■職場の人々と宴会
いちおうこの一年を振り返って云々とか、来年はどうするか云々なんてのを話す……という目的もあったのだが、隣の座敷がうるさかったりで所定の目的が果たせたかどうかは疑問。
酒を飲みながら仕事の話をするのは苦手だ。酒のせいで頭の働きも鈍っている状態で、有意義な話をするのは難しい。酒類抜きならまだいいんだけど。
いちおうこの一年を振り返って云々とか、来年はどうするか云々なんてのを話す……という目的もあったのだが、隣の座敷がうるさかったりで所定の目的が果たせたかどうかは疑問。
酒を飲みながら仕事の話をするのは苦手だ。酒のせいで頭の働きも鈍っている状態で、有意義な話をするのは難しい。酒類抜きならまだいいんだけど。
退社後は推理作家協会事務局へ。
といっても今日のところは、委員一同の顔合わせと候補作の割り振りだけ。なにぶん短編なので、対象作品は雑誌やアンソロジーから切り抜いてホッチキスで綴じたものがそのまま配られる。
候補作を割り振るプロセスは秘密結社の儀式っぽくて面白かった。
帰宅途上で、某編集部から原稿督促電話。もう少しで書き上げられそうなので、「9時半に送る」ということで決着。帰宅後なんとか完成させて、9時半にメールで送付し、再度お詫びの電話をかけたところ……
「実は9時半というのは、明日の午前9時半を指していたんだよ!」
ということが判明。
な、なんだってー! というわけでもう少し見直してから、寝る前に再度送ったことである。
それにしても急いだものだ。時間に余裕があるときでも、このくらいの速さで書ければいいのだが。
両親+妻+私で、両親宅に近いフランス料理店にて昼食。
……なんだか最近、外での飲食記録になっているのでほかのことも。
食事の後は両親宅へ。母が私の少年時代(細い。少なくとも太くない)の写真を妻に見せてる間に、いくつもの段ボールに詰めて保管してもらっている本の山をのぞく。
……そうか、こんなにSFを持っていたのか。
圧倒的にSFだった。そういえば高校生の一時期まで、私の読書は圧倒的にSF寄りだったのだ。SFマガジンは読んでいたけど、ミステリマガジンは手にしたこともなかった。
そんな人が今ではミステリマガジンにブックレビューを書いてるわけで、人の生とはわからないものである。
ちなみに読書がミステリ中心になったきっかけは、高校生のころに読んだ『夜明けの睡魔』ISBN:4488070280 。それまでも多少は海外ミステリを読んでいたけれど(カーとかクイーンとか)、系統的に読みはじめたのはそれからだ。
『火星の土方歳三』が面白かったので、同趣向の第二弾にあたるこちらにも手を出してみた。日露戦争時の日本海軍の参謀・秋山真之が金星(もちろんバローズの描いた金星だ)に行き、大平原を駆ける陸上艦隊を率いて戦う。
作者はバローズの金星シリーズに強い思い入れがあるそうで(陸上戦艦が出てくるからだ)、『火星~』よりも先にこちらを書きたかったらしい。
……が、できばえは『火星~』には遠く及ばない。
主人公の設定がその一因だろう。新撰組副長ならばともかく、秋山真之は日本海軍参謀というデスクワークの人なので、こういう冒険活劇にはあまり向いていない。クライマックスの陸上艦隊戦が数少ない見せ場だけれど、あとがきで明かされる作者の思い入れのわりには描写も分量も控えめだ。
ほかには、現実に密着しすぎたひねりのない風刺(アリコ国とパンジャ国なんてのが出てくる。パンジャ国の指導者の描写は露骨に小泉純一郎をなぞっている)、「火星」に比べ乏しいディテールの描写など。ちなみにこれは、バローズの原典にも見られる欠点である。あとがきを読むかぎりでは、作者もそれに気づいていたのではないか。
作者は本当に金星シリーズが好きなのだろう。原典のまずい部分まで忠実に再現してしまう。これは偽りのない愛だ。惚れてしまえばあばたもえくぼ。ダメなところもいとおしい。ただし残念なことに、読者がその愛を共有できるとは限らない……。
ざっとアンケート回答を眺めたところ。(2004/12/07現在)
ちなみに私が選んだのはこんな作品。
国内
1.『裸者と裸者』打海文三
2.『Q&A』恩田陸
3.『紅楼夢の殺人』芦辺拓
4.『サウダージ』垣根涼介
5.『天才パイレーツ』戸梶圭太
6.『モンスターズ1970』井上雅彦・菊地秀行・田中啓文・友成純一
海外
1.『マンハッタン狩猟クラブ』 ジョン・ソール
2.『地獄の世紀』サイモン・クラーク
3.『奇術師』クリストファー・プリースト
4.『形見函と王妃の時計』アレン・カーズワイル
5.『荊の城』サラ・ウォーターズ
6.『迷宮の暗殺者』デイヴィッド・アンブローズ
『地獄の世紀』を挙げた人が、私のほかには集計外の内藤陳さんだけ、というのがちと寂しい。
学生のころ、所属していた大学サークル枠で海外作品のベスト6を選んだことがある。ちょうどマイケル・スレイドの『グール』が出た年で、私は嬉々としてこいつを上位にぶち込んだ。しかし悲しいことに、その年の「このミス」で、他に『グール』を選んだ人は誰もいなかった。唯一『グール』に言及していたのはバカミスのページだけ。
10年以上前のあの寂しさを、また思い出してしまった。冬の夜は長く寒い……
祝ってくださったのは、逆密室関係者をはじめ、ミステリ関連の友人知己の皆さん。
会場は焼肉屋。幹事に「なぜ焼肉?」と聞いてみたところ、「だって古山さん北朝鮮ネタ好きじゃないですか」と予想通りの回答が。北朝鮮はいま、焼肉どころではないはずだが。
途中、幹事の指示で、妻ともども生肉をもって各テーブルに赴き、肉を焼いて回った。キャンドルサービスならぬ焼肉サービス。 私の周辺は妙なことを考えつく人がたくさんいるので楽しい。
逆密室恒例・結婚記念文集も、作られる側に回ってみると感慨深いものがある。逆密室の面々による連作バカミスは素晴らしいできばえでありました。
ご出席いただいた皆さま、文集をつくってくださった皆さま、幹事を引き受けてくださった方々、ほんとうにどうもありがとうございました。
手に取ったきっかけは、この強烈な題名だった。火星の土方歳三。志茂田景樹の怪作『戦国の長嶋巨人軍』と同じ形式である。
五稜郭で戦死した土方歳三が、バローズ描くところのバルスーム──火星に転生するというお話。史実でも刀振り回していた土方歳三にとっては似合いの舞台だろう。
「捕らわれた牢獄の中で力強い味方に出会う」なんてのをはじめ、バローズがよく使っていたパターンを再利用して話を組み立てている。舞台が似通ってるだけじゃなくて、ストーリーにも「らしさ」が生まれている。新撰組のエピソードとして伝わっている話をアレンジして取り入れてみたり、細かい工夫も行き届いている。「火星シリーズ」という原典を踏襲しながら密着しすぎない、バランスの取れた作品だ。
舞台と主人公がしっくり馴染んでいるおかげで楽しく読めた。題名からすると際物に見えるけど、『戦国の長嶋巨人軍』と一緒にしてはいけない(『戦国の~』は楽しいと言えば楽しいのだが、際物以外の何者でもない)。
※2008/01/03追記:いま試しに『戦国の長嶋巨人軍』のリンク(amazon行き)をクリックしてみたら、\6500~\7000という気が狂ったような値段が付いていた。戦国で長嶋で巨人軍なわけだが、よく考えてほしい。