パーフェクト・コピー

ASIN:4591083500アンドレアス・エシュバッハ / ポプラ社

イエスのビデオ』の作者によるジュブナイルSF。

ヴォルフガングは15歳。親にいわれるままにチェロの練習に励んでいたが、ある日「これは本当に自分のやりたいことなんだろうか?」という疑問を抱く。そのころ、キューバの科学者が「16年前にクローン人間を作った」と発表する。そして、ヴォルフガングもクローン騒動の渦に巻き込まれてゆく……

親の敷いたレールに疑問を抱く若者、というジュヴナイル向けのまっとうなテーマを、クローン人間という素材を使って描いている。

主人公が思いを寄せる女の子は、腕っぷしも強い優等生とつきあっている。そんな彼女が、少々引っ込み思案の変な奴である主人公のほうを振り向いてくれる、という実にありがたい展開も待ち受けている。このへん、想定される読者層にあわせたような気がする。

ところで『イエスのビデオ』ではソニー製品を異常なまでに堅牢にしてしまった作者だが、今回も少々無茶をしている。もっとも、ほぼ全編を世間知らずの15歳の少年の視点で統一しているので、無茶もうまく包み込まれてはいる。

伏線があからさまではあるけれど、まずまずまっとうに楽しめる娯楽作品。

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ゴースト・ハンターズ

ASIN:4125008671尾之上浩司監修 / 中央公論新社

 ホラー・アンソロジー。序文では、『吸血鬼ドラキュラ』のヴァン・ヘルシング教授や、ホジスン描くカーナッキなんぞの名前が挙がっているけれど、ここに登場するハンターたちはいささかクセモノ。

収録作

デスメイト-死は我が友 / 山下定

 このアンソロジー中では、いちばんオーソドックスなゴースト・ハンターかもしれない。ほかは名探偵とかガンマンとかホームレス狩りの少年だったりするので。
 「敵」があまり印象に残らないのが残念だけれど、異様な主人公の描写は面白い。

「スマトラの大ネズミ」事件 / 田中啓文

 「赤毛連盟」ばりの怪しい新聞広告あり、ホームズの失踪を心配するワトソンあり、ホームズに関する新しい解釈あり、という正統派のホームズ・パスティーシュ。「スマトラの大ネズミ」の正体は、その気色悪さも名前の由来もこの作者らしい。

ゾンビ・デーモン / 友成純一

 毎度おなじみの流血肉汁臓物祭り。とてもいい加減なエピローグがついていて、他の作品だったら怒るところだが、この場合はたいへん似合っていて素晴らしい。

「根無し草」の伝説 / 菊地秀行

 19世紀後半、開拓時代のアメリカ。 ある幽霊屋敷の謎に挑むガンマンたちの物語。物語の全貌がなかなか見えてこないけれど、特技や個性のはっきりしたキャラクターたちの駆け引きが楽しい。「凄腕」どうしの勝負の場面は、作者ならではの読ませるできばえ。

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2004-11-30

盛岡行ったり年間ベストを選んだり

11月は何をしてたかというと……

  • このミスや週刊文春のアンケート回答。読み残しを必死に読む。
  • 急遽、月末までに某賞の下読みをすることに。
  • その合間に”Half-Life2″ISBN:B0006A7EHQ で遊ぶ。このゲーム、シナリオを書いてるのはマーク・レイドローなのですね。
  • みちのくミステリー映画祭@盛岡へ。しかし飲み食いばかりで映画は1本見ただけ。一時期に比べるとラインナップが弱くなってるような気もする。
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地下鉄

 かつて通勤に地下鉄を利用していたせいか、地下鉄が舞台の小説がなにかと気になる。

 ロンドンやニューヨークの地下鉄は、ミステリやホラーでもしばしば舞台として取り上げられている。東京の場合、すぐに思い浮かぶのは荒俣宏『帝都物語』の地下鉄建設エピソードくらいだけど。

 地底全般については地底小説を参照。

地下鉄小説リスト

 見つけたり思い出したりしたら随時追加します。

東京

『帝都物語』荒俣宏
時は大正。地下鉄の建設現場を脅かす魔物たち。そこに投入された近代兵器とは……?

ロンドン

『トンネル・ヴィジョン』キース・ロウ
1日でロンドンの地下鉄のすべての駅を踏破できるか? 無謀な勝負に新婚生活を賭けてしまった男の、冒険の一日。
『ネバーウェア』ニール・ゲイマン

ニューヨーク

『地下鉄サム』ジョンストン・マッカレー
地下鉄専門のスリの名人の物語。ユーモラスなコント集。
「ミッドナイト・ミートトレイン」クライヴ・バーカー
戦慄のデビュー作。
「地の底深く」R.B.ジョンソン
『闇の果ての光』ジョン・スキップ&クレイグ・スペクター
酔っぱらったオタクどもが、地下鉄で暴れる吸血鬼と渡り合う!
『マンハッタン狩猟クラブ』ジョン・ソール
地底で人知れず繰り広げられる「狩り」。無実の罪で捕らえられ、狩りの標的にされてしまった青年の運命は……→詳細

その他

「地下鉄ジャック」ジョー・R・ランズデール
ゴッサムを恐怖に陥れる連続殺人鬼とバットマンの死闘。→詳細

おまけ:東京の地下鉄

東京の地下鉄に関しては、小説よりも『帝都東京・隠された地下網の秘密』が強烈だった。
ASIN:4896916808ASIN:4896918118

何が言いたいのか分かりにくい文章のせいか、妙に陰謀の香りが色濃く感じられるのもいい。面白いんだけど、すべてを真に受ける気にはなれない本だ。

そういえば、こんなのもあった。
ASIN:B00012T0I0

新橋駅のシーンが忘れられない。

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地底小説

 洞窟や地下道なんぞを舞台にした小説。
 「英国地底魂」にも書いたとおり、イギリス人は地底モノを好んで書く、というイメージがある(そんなイメージを抱く人はあまりいないのかもしれないが)。江戸川乱歩や横溝正史も、地底だの洞窟だのを書くのが大好きですね。

 で、私はそういうのを読むのが大好きです。

リスト

地下鉄の話は別項に移した。

※右の「ユーゴスラビア/天然」などの記述は、所在地と、天然のものか人工のものかの区分。人間以外のものが作った場合は「人工(人間外)」としておいた。

  • 『ポセイドンの涙』安東能明 青函トンネル / 人工
  • 『海賊オッカムの至宝』プレストン&チャイルド 米国メーン州沖 / 天然+人工
  • 『カタコンベ』神山裕右 新潟 / 天然
  • 木曜日に生まれた子ども』ソーニャ・ハートネット  オーストラリア/人工
  • 『大洞窟』クリストファー・ハイド  ユーゴスラビア/天然
  • 『地下洞』アンドリュー・ガーヴ  ウェスト・カンブリア/天然
  • 『地底探検』ジュール・ヴェルヌ  アイスランド?/天然
  • 『地底迷宮』マーク・サリヴァン  アメリカ/天然
  • 「地軸二万哩」小栗虫太郎  アフガニスタン/天然
  • 「地底獣国」久生十蘭  沿海州~千島/天然
  • 地底獣国の殺人』芦辺拓  アララト山中/天然(住人あり)
  • 『地底の世界ペルシダー』エドガー・ライス・バロウズ  /天然(住人あり)
  • 『クリムゾン・リバー』ジャン・クリストフ・グランジェ  フランス/天然
  • 『シブミ』トレヴェニアン  スペイン・バスク地方/天然
  • 『洞窟』ジェイムズ・スターツ  イタリア/天然+人工?
  • 『洞窟』ティム・クラベー  東南アジア?/天然
  • 『八つ墓村』横溝正史  岡山/天然
  • 『影男』江戸川乱歩  東京/人工
  • 「赤毛連盟」コナン・ドイル  ロンドン/人工
  • 『キング・ラット』チャイナ・ミーヴィル  ロンドン/人工
  • 『アンダードッグス』ロブ・ライアン  シアトル/人工
  • 『ネバーウェア』ニール・ゲイマン  ロンドン/人工(住人あり)
  • 『グール』マイケル・スレイド  ロンドン/人工
  • グローリアーナ』マイクル・ムアコック  ロンドン/人工(住人あり)
  • 『ジョン・ランプリエールの辞書』ローレンス・ノーフォーク  ロンドン/天然
  • 「シェークスピア奇譚」グレアム・マスタートン  ロンドン/人工
  • 『スラッグス』ショーン・ハトスン  ロンドン郊外?/人工
  • 『穴掘り公爵』ミック・ジャクソン  イギリス/人工
  • 『紙葉の家』マーク・Z・ダニエレブスキー  アメリカ東部/不明
  • 「狂気の山脈にて」H・P・ラヴクラフト  南極/人工(人間外)
  • 「狂気の地底回廊」ブライアン・ラムレイ  スコットランド?/人工(人間外)

履歴

  • 2004/10/23 作成
  • 2005/08/23 『ポセイドンの涙』追加
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暗黒館の殺人

ASIN:4061823884ASIN:4061823892綾辻行人 / 講談社ノベルス

擬ゴシックロマン、といったところか。

もともと館シリーズといえば

  • ミステリとしての「びっくり」
  • 異形の館、その奇異な仕掛け、奇妙な住人といった小道具が醸し出す雰囲気

で、前者が主、後者が従だったのだけれど、本書ではこれが逆転しているように感じた。

 たとえば、館の住人。従来の作品であれば、彼らの生い立ちなども「びっくり」のための駒として設定されていたのだけれど、本書ではそれが希薄で、雰囲気醸成それ自体が目的と化している。
 で、あとは「謎への奉仕」という役割から解き放たれた駒たちが、どれだけ独自の存在感を出せるか、なのだけれど……

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2004-10-19

休みも終わってまた出勤。

ちと面倒。

新刊の『マンハッタンの中心でアホと叫ぶ―カウボーイ探偵うたう大捜査線』ISBN:479749475って、原題は”Bloat from the Past”なのですね。……邦題がヤケクソ気味だ。

最近の翻訳作品の邦題でうまいな、と感じたのは『リリーからの最後の電話』ISBN:4789723542 。 謎解きそのものはたいしたことはないけれど、この邦題のおかげもあってなかなかいい雰囲気の作品に思える。なぜ? ……というのは読んでみてのお楽しみ。

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2004-10-18

旅行のため

10/12~18と休みを取っていたのだが、

明日からまた出勤である。

行きたくないよう。

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2004-10-15

旅行から帰ってきた

旅先で読んだのは、

など。

暗黒な館で人が死ぬ話と、インドネシアで景気よく人が死ぬ話。後者はともかく、前者は南の島で読むには非常に似合わない本だった。

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2004-10-10

昨日の大騒ぎとは対照的に

今日は穏やかな一日。

明日から旅行に行くのだけれど、旅先にどの本を持ってゆこうかと悩んでいる。

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