2003-07-13

なんだかんだと忙殺されてました。

一部の方々には諸般の連絡が滞りがちで、ご心配かけてすみませんです。

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2003-06-30

「このミステリーがすごい!大賞」応募原稿をすべて読み終える。

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2003-06-28

『バトル・ロワイアルII』刊行を祝う会。

二次会では杉江松恋さんが「霜月蒼さん(♂)の尻はいかに素晴らしいか」について語り続けた。そんな話を聞いてたせいかどうかは不明だが、店を出るころにはかなり気分が悪くなって、中華料理店に行く人々と別れてふらふらと帰宅。私はそっち方面の描写に弱いのかもしれない。

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2003-06-25

泣ける本

 職場近くの書店で、こんな手書きのポップを見かけた。

泣いてください。そして、善と悪について考えてください。

 あーまたアレですか。癒しとか感動とか、そーいうアレですか……と、ポップの下を見ると、そこには信じがたいモノが平積みにされていた。

ISBN:459402534X

 正気ですか。

 あれは「しまった読んじゃった」と思うことはあっても、泣くとかそういうのとは違う位相にある本だと思う。

 よりにもよってジャック・ケッチャム。しかもその鬼畜ぶりが存分に発揮された『隣の家の少女』だ。『隣の家の少女』といえば、「読後嫌な気分になった本ベスト10」を語る際には外せない一冊だ。

 しかもおそろしいことに、このポップが効果を挙げた現場を見てしまった。

 これらとは別の本を買って、レジでお金を払いながらふと隣を見ると、なんとケッチャムの本を買ってる人がいたのだ。『隣の家の少女』に『ロード・キル』、さらには『オンリー・チャイルド』まで。しかももう一冊買っていた。……相田みつをの本を。

 ケッチャムと相田みつを。もう、こんな組み合わせを目にすることは二度とないだろう。

 有隣堂某店に対しては、貴重なものを見せてもらったことを感謝すると同時に、いったい何を企んでいるのか、と問うておきたい。

 ……まあ、『モンスター・ドライヴイン』で泣いたような人間が何を言っても無駄かもしれないが。

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表紙買い

CDを買うときに、ジャケットだけを見て、そのまま勢いで買ってしまうことがある。

それと同じように、表紙だけを見て買ってしまった本がある。私の場合、ジャケ買いはともかく、表紙買いには「当たり」が多いような気がする。

そんな「当たり」をいくつかご紹介しよう。

ミルクから逃げろ!

ASIN:4899980353 表紙もいいけど、牛乳瓶の形をしたしおりがついてるところがいい。戸梶圭太ばりのアイデア。

フィルス

ASIN:4901142100 表紙は赤、青、黄色の3バージョンあった。
 この本、諸般の事情でうちに2冊あったので、1冊を人にあげることにした。そこで先方に「青と黄色のどっちがいいですか」と聞いたところ、「青と黄色って?」と戸惑わせてしまった。
 ところで表紙のブタは、イギリスのおまわりさんの帽子をかぶっていたりする。これ、本国じゃちょっとした問題になったらしい。
 内容はといえば、股間に湿疹、腹にサナダムシを抱えた、お下劣刑事の鬼畜な日常。ところがどっこい、これが凄まじく泣かせる話なのだな。私にとっては1999年翻訳ものの最高傑作。

愛はいかがわしく

ISBN:4048970089 表紙はゴージャス。借金まみれのしょぼい詐欺師のお話を、こんな景気のいい表紙で飾ってみるというひねり方は好きだ。やっぱり、負け犬野郎の見果てぬ夢、なんだろうな。→詳細

バカなヤツらは皆殺し

ISBN:4562033053 男としてはちょっと嬉しいアングルに惹かれたわけじゃないけど、買ったその日に一気読み。こいつはこれまでに読んだ小説の中でも、確実にベスト10に入るだろう。表紙買いでそんな作品に出会えるってのは、とても運がよかったと思う。→詳細

驚異の発明家の形見函

ISBN:4488016359 いろいろな品が詰め込まれたこの箱が、どうやら「形見函」と呼ばれるものらしい。

 読んでみれば、これが実に内容に合った表紙であることが分かる。この形見函に配された品の一つ一つから紡ぎだされる、ある発明家の生涯。それはやがて、この形見函へと収斂してゆく。

 想像力を刺激してくれる表紙だ。

紙葉の家

ISBN:4789719685 表紙買いというよりはレイアウト買い。本屋で見かけたら、とにかくページを適当にパラパラとめくってみて欲しい。びっくりするから。

地獄のコウモリ軍団

ISBN:4105900153「モンティ・パイソン」に欠かせない、テリー・ギリアムのアニメを思い出した。内容も、モンティ・パイソンとはいささか流儀が異なるものの、やっぱりブラックユーモアがあふれている。毒気の効いた短編集だ。

けだもの

ISBN:4167527626すみません、表紙買いではありません。解説書きました。

ゴヤの「我が子を喰らうサトゥルヌス」は、編集の方が画集を眺めていて「これだ!」とひらめいたとのこと。そういえば、この絵に描かれたサトゥルヌスの狂気は、ある登場人物の妄執にも重なるものがある。

The Twelve Forces―海と大地をてなずけた偉大なる俺たちの優雅な暮らしぶりに嫉妬しろ!

ISBN:4048732617これも表紙買いというよりは、むしろ作者買いな一冊である。
写真で見ても分からないけど、けっこう凝ったつくりなのだ。→詳細

戸梶圭太は、本のデザイン面にも気を配って、自分というブランドのイメージをきちんとコントロールしようとしている。この本に限らず、彼の著書に見られる装丁などの工夫からは、小説「だけ」に触れてきた人間には決して真似のできないセンスが感じられる。

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モンスター・ドライヴイン

ISBN:4488717012ジョー・R・ランズデール / 創元SF文庫

ドライヴイン・シアターでB級ホラー映画を楽しんでいたぼくたち。そこに突然、怪しい光を放つ彗星が飛んできて、ドライヴイン・シアターごと異空間に閉じ込められてしまった! 果たして、ぼくたちはここから生きて出られるのか?

第一印象

初期のランズデールはスプラッタパンク寄りの作品も書いていた。閉鎖空間でのサバイバルを描いているという本書も、そのひとつかもしれない。最近の作品に見られるようなストレートな骨太さよりも、ひねくれたブラックユーモアが前面に出てきそうだ。

読み終えて

 表層の雰囲気はまさに予想通り。閉鎖空間での食と排泄にスポットを当てた物語は、進めば進むほど陰惨な暴力と黒い笑いに覆われてゆく。後半のポップコーン・キングの存在と、彼が放出するポップコーンの描写の気色悪さは秀逸。

 だが、底に流れているのはいたってまっとうな心情である。

 閉じ込められた観客たちは、わずかな食料をめぐって激しく争う。次第に人間性を喪失し、やがてはポップコーン・キングのような「怪物」にひれ伏してしまう。

 そんなふうに狂ってゆく群衆の中で、ぎりぎりの試練にさらされながら、なんとか理性を保ちつづけようとする主人公の姿が心に残る。表面的にはまったくタフには見えないのだが、その内なる強さが胸を打つ。マス・ヒステリーのなかで、ひとり冷静さを保つ。それは困難なことだし、時には危険ですらある。

 まさかこんな本を読んで目に涙しようとは思わなかった。

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2003-06-18

読んでるもの

  • ブリジット・オベール『異形の花嫁』
  • チャック・パラニューク『インヴィジブル・モンスターズ』
  • ポピー・Z・ブライト『絢爛たる屍』

と、最近読んでるのはなんだか下半身が落ち着かなくなるものが多い。

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2003-06-14

30歳

 あと1週間くらいで30歳になっちまうので、新宿にて逆密室関係者を中心とした方々に祝っていただきました。みなさまどうもありがとうございました。なぜか北朝鮮で生き延びるための各種グッズをいただいたのですが、あのへんはあまり本屋がなさそうなので近寄らないと思います。日本で極限状況に追い込まれたときに活用したいと思います。

 宴のあとは替え歌しばりのカラオケへ。ブッシュがイラクを爆撃する歌など歌っていたところ、「10年くらい前も同じようなのを歌ってなかったか」と、ネタの使いまわしを暴かれてしまった。悪いのは私ではない。こんなネタを再利用できてしまう世界情勢に問題がある。

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東京サッカーパンチ

ISBN:4594039413アイザック・アダムスン / 扶桑社ミステリー
 日本を訪れたアメリカ人の雑誌記者ビリーは、謎の男たちに追われている芸者に出会う。そして、旧知の映画監督が変死した。ビリーは陰謀渦巻く日本の裏社会へと飛び込んでゆく……

第一印象

 外国の小説や映画を見ていれば、誰でも珍妙な日本描写のひとつやふたつに行き当たるだろう。最近では、ゲームでも 日本語が拓く新世紀に紹介されているようなものがある。
本書は、そんな怪しい日本描写を、確信犯的にやらかしている。山口雅也『日本殺人事件』みたいなものだ。もっとも、書いたのはれっきとしたアメリカ人のようである。
高校生のころ、いくつかのSFに出てきた怪しいニッポン描写に心躍らせていた者としては、読まないわけには行かない。
それにしてもこの作品、日本人はその珍妙さを楽しめるかもしれないが、平均的アメリカ人はどんなふうに受け止めるだろうか?

読み終えて

 怪しいニッポン描写はたしかにあったものの、期待したほどではなかった。芸者が重要な役割を果たしていたりはするんだけど、概して極端な誇張によるギャグの範疇に収まっているような気がする。
 ちなみに、他にも怪しげな要素が結構ちりばめられている。たとえば、身体障害者国際武術大会。片足しかない伝説の武術家の出場が噂されていたりするのだ。
 ニッポン描写以上に怪しいのがストーリーであった。ヤクザと大企業と秘密教団が追い求めていたもの、それは……って、そ、そんな。どうしろと言うんですか。裏表紙にハードボイルドって書いてあったのに、まさか○○○○だったなんて。もしかして、これも怪しいニッポン描写の一環なのだろうか。
 もっとも、この作品の世界には、こんな狂った展開を許してしまう空気がある。なにしろここは伝統文化とハイテクと性の快楽と資本主義がごった煮になった神秘の国・日本。○○○○な話の一つや二つくらいあってもおかしくない。むしろ、この珍妙な舞台にはお似合いの話かもしれない。

どうでもいいけど

 表紙には新宿のとある居酒屋の写真が載ってたりするのだが、この店にはここ十年ばかりほぼ毎月のように行ってるような気がする。といっても別にここが名店というわけではなくて(悪くもないのだが)、単なる惰性である。
(2008年1月追記:もう15年くらいになる。ここ数ヶ月は行ったり行かなかったりだけど。)

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凶獣リヴァイアサン

上巻下巻ジェイムズ・バイロン・ハギンズ / 創元SF文庫

ゴジラ対バイキング。ひとことで言えばそういう話である(バイキング対地底怪獣、というのがより適切かも)。

舞台はアイスランド沖の孤島に広がる地下洞。とある企業が、アメリカ軍の援助のもと極秘プロジェクトを進めていた。彼らが開発していたのは究極の生物学的抑止力、その名もリヴァイアサン。コモドオオトカゲの遺伝子を改造して作られた身長10メートルの怪物は、開発者たちの予想を超える能力を秘めていた。自力で身体能力を進化させてゆく怪物はついに暴走し、研究者たちを、兵士たちを餌食にしてゆく。そして、怪物の暴走に備えて用意されていた核自爆装置が起動した。残された時間は24時間。苦境に立たされたスタッフたちの前に、身長2メートルを越すノルウェー人の大男が現れた。古風な信念を抱き、島のはずれで暮らしていたトールだ。彼の斧は怪物を打ち倒せるのか……?

という、たいへんストレートにわかりやすいお話。

読み終えて

 大変満足である。

 ほとんど洞窟の中だけでで展開される物語は、「怪獣と人間たちとの死闘」に的を絞っている。余分な要素はほとんど削られていて、たとえばこの手の話につきものの怪獣の誕生秘話なんてのも必要最低限にとどめられている。

 もっとも本書の元ネタは、いわゆる怪獣映画のたぐいではなさそうだ。斧を構えた大男が巨大な怪物に立ち向かう──ファンタジーなんぞではおなじみの、英雄の竜退治物語というやつだ。

 なにしろクライマックスでは、この大男が怪獣相手に一対一で勝負してしまう。戦車をも打ち負かしてしまう怪獣に、だ。これはもう、リアルな軍事考証を積み重ねたシミュレーションというよりも、英雄の物語としか言いようがない。

 いちおう、怪獣が現代の世界で暴れるための理屈付けはなされている。でも、この作品の場合、そのへんはわりとどうでもよかったりする(正直なところ、少々いいかげんでもある。そもそもアメリカ軍は「怪獣の軍事利用」なんて奇策に頼る必要はないだろう)。

 いわゆる怪獣映画的な描写との最大の違いは、これが「生身の人間と怪獣との戦い」を正面切って描いているところだろう。本書の登場人物は、戦車や戦闘機や、果てはメカなんとかとかスーパーなんとかみたいな超兵器に頼ることはない。グレネード・ランチャーを抱えて駆け回り、あちこちに高圧電流を流し、罠を仕掛け、血と汗にまみれながら怪獣に立ち向かうのだ。

 怪獣との一進一退の駆け引きが生み出す緊張感。

 仕掛けた罠に怪獣を追い詰めてゆくときの高揚感。

 怪獣の異常な生命力に対峙した人々の絶望感。

 作者が妙に倫理的なことも手伝って、設定こそ荒唐無稽だが実に熱い物語に仕上がっている。そういえば、今まで訳されたハギンズの作品も、似たようなムードがあったように思う(怪物退治というモチーフも似通っているけど)。

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