生存報告

長いこと放置していたけれど、こんな事態なのでひとまず状況報告を。

なにごともなく無事です。

自宅の本棚が倒れることもなかった。本棚の上に載せてたものは床に落ちていたけれど、もともと散らかっているので雰囲気は大して変わらない(それはそれで問題だ)。

当日は、職場から同じ方面に向かう人たち8人くらいと一緒に歩いて帰った。距離は約25km、所要時間は7時間近く。
職場から4kmほど離れた隣の駅に向かって歩いていたころは、まだ事態を甘く見ていた。駅に着くころにJRが動いてたらいいな、くらいの期待を持っていた。
ことのヤバさをさとったのは、さらに数km歩いて横浜駅にたどり着き、そこで帰宅を断念したとおぼしき人々が駅ビルのあちこちに座り込んでいる姿を目にしてからだ。
私ともう一人は横浜駅近くで他のメンバーと別れて東横線沿いに北上した。二人であれこれ喋りながら移動。一緒に行く人がいてよかった、おかげで無事に帰れたと礼を言われたが、それはお互い様だ。

10数km離れた自宅をめざして歩いている間も、震源に近い東北はここより大変な状態だろうな、とは思っていた。それでも、帰宅してからTVで見た被害のすさまじさは想像を遙かに超えていた。

上司から連絡があり、月曜日は自宅待機となった。そんなわけで月曜日は旅立ったりしないで(そもそも俺はラビではないのだ)、自宅で遅れている原稿を片付けてしまおう。停電の前に。

被災されたミステリ好きの方々が、人が殺される小説をのんきに楽しめる日々が早く戻ってきますように。

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Kindleなど

また一年近く放置してしまった。

特に身の回りで大きな変化もなかったのだが、ひとつだけ劇的に変わったのが読書の環境である。
最近は月に二冊くらいしか本を読んでいない。……紙の形態では。

こうなったのは、昨年の暮れにKindleを買ってから。
本は読む前にスキャン→PDF化→Kindleにコピー……という流れが普通になってしまった。
(今年に入ってからミステリマガジンの新刊紹介で取り上げた本は、すべてこの流れで読んでいる)

もともとスキャナの使い方と言えば、

  • 第一期:雑誌のバックナンバーをスキャンして保存する
  • 第二期:バックナンバーだけでなく、読み終えた本もスキャンしておく

……という変遷をたどっていたのだが、Kindleを手に入れてからは

  • 第三期:これから読む本をスキャンしておく

という段階に入ってしまった。

ちなみに、スキャンしないで読んだのは:

  • 絵が主体のもの
  • スキャンする前に読み終えてしまった(本屋で買った帰り道に読み始めて一気読み……など)

……といった本。

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ロス・トーマスの受難

Yahoo!オークションにて。

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あんさつのジャムセッション」とか「ウーとデュラントのおおばくち」のようなタイトルだったら、それらしくなりますね。

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蔵書仕分け

日々報じられる事業仕分けの様子を見ながら連想しているのが、手元の本の整理である。

本というものはいつの間にか増殖しているもので、居住空間の維持のためにもどこかで削減しなくてはならない。これはきっと再読するから残しておこうとか、この作家のものはもういいや処分してしまえとか、この作家の本が入手難になることは当面なさそうだから手放してよかろうとか、日々ひとり行政刷新会議を続けている。

事実上凍結されたはずのスーパーコンピュータ開発予算が科学者からの抗議によって「見直し」となったように、いったん処分すると決めた本を、逡巡したあげく「やっぱり……」と本棚に戻してしまうこともある。私は誰かに抗議される前に方針転換しているので、これに関しては鳩山政権に勝ったと称しても差し支えないだろう。

ただし、勝っても部屋はなかなか片づかない。あちらの事業仕分けの対象が、騒いでいるわりには予算全体に占める比率がきわめて小さいのと同じように、私が整理できたのも氷山の一角に過ぎない。改革への道のりは遠い。

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ペイン

ASIN:B00006JL84 部屋で自慰にいそしんでいる男の姿。別室には、転がる酒瓶と、床に倒れた寝巻姿の人物。母親だろうか。男に抱き起こされて、部屋へと引っ張られていく……

という冒頭から、主人公の男が置かれたダメな境遇が容赦なく描かれる。

だいぶ前に「これはバカミスだ」とオススメされた映画。(せっかくすすめていただいたのに、見るのがずいぶん遅くなってしまいました。ごめんなさい)

このダメ境遇の青年、向かいに住む美女の部屋をこっそり覗いていたのだが、ふとしたことからその美女と親しくなる。ところがある晩、ベジタリアンのはずの彼女が肉をむさぼり食う姿を目にしてしまう……。そんな主人公と彼女の関係だけでなく、どこか病んだ家族の様子、誘拐犯らしき人物との遭遇……と、いくつかの事件が併走し、互いに影響しながら主人公を混迷へと追いやっていく。

現実と妄想の境が崩れて主人公の正気が失われていく過程に力を入れていて、謎の解決はおおむね乱暴な投げっぷり。だが、ひとつだけ後半に強烈な驚きが仕掛けられていた。このネタだけは、しっかりと伏線が張られていて、絵としての衝撃も大きく、劇中で最もびっくりさせられた。

ただしこの衝撃、別になくても人物描写やストーリーが行き詰まるわけではないのですね。かくして、なんでそんなところに凝るんだ? と驚きながらも呆れることに。物語内での位置づけからすると過剰なまでのインパクト……という点では、ジャック・カーリイ『百番目の男』のアレみたいだ。

こういうバランス配分を誤った作品、人には薦めないが好きである。

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ミステリマガジンと年間ベスト

ミステリマガジン1月号と『ミステリが読みたい! 2010年版』が届いていた。

ミステリマガジン新刊評で取り上げたのは:

……の4作。
『ブリムストーンの激突』は簡潔なスタイルが魅力のウェスタン。『オッド・トーマスの受難』は作者得意の「ただ○○するだけ」のお話。『黄昏の狙撃手』はハンターの旧作に比べるとだいぶゆるい作品だが、難しいことを考えずに豪快にぶちかますスタイルもまた楽しい。

『ミステリが読みたい! 2010年版』は、類似の年末ベストとの差別化を図って、大幅に形式を変えている*1。取り上げる作品数も多い。
他の年間ベストに比べ、アンケート回答がきわめて面倒なので、回答者には主旨をよく説明した方がいいかも……と思っていたが、現物を見せた方が早そうだ。

ちなみに、あるマヌケ*2な理由により、私のコメントは載ってません。反省……。

*1 : 参考にしたのはこれの形式

*2 : 言うまでもないが、マヌケだったのは私で、早川書房ではない

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OB会

慶応推理研OB会。

なんだか学生の人数が多いのでびっくりした。ここ1~2年は「バブル」だそうで現役学生の人数も多いらしい。OB参加者も例年より少なく、若者の多い見慣れない風景だった。

現役の人と話していて今更ながらに実感したのが年代の差。
私がミステリを本格的*1に読むようになったのは綾辻行人がデビューした頃(あるいは島田荘司の推薦文がやたらと熱かった頃*2)なのだが、現在の学生ってその頃生まれたか生まれてないかくらいなのですね。

OBのみなさんは相変わらずだったが、おそらく年齢のせいもあって、往時に比べだいぶおとなしくなった。OB会の前に日本酒を何合も飲む、という風習が廃れたのも一因かもしれない。

*1 : ジャンルのことではない

*2 : 今でも福山ミステリー文学新人賞などの活動をされているものの、推薦する文章はかなり冷静に……

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またまた空白が

毎度のことだけど、また数ヶ月間が開いてしまった。
特に業務がきわめて繁忙とか体調を崩したということもなく、どうにか生きております。
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埼玉県に騎馬警察を!

『このミス大賞』の一次選考結果が公開された。

http://konomys.jp/

そちらに書いたとおりなので、特に付け加えることはないのだが……

『災厄の季節』はマイケル・スレイドみたいな話で、そのため私の評価が甘くなっているかもしれない。だが、仕掛けが読めてしまってもわくわくできる作品ではある。残念なのは、舞台が日本なので捜査するのも普通の警察である、ということ。埼玉県に騎馬警察が存在しないことを嘆く日が来るなんて、思いもしなかった。

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時限捜査

ASIN:4488269036ASIN:4488269044 ジェイムズ・F・デイヴィッド / 公手成幸訳 / 創元推理文庫

予備知識のない状態で読むことをおすすめしたい。
下巻末尾の解説も、致命的なネタばらしをしているわけではないが、読むのは本編読了後にした方がいいだろう。他の新刊案内、あるいは書店で現物を見て気になっていた方は、ここから先も見ない方がいいかもしれない。

アメリカ西海岸の都市、ポートランド。事故で娘を失って、酒浸りから復職した過去を持つ刑事が、幼児ばかりを狙う連続殺人者を追う。その捜査の過程で、奇妙な人物の存在が浮かび上がる。どこからともなく現れては人々に注意を促し、時には事故や事件を未然に防いで人々を救う青い肌の男。この男と殺人者にはどんなつながりが……?

殺人犯を追う刑事の捜査を描いたスタンダードなミステリ……と思ったら、強烈な展開が待ち受けている。帯や裏表紙ではやたらと「家族の絆」みたいなテーマを強調している*1が、確かに間違いではない。主人公はもちろん、中盤から登場するヒロインも、そしてそれ以外の人物も、家族やそれ以外の何かを失った過去を抱えている。喪失感といかに向き合うかというテーマは、無茶な仕掛けの存在にも揺さぶられることのない、本書の大きな柱だ。

ちなみに、この作品の刊行と同じ2009年7月には、別の作家の『無限記憶』という本も出ていて、これは『時間封鎖』という作品の続編。題名が漢字四字で創元の本、という以外は特につながりもないはずだが、なぜか紛らわしい。

*1 : おそらく、無茶な仕掛けの存在を予感させないための心配りだろう。

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