなり問題があると報告したはずです。しかし、社長はそのまま推し進めた。

なんて旬な台詞も飛び出す。本の刊行は12月15日なので、例の件をどの程度意識したのかは微妙なところ。でも、コレにあわせて話の筋書を変えたとも思えないので、著者にとってはまたしても*1不本意なシンクロかもしれない。

ISBN:4087753549

*1 : 東京を襲う大地震を描いた『M8』刊行後、新潟中越地震やインド洋の大地震が起きたのでした。

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2006-01-08

推理作家協会賞短編部門

予選のため短編をパラパラ読んでいる。

[]喉切り隊長 / ジョン・ディクスン・カー

臆面もなく面白い。ディクスン・カーの大仰なスタイルって、二〇世紀を舞台にした作品では笑いのタネだが、過去の時代を舞台にした作品では輝きを帯びて見えるから不思議だ。

二〇世紀には失われてしまった古めかしいロマンと冒険。ディクスン・カーは間違って二〇世紀に生まれてしまった男なのかもしれない。でも、数々の快作や怪作を楽しめるのは、彼が生まれる時代を間違ってくれたおかげである。

[]奇妙な情熱にかられて / 春日武彦

ISBN:4087203204

予想どおりの面白さ。今読んでいるのはミニチュア篇だが、自宅の精巧な模型を作った友人の思い出とか、俳句を二文字にまで切りつめる話とか、楽しいエピソードが満載である。

以下は著者がアルバイト先の病院で見かけたもの。

ふと棚におかしなものが置いてあるのが目に入った。一部を斜めに削り取った細長い木片で、古くて全体が煤けたような色になっている。しかも表面には、下手くそな文字がマジックインキで書いてある。「私を捨てないで下さい」と。

「捨てないで」と訴えかける奇怪な木片。だが、この木片には合理的な用途が存在し、書かれた文字にもちゃんと存在意義があったのだ!

……お、エラリー・クイーンの話が出てきた。

[]悲劇週間 / 矢作俊彦

明治45年、外交官の父に呼ばれてメキシコに旅立った若き日の堀口大學の物語……だそうだ。ちなみに私にとっての堀口大學といえば、新潮文庫のルパン傑作選である。

ISBN:4163246401

[]金春屋ゴメス / 西條奈加

第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。まだ読んでなかったことを思い出して購入。

ISBN:4103003111

[]獣の夢 / 中井拓志

デビュー作『レフトハンド』はすさまじく変だったけど、その後はまともな娯楽小説を書いている人の第四作。

ISBN:4043464045

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13のショック

ASIN:4152086823リチャード・マシスン / 吉田誠一訳 / 早川書房

異色作家短編集第4巻。『地球最後の男』で知られる作家の短編集。

収録作品

ノアの子孫

ニューイングランドの閉鎖的な町……というとつい「インスマスの影」を思い浮かべてしまう。対象は似ていても、恐怖の質感はそれぞれでずいぶん違うのだけれど。

レミング

無常感漂う渾身の一発芸。

最近書かれたもの、といっても通用しそうなくらいにテーマが現代的。短いながらも密度の濃い衝撃作。デビュー作の「モンスター誕生」とも通じ合うところがあるように感じた。

長距離電話

こういう展開でこういう終わり方かな、と読めてしまってもひきこまれてしまうのは、やはり演出方法の妙だろう。

人生モンタージュ

映画「チーム・アメリカ」の劇中、主人公の特訓シーンのBGM、“モンタージュの歌”を思い出した。

天衣無縫

ふつうのおじさんが突然知識の泉に。「アルジャーノンに花束を」をどす黒くしたような。

休日の男

「見えてしまう男」の苦悩。『フラッシュフォワード』あたりを思い浮かべた。

死者のダンス

本筋はさておき、「未来の退廃的な文化」のレトロ・フューチャーぶりが印象深い。

陰謀者の群れ

わずかなページにまとまった理想的な陰謀小説。パラノイアックな焦燥感は何度読んでも鮮烈。

次元断層

話の傾向は全然違うけど、恒川光太郎「夜市」を連想した。

忍び寄る恐怖

全米がロサンゼルス化する恐怖を描いたバカ話。「西海岸の人間」に対するステレオタイプなイメージは、どうやらアメリカ国内においても通用するらしい。

ある人曰く「東海岸の人と仕事していると、まじめに品質の良し悪しとかを話すんだけど、西海岸の人はすぐに”cool!”とか言い出すんだよねえ……」。でも西海岸の人は、こちらが仕事をがんばると、お礼にカリフォルニアワインを贈ってくれたりするのでcoolです。おいしかったよ。

死の宇宙船

これまた、語り方で成り立っている作品。アイデアストーリーではあるが、何度読んでも楽しめる。

種子まく男

こちらも陰謀小説的観点から見て興味深い作品。ご町内に不和をまき散らす男の内面が一切語られないところがポイントだろう。

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地を穿つ魔

ブライアン・ラムレイ / 夏来健次訳 / 創元推理文庫

ヨーロッパ各地で相次ぐ群発地震。ある嵐の夜、北海に浮かぶ大戸島を謎の災害が襲った。島に赴いた調査団の前に現れた巨大生物。それは、禁断の文献にのみ伝えられる、かつて地の底に封じられたはずの旧支配者シャッド-メルだった。シャッド-メルはやがてロンドンに上陸し、都市を破壊する。天才科学者タイタス・クロウ(平田昭彦)は、禁断の知識でシャッド-メルの息の根を止めようと、自ら地の底へ向かう。断末魔のシャッド-メル。静まりかえった穴の底を見て、ミスカトニック大学のピースリー教授(志村喬)は「あのシャッド=メルが最後の一匹だとは思えない……」と呟く。

……大戸島とか言い出したあたりから不正確な紹介になってしまったが、ともあれ非常に怪獣映画らしさあふれるお話だった。いつメーサー殺獣光線車が出てきてもおかしくない。

本書は根っからのクトゥルー神話好きが贈る、「ぼくの考えた邪神」が大暴れする物語である。そして、人類のために戦うひみつ結社、ウィルマース・ファウンデーションが邪神と死闘を繰り広げる物語でもある。

旧支配者や彼らに仕える種族といった神話作品の重要な構成要素を、CCD(Cthulhu Cycle Deities;クトゥルー眷属邪神群)という略語で表してしまうところに、この物語の姿勢がはっきり示されている。「忌まわしく名状しがたい」と長々と形容するのではない。畏怖の対象ではなく、効率が支配する領域での調査と研究の対象なのだ。

神秘性をはぎ取ってしまうような描き方は、たしかに「恐怖」を感じさせることはない。しかしラムレイは、そうすることによって「楽しさ」を持ち込んだのだ。先人たちが築いたクトゥルー神話作品の構成要素を組み合わせて、新たな物語を作り出す「遊び」の楽しさ。作者が感じたであろう、そのわくわくするような快楽が、行間から立ち上っている。

さらに、人類を守る秘密組織が密かに邪神と戦っているという設定を導入することによって、陰謀小説らしい色合いも帯びている。そもそもこの分野、ラヴクラフトの「インスマウスの影」や朝松健の『邪神帝国』などに見られるように、陰謀小説的世界観との親和性が強いのだ。

「いいから文章書くのやめて逃げろ」と言いたくなるような形で終わる手記。禁じられた文献からの引用。われわれの常識からかけ離れた奇怪な異種族。そんな手垢にまみれたクトゥルー神話的小道具を組み合わせて作られた、怪奇と妄想のテーマパーク──それがこの作品である。

怪獣総進撃ちなみに、本書のクライマックスとも言うべき第13章「シャッド-メル追撃」のBGMには、『怪獣総進撃』のテーマがよく似合う。
機会があったらお試しください。

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