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アイルランドの伝承を下敷きにした怪奇/幻想小説集。 筋書きはオーソドックスな怪奇小説だが、収録作のすべてがアイルランドの風土に立脚しているところがポイント。
本書では2番目に収録されている「幻の島ハイ・ブラシル」で、アイルランド神話には海の底に住む邪悪な神が存在する、という記述を見て、おおクトゥルー神話だ、そういうネタは出てこないのか、とつい期待してしまった。
……あった! あった!
「深きに住まうもの」。題名からして嬉しくなってしまうくらいベタなクトゥルー神話である。ぐずぐずした男が逡巡しながらしたためる手記。ニューイングランドで幕を開ける物語。排他的な寒村への帰郷。結末がやや緊密さに欠けるけれど、ここまでお約束に忠実なのは素晴らしい。「インスマスの影」を読んだことのない人が読んでもおもしろくないんじゃないか、という懸念はあるけれど。
第二次大戦前夜、不穏な予感をはらんだ欧州を舞台に、ハンガリー人の主人公が数々の秘密任務を遂行する物語。翳りを帯びた情景描写がよい。
主人公の祖国がイギリスやドイツやソ連といった大国ではなく、その狭間で翻弄される小国に設定されているところもポイント。スコープは小さいけれど、スケールの大きさは十分に感じられる。
これから読むもの・読み直すもの
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