綾辻行人 / 講談社ノベルス
擬ゴシックロマン、といったところか。
もともと館シリーズといえば
- ミステリとしての「びっくり」
- 異形の館、その奇異な仕掛け、奇妙な住人といった小道具が醸し出す雰囲気
で、前者が主、後者が従だったのだけれど、本書ではこれが逆転しているように感じた。
たとえば、館の住人。従来の作品であれば、彼らの生い立ちなども「びっくり」のための駒として設定されていたのだけれど、本書ではそれが希薄で、雰囲気醸成それ自体が目的と化している。
で、あとは「謎への奉仕」という役割から解き放たれた駒たちが、どれだけ独自の存在感を出せるか、なのだけれど……