■開戦:フランスの崩壊
- ネビル・シュート『パイド・パイパー – 自由への越境』→詳細
- ロブ・ライアン『暁への疾走』
去年の日記は2/14でぱたりと止まっている。本業がやたらと忙しくなってしまい、今もそんな状態が続いている(まあ、年末年始は普通に休んでいるので、忙しいと言ってもたかが知れているのだが)。
久しぶりに会った人に「更新止まっちゃいましたねえ」と言われることも増えたので、CGIも入れ替えて、リハビリとして(?)再開してみる。
第二次大戦下の地中海。トラップ船長とその一味は、戦火をくぐり抜けてボロ船カロン号で密輸に励んでいた。だが、英国海軍の示した報酬に釣られて、北アフリカに向かう枢軸国の補給船を襲う任務を引き受けることに……。
強欲にして陰険、それでいながらなぜかうさんくさい連中に人望のあるトラップ船長のキャラクターが強烈。ひたすら己の利益を追求するトラップだが、人々が「国のため」に戦う時代に、徹底して「俺のため」に動くその姿にはある種の清々しさが漂う。
作者ブライアン・キャリスンはかつて商船に乗っていたせいか、どちらかといえば輸送船側が主役で、それを襲う通商破壊側が敵役、という図式の作品が多い。主人公が「襲う側」というのは珍しいのだが、彼らの乗るカロン号がとんでもないオンボロ船、というあたりでバランスを取っているようだ。
ちなみに、作中ではマルタ島の基地への大規模な物資輸送を試みたペデスタル作戦の様子が描かれており、だいたいの時期がうかがえる。
※以下の解説は未掲載です。
気がつくと2月も半ば。最近は…
といった日々を過ごしております。
勤務先でも儀礼的にチョコレートの授受がなされたわけですが、今年は生まれて初めて男性にチョコレートを渡しました。
という単なる伝書鳩で、これまでとは違う嗜好にめざめたとかそういうアレではありません。
とはいえ、こんな日に男性にチョコレートを渡すというのも希少な経験ではあるので書きとめておく次第。
巨大にして獰猛、しかも狡猾。そんな地上最強の動物・ヒグマが、山小屋に逃げ込んだ人々を襲う。
ヒグマと人間の死闘に的を絞った作品。飢えた野獣の、人間を圧倒する力の強さと、狩りに特化した知性の冴えが心に残る。
ちなみに応募原稿の段階では、ヒロインの生い立ちにもドロドロしたエピソードが満載されていたのだが、書籍化に際してそのへんはばっさりカットされている。最初に読んだときよりも引き締まった感じ。
それにしてもヒグマは強い。本書におけるその強さはもはや怪物と呼んでもいいだろう。怪物小説は大きく「でっかいのが一匹」と「ちっちゃいのがたくさん」に分けられるが、これは前者の傑作である。
『シャトゥーン ヒグマの森』は「熊が襲ってくる」という、シンプルにして破壊力の強いテーマの物語(1次選考の評)。作者の増田氏が、受賞の一言として「ヒグマの強さを知ってもらいたくて書いた」ということをおっしゃっていて、深く納得した次第。
『暗闘士』は複数の策謀が並走する、複雑なドライヴ感のある物語(1次選考の評)。作者の高山氏からは、パーティ席上で次作のプロットなどをうかがうことができた。謀略が錯綜する形式は、「殺人」に頼るのを避けた結果とのこと。
そして、大賞受賞作は……→ブレイクスルー・トライアル