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Bookstack

2009/07/19(日) 2009-07-19

未分類
皆既日食に関するニュースを見るたびに、なぜかチェスタトンを思い出すのだが、たぶん:

日食 → 観察 → 太陽を直接見てはいけません → 「アポロの眼」

という連想が働いているのだと思う。

最近、なぜかチェスタトンが脳内に進入してくることが多い。『ルシアナ・Bの緩慢なる死』を読んだときもそうだった。こちらもクライマックスの状況がアレと重なるところがあったせいだろうか。

ちなみに『ルシアナ・B~』は、なんでも「奴らの陰謀だ!」と結論づけてしまう陰謀論信奉者の思考回路がうまく再現されていた。

2009/07/18(土) 2009-07-18

日常
 数年前から、ScanSnapというドキュメントスキャナを使っている。先日、最新機種に買い換えた。スキャン速度がかなり上がっていて、大量にスキャンする身としてはかなり便利。
 何をスキャンするのかというと、部屋に溜まった本や雑誌だ。空間のコストもバカにならないので、PCに取り込んで紙は処分している。十数年分のミステリマガジンも全部スキャンしてしまったので、今ではDVDーR2枚くらいに収まっている。『レインボーズ・エンド』に描かれた、本を裁断してスキャンする計画にたいして違和感を持たなかったのも、そんなものを使っているせいかもしれない。
 最近は雑誌だけでなく本もスキャンしている。ハードカバーは無理かと思っていたが、やってみたら意外と簡単だった。物理的には特に難しい行為ではなく、表紙と背表紙と裏表紙をはがして、あとは綴じられた部分をディスクカッターで切り落とすだけ。
 むしろ、精神的な抵抗の方が大きかった。法月綸太郎「切り裂き魔」から野村美月『"文学少女"と繋がれた愚者』に至るまで、本を切り裂くという行為はよからぬこととして描かれる場合が多い。そのせいか、初めてポケミスをばらしたときは、ノワールの主人公が初めて人を殺すときのような不穏な魂の震えに襲われた。『バカなヤツらは皆殺し』は名作だと改めて思った。

マイクル・ワイマンの逆襲

マイクル・ワイマンの逆襲 / ボブ・クック / 米山菖子訳 / サンケイ文庫

 56歳のワイマンはMI6の職員だが、公式には大学の研究員。しかし政府の支出削減のせいで、両方の職を失うことに。折しも、イギリスに情報を提供していたスパイ網のトップが東ドイツで射殺された。MI6に内通者がいるのでは? かくして、ワイマン最後の大仕事が始まった……

 英国情報部が東側のスパイに浸透される……というスパイ小説ではおなじみの話題で幕を開けるが、話は明後日の方向に飛んでいく。無能と見なされながらも実は教養豊かで頭も切れる窓際情報部員が、CIAやKGBまで巻き込んで繰り広げる最後の仕事。終盤の展開が非常に予測しやすいという難点はあるが(これは訳者あとがきも不用意だと思う)、機知に富んだ会話や文章だけでも満足できる。「景気後退が進行中なのだ」の台詞は繰り返しギャグとして何度も使われ、ぐうたらながらも頭の冴えたワイマンのキャラクターも魅力に富んでいて楽しく読める。

 ワイマンがどんな人物かは、登場わずか数ページで十分に語られる。例えば……
ミセズ・ホッブズが掃除するたびに、彼はその後何ヶ月も何かが見つからなくてぶつぶついった。ミセズ・ホッブズには本を本棚に、ファイルをキャビネットに、用箋を文房具戸棚にしまうという、腹立たしい習慣がある。ワイマンはこのような能率主義には我慢ができなかった。
 とか。共感を覚える箇所ではある*1

 ところで、上記引用部に出てくる「ミセズ・ホッブズ」もそうだけど、作中の人名や固有名詞は、哲学者や数学者にちなんでいるものが多いようだ。そもそも主人公のワイマンという名前も、論理学者クワインの論考に出てくる架空の哲学者からとられている。大学に残っている彼の友人の名はロックやヒューム。東ドイツ高官のコードネームはプラトンで、彼のために用意された口座はスイスのデカルト銀行のもの。

*1 : ちなみに本書は再読。きっかけは、本の山を片付ける途中で手にとったらつい止まらず……というものだった。ワイマンほどではないと思うが、私の部屋もかなり散らかった状態である。

レインボーズ・エンド

SF
ASIN:4488705057ASIN:4488705065 ヴァーナー・ヴィンジ / 赤尾秀子訳 / 創元SF文庫

 読んだのはしばらく前のことではありますが。

 2030年代。サッカーの試合に流れたCMは、実は人間をマインドコントロールするための秘密兵器だった……なんて謀略から始まって、「ウサギ」と呼ばれる正体不明のハッカーが日欧印の情報機関と接触し……という展開に、すっかり近未来エスピオナージュを期待してしまったのだが、読んでみたら全然違った。

 物語の中心にいるのは、画期的治療法によってアルツハイマー病から回復した75歳の詩人。いわば過去からやってきた人物である。そんな男が、再び社会に馴染むための教育を通じて、ネットとユビキタス・コンピューティングが激しく発達したびっくり新世界に触れていく様子が語られる。かつての気難しい偏屈爺が徐々に変わっていくというおまけつき。

 作中、大学図書館の蔵書を裁断してスキャンするというリブラレオーメ計画なるものに対して、激しい反対運動が巻き起こる。しかし、なんでもデジタル化するのが当たり前というご時世で、そんなに反対運動が盛り上がるものだろうか、と疑問に思った。

裁断が反発を招くのなら、こんなのを使えばいいのに……

もっと小さくて場所をとらないものなら、私も1台ほしい。
  • 2009-07-18 Bookstack 古山裕樹
     数年前から、ScanSnapというドキュメントスキャナを使っている。先日、最新機種に買い換えた。スキャン速度がかなり上がっていて、大量にスキャンする身としてはかなり便利。 何をスキャンするのかというと、部屋に溜まった本や雑誌だ。空間のコストもバカにならな...

2009/07/15(水) pomeraの利点

日常
 そうそう、もうひとつメリットがあった。

 これ、「文章を書く」以外のことはいっそ清々しいくらいに何もできないので、原稿を書くことに集中できる。ネットにつながったPCで書いていると、つい関係ないことに手を出してしまいがちだ。

 私のように、堅固な意志や集中力や気合いや根性や真剣さなどが欠如している人間にとっては、気を紛らすような多彩な機能はむしろ邪魔なのかもしれない。

1: 単二 『うむー。同じく不埒な人間として単機能のよさに同感。 やっぱ買うかな〜』 (2009/07/17 9:42)

2: イゾノ 『わー、まったくもって耳が痛いです!』 (2009/07/17 23:46)

3: 古山裕樹 『あくまで私自身のことを指しているわけですが、同じ悩み(?)を抱えている人が他にもいると知って心強いです(←そして油断する)。』 (2009/07/20 11:22)