2006-03-01

[]マングースの尻尾 / 笹本稜平

ISBN:4198621152

フランス情報機関幹部の立場を利用して副業で私腹を肥やすマングースと、武器商人・戸崎との死闘を描いた連作短編。

「いかにも」な登場人物を配して世界各地を舞台に繰り広げられる罠の仕掛け合いは、安心して楽しめるできばえ。ただ、敵役が主人公を危機に追い込む → 敵役は自分の企みを得々と語る → その隙に主人公or味方が反撃する という「冥土の土産に教えてやろう」パターンを連発させるあたり、ちょっと重みに欠ける。

面白く読めるけれど、この人のベストとは言い難い。

[]漂流爆弾 / リーアム・キャラナン

ISBN:4150411085

時は第二次大戦末期、舞台はアラスカ。若いベルク軍曹は、日本軍の風船爆弾を秘密裏に処理することを命じられる……。

冒険小説かと思って読み始めた。戦争という状況と厳しい自然を利用して組み立てられているところは冒険小説っぽいけれど、描こうとしているものはそこから少し外れたところにあるような気がする。幻想小説の二、三歩手前で踏みとどまっているような不思議な感触。

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2006-02-27

[]間違いの悲劇 / エラリー・クイーン

ISBN:4488104339

見どころは表題作(小説になる前のシノプシスの形ではあるけれど)。言葉への関心の強さも、後期のクイーンらしいモチーフも、どこをとってもクイーンらしい作品。他のさまざまなクイーン作品の顔がちらちら見えてくる。

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悲劇週間

悲劇週間 矢作俊彦 / 文藝春秋

20歳の堀口大學が、外交官の父に呼ばれて、その任地であるメキシコに旅立つ……という物語。

つねに正義を貫けるわけではない外交の場で生きる父と、それを許せない息子との関係が話の軸になっている。

ただ、読んでいてまず印象に残るのは、「明治の日本青年」が外国の風物に接したときの新鮮な驚きだ。「何を」見たのかよりも、「どのように」見たのかを語るところに力を注いでいる。ストーリー自体はほとんど進まず、主人公がいろいろなものを眺めて回っているだけの場面でも、熱気と興奮を感じさせる。

奇岩城 ところで、登場する仏語教師の名前が「ドン・ルイス・ペレンナ」で、その息子が「アルセーヌ・ダンドレジー」だったりするのだが、これはやはり堀口大學がルパンものを訳していることに基づいたお遊びだろう。この先生、彼に『奇岩城』とおぼしき本をプレゼントしているのだ。

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東東京ミステリパーティ

六本木にて。大変楽しい夜でした。幹事の皆さま、お世話になりました。

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2006-02-24

[]ながい眠り / ヒラリー・ウォー

ISBN:4488152074

警察小説であると同時に本格ミステリでもある、というのは解説にもあるとおり。丹念に手がかりを追って、曖昧な部分をひとつひとつ潰してゆく捜査活動の末に浮かび上がる意外な真相。読後、思わず最初のページに戻って読み直してみたくなる作品だ。

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2006-02-20

そろそろ復調

体調も持ち直したし原稿も書き終えたし……というわけで、そろそろこちらを放置するのもおしまいにしよう。

読んだ本の記録はだいぶ漏れがあるし、日付も不正確になると思うけれど。

[]トーテム / デイヴィッド・マレル

来月刊行の「完全版」の解説執筆用に再読。

旧版はいろいろなところを削った短縮版。完全版の方は、田舎町のパニックを描くことよりも、主人公と事件との向き合い方に重点を置いていて、冒険小説として楽しめる。何より人物描写が深化しているので、旧版よりも心に響く小説になっている。

あと、クライマックスが全然違う展開に。旧作を読んだ方も、完全版を読んだ方がいいと思う。

[]血の誓い / デイヴィッド・マレル

これ以外も、マレルの旧作をいろいろ読み返していた。ちなみに本書の主人公は作家で、その父親は第二次大戦で戦死……と、マレルの境遇そのまんま。「読者を楽しませること」に徹していながらも、何かと自身の姿を投影する人なのだ。

[]最後の喝采 / ロバート・ゴダード

こちらはミステリマガジン新刊評で取り上げた。帯には「異色作」と書いてあったけれど、読んでみればたいへんゴダードらしい作品。

[]殺人ピエロの孤島同窓会 / 水田美意子

第4回このミス大賞・特別奨励賞。「執筆時12歳」というところが目立ってしまって、色眼鏡つきで見られがちな作品である。今後も書き続けてゆくのであれば、作者にとっては重荷かもしれない。

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2006-02-13

本業多忙+締切+高熱

ここ2週間ほどを要約すると上記のとおり。

特に先週は寝込んでいたためほとんど本も読めなかった。今日はほぼ1週間ぶりの外出である。

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2006-01-27

[]魔術師の夜 / キャロル・オコンネル

下巻に入ると徐々に物語のテンポが上がる。気がついたら読み終えていた。

たぶん単独でもそれなりに楽しめるはずだが、シリーズを順に追ってきた読者向けの作品だろう。

さまざまなジャンルの衣装をまとってはいるものの、中心にあるのはキャシー・マロリーという主人公の存在。ラストの格好いい風景などはその象徴だ。

スタイルはずいぶん違うけど、ヒロインの存在感に”Elektra”あたりを連想した。

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2006-01-25

ミステリマガジン3月号

この雑誌、もともと3月号は1年間のまとめが載るので分厚いのだが、今年はさらに601号記念というわけでいっそう分厚くなっている。

特集の「ジャンル別ベスト短編を読む」が豪華。

ジャンル別に、ジャック・フィニイ / ジェイムズ・M・ケイン / ダシール・ハメット / ローレンス・トリート / アントニイ・バークリー / リリアン・デ・ラ・トーレ / アリステア・マクリーン / リチャード・ハーディング・デーヴィス / デイヴィッド・グーディス / ロッド・サーリング……といった作家の短編を一本ずつ収め、またジャンルごとに解説が付されている。

また、海外ミステリのオールタイム・ベストの集計結果も。ただし結果自体は、昔ながらの名作が並ぶもので、そんなに驚くようなものではない(結局、ウェストレイクとスタークとコウは全部ウェストレイクとしてカウントされたようである)。むしろ、この一年の作品を対象にした「私のベスト3」のほうが読み応えがあると思う(アンケート回答の字数制限が「このミス」などよりも緩いので、いろいろ書かれる方が多いのだ)。

ただ、福井さんも1/25に指摘しているように、変なところが散見されるのも事実。特に247ページは『紙葉の家』みたいでちょっとびっくりした。「『クリスマス・プレゼント』に入っているのは~」が「『クリスマス・プレゼント』の収録作は~」とかであれば大丈夫だったのかも。

例の『容疑者X~』に関する、二階堂黎人&笠井潔の論考も(と言いつつまだ読んでない。ざっと見たところ、二階堂原稿のほうは氏のサイトにこれまで書かれた内容のまとめらしい)。

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2006-01-24

[]トーテム / デイヴィッド・マレル

ひとまずハヤカワ文庫版を再読終了。

こちらはこちらで十分に楽しめる作品だが、確かに端折ったような形跡が見られる構成ではある(後知恵)。登場人物の過去の描き方などはちょっと舌足らずに思えるところも。

怪事件の正体が読者には何となく見えていて、でも登場人物はなかなか気づかず、何人かが気づいても「そんな馬鹿な」と頑強に否定する奴がいて……という「志村うしろうしろ」感ゆえにホラーとして評価されたと思うが、他の作品にも共通する「マレルらしさ」というのはここにも見られる。

[]魔術師の夜 / キャロル・オコンネル

やっと下巻に。それにしてもずいぶんゆったりしたペースである。話の展開も、私がそれを読むスピードも。

[]くじ / シャーリイ・ジャクスン

異色作家短編集その6。『蠅』も買おうと思ったら、残った一冊を他の人が手にとってレジに行ってしまった。

ISBN:4152086971

[]瑠璃の契り / 北森鴻

冬狐堂シリーズ新刊。

ISBN:4163236600

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