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臆面もなく面白い。ディクスン・カーの大仰なスタイルって、二〇世紀を舞台にした作品では笑いのタネだが、過去の時代を舞台にした作品では輝きを帯びて見えるから不思議だ。
二〇世紀には失われてしまった古めかしいロマンと冒険。ディクスン・カーは間違って二〇世紀に生まれてしまった男なのかもしれない。でも、数々の快作や怪作を楽しめるのは、彼が生まれる時代を間違ってくれたおかげである。
予想どおりの面白さ。今読んでいるのはミニチュア篇だが、自宅の精巧な模型を作った友人の思い出とか、俳句を二文字にまで切りつめる話とか、楽しいエピソードが満載である。
以下は著者がアルバイト先の病院で見かけたもの。
ふと棚におかしなものが置いてあるのが目に入った。一部を斜めに削り取った細長い木片で、古くて全体が煤けたような色になっている。しかも表面には、下手くそな文字がマジックインキで書いてある。「私を捨てないで下さい」と。
「捨てないで」と訴えかける奇怪な木片。だが、この木片には合理的な用途が存在し、書かれた文字にもちゃんと存在意義があったのだ!
……お、エラリー・クイーンの話が出てきた。
明治45年、外交官の父に呼ばれてメキシコに旅立った若き日の堀口大學の物語……だそうだ。ちなみに私にとっての堀口大學といえば、新潮文庫のルパン傑作選である。
デビュー作『レフトハンド』はすさまじく変だったけど、その後はまともな娯楽小説を書いている人の第四作。
これから読むもの・読み直すもの