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20歳の堀口大學が、外交官の父に呼ばれて、その任地であるメキシコに旅立つ……という物語。
つねに正義を貫けるわけではない外交の場で生きる父と、それを許せない息子との関係が話の軸になっている。
ただ、読んでいてまず印象に残るのは、「明治の日本青年」が外国の風物に接したときの新鮮な驚きだ。「何を」見たのかよりも、「どのように」見たのかを語るところに力を注いでいる。ストーリー自体はほとんど進まず、主人公がいろいろなものを眺めて回っているだけの場面でも、熱気と興奮を感じさせる。
ところで、登場する仏語教師の名前が「ドン・ルイス・ペレンナ」で、その息子が「アルセーヌ・ダンドレジー」だったりするのだが、これはやはり堀口大學がルパンものを訳していることに基づいたお遊びだろうか。この先生、彼に『奇岩城』とおぼしき本をプレゼントしているのだ。
警察小説であると同時に本格ミステリでもある、というのは解説にもあるとおり。丹念に手がかりを追って、曖昧な部分をひとつひとつ潰してゆく捜査活動の末に浮かび上がる意外な真相。読後、思わず最初のページに戻って読み直してみたくなる作品だ。
来月刊行の「完全版」の解説執筆用に再読。
旧版はいろいろなところを削った短縮版。完全版の方は、田舎町のパニックを描くことよりも、主人公と事件との向き合い方に重点を置いていて、冒険小説として楽しめる。何より人物描写が深化しているので、旧版よりも心に響く小説になっている。
あと、クライマックスが全然違う展開に。旧作を読んだ方も、完全版を読んだ方がいいと思う。
これ以外も、マレルの旧作をいろいろ読み返していた。ちなみに本書の主人公は作家で、その父親は第二次大戦で戦死……と、マレルの境遇そのまんま。「読者を楽しませること」に徹していながらも、何かと自身の姿を投影する人なのだ。
こちらはミステリマガジン新刊評で取り上げた。帯には「異色作」と書いてあったけれど、読んでみればたいへんゴダードらしい作品。
第4回このミス大賞・特別奨励賞。「執筆時12歳」というところが目立ってしまって、色眼鏡つきで見られがちな作品である。今後も書き続けてゆくのであれば、作者にとっては重荷かもしれない。
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下巻に入ると徐々に物語のテンポが上がる。気がついたら読み終えていた。
たぶん単独でもそれなりに楽しめるはずだが、シリーズを順に追ってきた読者向けの作品だろう。
さまざまなジャンルの衣装をまとってはいるものの、中心にあるのはキャシー・マロリーという主人公の存在。ラストの格好いい風景などはその象徴だ。
スタイルはずいぶん違うけど、ヒロインの存在感に"Elektra"あたりを連想した。
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