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いやあ楽しい。ホラーなんだから“恐怖”とか“戦慄の”とかいう言葉でもって表すのが本来のありかただろうけど、こいつを読んでいて最初に感じるのは楽しさだ。
根っからのクトゥルー神話好きが、「ぼくの考えた邪神」が大暴れする物語を夢想し、この現実社会を怪奇と妄想のワンダーランドに組み替えてゆくのだ。楽しくないはずがない。
幼い子供が、さまざまな色や形のブロックを組み合わせて「ぼくの考えた乗り物」を組み立てるのに似ている。ブロックの代わりに使うのは、「忌まわしい地底都市」や「狂えるアラブ人が記した禁断の書」や「封印された太古の邪神」だったりするけれど。
そんなラムレイのワクワクしているさまが行間から伝わってきて、とても怖がっている場合ではありません。こちらも驚喜しながら読んでいる。
……だった、ということを今日はじめて知った(Wikipediaの東海中学校・高等学校より)。
同じ高校のミステリ作家といえば、大沢在昌氏もそうだ。大沢氏と同じ高校、というのは私も在学中に知っていた。『新宿鮫』が人気を集め出したころ、ある先生が国語の授業中に、ふと「そういえば昔の教え子が作家になって……」とこの本の話をしていたのだ。
そう、『新宿鮫』はそれなりの進学校で、現代国語の授業にて言及された小説である。このことは覚えておくといい。
ちなみに、昨年の総選挙直後に覚醒剤で捕まった衆議院議員も同じ高校。いけない薬にうつつを抜かす政治家というと、大沢在昌よりはむしろ大藪春彦の本に出てきそうだ。もっともあまり格上ではなく、出番はせいぜい前半まで。復讐に燃える主人公の処刑リストでは、かなり始めのほうに載っている名前だ。本人は厳重な守りのもとにいるつもりでも、主人公はそれをいとも簡単にくぐり抜けて彼のもとにやってくる。凄惨なやり方で痛めつけられて失禁。聞き出したいことを聞き終えたら、主人公はあっさり彼の命を絶って復讐を完遂。その後も彼の存在を置き去りにしてヴァイオレントな復讐劇が繰り広げられ、主人公の行く手には死体の山が積み上がる。憎悪のマエストロ・大藪が放つ禍々しい熱気は、時代を超えて読者の心に暗い炎を燃え上がらせる。大藪を知らぬ若者たちよ、この衝撃に心を震わせるがいい。偉大なり大藪。
で、何の話だっけ。
オライリーというコンピュータ関連の技術書を出してる出版社がある。そこの本はたいてい表紙が動物で、レイアウトも一定していて、表紙を見ればオライリーの本と一目で分かるようになっている。
そのオライリー風のブックカバー画像を作れるページがあったので、いろいろ遊んでいた。
http://www.monkeyboy.is-a-geek.org/oracover.jsp
いつのまにか手元の動物写真をレタッチして表紙部分に貼り付けたり。mixi経由でこちらを読まれている方は、mixiでの私の写真が変わったことに気づかれたかと思う。
そんなときこそ実に魅惑的に楽しく読めてしまう。短編集を選んでいるのはせめてもの自制心のあらわれで、これが『地を穿つ魔』だったりした日には原稿が間に合わないことは間違いない。
こういうすぐれた短編って、オチを知って再読してもなおスリリングなのですね。構築美というか、語り口のなせる技だろう。
ホラーだったかどうかは書かないでおこう。
廃墟探検に出かけた一行が体験する恐怖の一夜を描いた小説である。閉鎖されて、まもなく取り壊される予定のホテルに潜入した男女。だが、そこにいたのは一行だけではなかった……。
平板に見えた登場人物の表情が、徐々に浮かび上がってくるドラマが素晴らしい。閉鎖空間での緊張、ホテルの抱えた因縁と惨劇、そして一行が遭遇する暴力と恐怖。それらが絡まり合うクライマックスは実に鮮やか。
ミステリマガジン新刊評用読書はこれにて終了。
異色作家短編集。原稿の合間の軽い現実逃避に。
改めて読むとけっこう怖い。「陰謀者の群れ」なんて、陰謀小説的観点からも興味深い作品だ。
「廃墟」というものに興味を抱く人は多い。本書の登場人物たちも、そんな廃墟探検家。かつての豪華ホテルに潜入した一行の運命を描くホラー(かな?)。
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