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楽しめる作品。紹介文はガジェットを前面に押し出していたけれど、どちらかというと主人公を初めとする人々の心情の動きが主体となるおはなしだ。
小道具の扱いは意外にあっさりしている。特に「十二人の道化クラブ」に集う人々はもっと奇人揃いで、あやしい会則ももっと前面に出てきてもよかったのではないかと思う。芦辺拓やマイケル・スレイドみたいな、呆れたガジェット偏愛を期待してしまったのだが、そういう趣旨の作品ではない。
ただ、登場人物の描き方もけっこうあっさりしているので、もっと執拗にねちねちと描いてくれてもよかったと思う。
1939年。ソ連は人口370万の小国フィンランドに侵攻。旧式な装備の小規模な軍隊しか持たないフィンランドはあっさり敗れるかに見えた。だが、彼らは抵抗を続け、次々とソ連軍を壊滅に追いやる。その善戦は「雪中の奇跡」として世界に報じられた……という、「冬戦争」の全貌をまとめた書物。
貧弱な軍隊で圧倒的な敵に挑むというシチュエーションが泣かせる。私にとっては、世界の中心で会いににいきます、とかそういうのよりも泣ける。
著者もフィンランド軍に感情移入するあまり、ときどき地の文でフィンランド軍のことを「我々」なんて書いていたりする。別に『裁くのは誰か?』みたいな趣向ではない(と思う)。著者はフィンランド人ではないので、『病める巨犬たちの夜』でもないはずだ。……というかですね、文章がとても下手なのが泣ける。
そんなわけで泣いてばかりです。おもしろいけど。
これから読むもの・読み直すもの