なお、カスタマーレビューでは好評で何よりです。
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なお、カスタマーレビューでは好評で何よりです。
日食 → 観察 → 太陽を直接見てはいけません → 「アポロの眼」
という連想が働いているのだと思う。
最近、なぜかチェスタトンが脳内に進入してくることが多い。『ルシアナ・Bの緩慢なる死』を読んだときもそうだった。こちらもクライマックスの状況がアレと重なるところがあったせいだろうか。
ちなみに『ルシアナ・B~』は、なんでも「奴らの陰謀だ!」と結論づけてしまう陰謀論信奉者の思考回路がうまく再現されていた。
56歳のワイマンはMI6の職員だが、公式には大学の研究員。しかし政府の支出削減のせいで、両方の職を失うことに。折しも、イギリスに情報を提供していたスパイ網のトップが東ドイツで射殺された。MI6に内通者がいるのでは? かくして、ワイマン最後の大仕事が始まった……
英国情報部が東側のスパイに浸透される……というスパイ小説ではおなじみの話題で幕を開けるが、話は明後日の方向に飛んでいく。無能と見なされながらも実は教養豊かで頭も切れる窓際情報部員が、CIAやKGBまで巻き込んで繰り広げる最後の仕事。終盤の展開が非常に予測しやすいという難点はあるが(これは訳者あとがきも不用意だと思う)、機知に富んだ会話や文章だけでも満足できる。「景気後退が進行中なのだ」の台詞は繰り返しギャグとして何度も使われ、ぐうたらながらも頭の冴えたワイマンのキャラクターも魅力に富んでいて楽しく読める。
ワイマンがどんな人物かは、登場わずか数ページで十分に語られる。例えば……
ミセズ・ホッブズが掃除するたびに、彼はその後何ヶ月も何かが見つからなくてぶつぶついった。ミセズ・ホッブズには本を本棚に、ファイルをキャビネットに、用箋を文房具戸棚にしまうという、腹立たしい習慣がある。ワイマンはこのような能率主義には我慢ができなかった。
とか。共感を覚える箇所ではある*1。
ところで、上記引用部に出てくる「ミセズ・ホッブズ」もそうだけど、作中の人名や固有名詞は、哲学者や数学者にちなんでいるものが多いようだ。そもそも主人公のワイマンという名前も、論理学者クワインの論考に出てくる架空の哲学者からとられている。大学に残っている彼の友人の名はロックやヒューム。東ドイツ高官のコードネームはプラトンで、彼のために用意された口座はスイスのデカルト銀行のもの。
*1 : ちなみに本書は再読。きっかけは、本の山を片付ける途中で手にとったらつい止まらず……というものだった。ワイマンほどではないと思うが、私の部屋もかなり散らかった状態である。
読んだのはしばらく前のことではありますが。
2030年代。サッカーの試合に流れたCMは、実は人間をマインドコントロールするための秘密兵器だった……なんて謀略から始まって、「ウサギ」と呼ばれる正体不明のハッカーが日欧印の情報機関と接触し……という展開に、すっかり近未来エスピオナージュを期待してしまったのだが、読んでみたら全然違った。
物語の中心にいるのは、画期的治療法によってアルツハイマー病から回復した75歳の詩人。いわば過去からやってきた人物である。そんな男が、再び社会に馴染むための教育を通じて、ネットとユビキタス・コンピューティングが激しく発達したびっくり新世界に触れていく様子が語られる。かつての気難しい偏屈爺が徐々に変わっていくというおまけつき。
作中、大学図書館の蔵書を裁断してスキャンするというリブラレオーメ計画なるものに対して、激しい反対運動が巻き起こる。しかし、なんでもデジタル化するのが当たり前というご時世で、そんなに反対運動が盛り上がるものだろうか、と疑問に思った。
裁断が反発を招くのなら、こんなのを使えばいいのに……
もっと小さくて場所をとらないものなら、私も1台ほしい。
これ、「文章を書く」以外のことはいっそ清々しいくらいに何もできないので、原稿を書くことに集中できる。ネットにつながったPCで書いていると、つい関係ないことに手を出してしまいがちだ。
私のように、堅固な意志や集中力や気合いや根性や真剣さなどが欠如している人間にとっては、気を紛らすような多彩な機能はむしろ邪魔なのかもしれない。
今のところ大きな不満はない。行番号が表示できて、1行あたりの字数を指定できたほうが自分の用途には向いているが、割り切った製品なので諦めるしかなさそう。
最近、外出時に原稿を書くときはW-ZERO3[es]のキーボードを使っていた。反応速度もあまりよくないため、長い文章をまとめるのはつらく、せいぜい文字数や行数の調整程度*1。まあ、書いたらすぐ送信できるのは便利だ。
pomeraは単体では通信できないので、文章を書く→microSD経由でW-ZERO3[es]に移動→文字数などを調整→送信 という手順が必要。
そもそも、締切直前に書き始めるなんてことをしなければ、外出時に書いたりしなくてすむのだけど……。
*1 : 字数と行数を指定できるテキストエディタをインストールした
ようやく終わったのは「このミス」大賞。選考にけっこう苦労した人もいたようなので、一次通過の連絡は例年より遅れているかもしれない。
ジャンルの退嬰的な混血がもたらした、忌まわしい冒涜の書。
ニャルラトホテプが漫画とDVDを買い漁る。
ニャルラトホテプが弁当を作ってくれる。
ニャルラトホテプが押し倒されて服を……
そんなわけでクトゥルー神話の新たな地平を切り拓いてしまった作品である。非常にくだらなくて楽しめた。
どんな狂った展開を見せても「まあ無貌の神だから」「まあ這い寄る混沌だから」と割り切れるのも、このキャラクター選定のおかげだろう。誰が混沌に一貫性を期待するだろうか。
いろいろなところから元ネタを引っ張ってきた文章は、クトゥルー神話というものの生い立ちを考えれば、正統に則っていると言えなくもない。そもそもラヴクラフトだって、先行作品からいろいろ引っ張ってきているのだ。
クライマックスに明かされる真相は名状しがたいほどに愚劣で、クトゥルー神話のくせに読後は歪な爽快さを残す。
ダーレス批判などバカバカしくなるような一冊。作品自体がある種の這い寄る混沌であった。めでたしめでたし。