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2005年6月の日記

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2005/06/30(木) 犬の系図と冬将軍

日常

ミステリマガジン8月号……というよりも犬の系図

ISBN:B0009WSSKS

「隔離戦線」のページで豊崎由美さんが、『ベルカ、吠えないのか?』ISBN:4163239103について、「犬の系図を載せて欲しかった」ということを書かれている。

 私も欲しい。もっとも、単純に犬の系図が載ってるだけだと、最初に読むときには目の毒だ。きっと、未読のページに出てくる犬まで載っているから。

 電子化されていて、現在読んでいるページのノンブルを入力すると、その範囲ですでに書かれているはずの情報だけまとめて出してくれる。そういうインタラクティヴな犬系図が欲しい、と思った。

[]雪中の奇跡 / 梅本弘 (2) 読了

ISBN:4499205360

 文章がアレだというのを差し引いても面白く読むことができた。強大な敵に劣勢な軍隊で挑むという泣かせるシチュエーションのおかげだろう。多数の写真も、文章がアレなのを補っている(もっとも、フィンランドの地理なんてよく知らない上に、地図が少ないので戦況がわかりにくい)。

 ナポレオンにしてもヒトラーにしても、ロシアに攻め込んだ外国の軍隊は"冬将軍"に痛い目にあわされている。そのロシアの兵士たちが、フィンランドの冬に苦戦するさまは興味深い(温暖な地方から集めてきた兵士も多かったようだ)。ここでの経験が、後のドイツ軍との戦いにも活かされたのだろうか。

 同じ著者による、第二次ソ・フィン戦争を描いた『流血の夏』ISBN:449922702Xも手に入れてみた。

1: shinta 『見出しを見て、犬の系図を作ってくれたのかと思ったよ。』 (2005/07/01 13:36)

2: ふるやま 『ご期待に添えずすいません。ヒマだったら作るんですが……』 (2005/07/01 24:24)

3: nobu 『しっかし、すごい読書量ですよね。年何冊ぐらい読まれるんですか?』 (2005/07/01 26:14)

4: ふるやま 『実はちゃんと数えたことがないので、はっきりしません…。でも、書評を書く人としては、決して多い方ではないんじゃないか、と思います。』 (2005/07/02 11:54)

5: こじま 『「犬の系図」が気になって『ベルカ、吠えないのか?』を読み始めました。PCで縁戚メモをとりながら読んでいるので電車の中で読めません...』 (2005/07/13 13:46)

2005/06/28(火) アルレッキーノの柩とかフィンランドとか

日常

[]アルレッキーノの柩 / 真瀬もと (2) 読了

ISBN:4152086475

 楽しめる作品。紹介文はガジェットを前面に押し出していたけれど、どちらかというと主人公を初めとする人々の心情の動きが主体となるおはなしだ。

 小道具の扱いは意外にあっさりしている。特に「十二人の道化クラブ」に集う人々はもっと奇人揃いで、あやしい会則ももっと前面に出てきてもよかったのではないかと思う。芦辺拓やマイケル・スレイドみたいな、呆れたガジェット偏愛を期待してしまったのだが、そういう趣旨の作品ではない。

 ただ、登場人物の描き方もけっこうあっさりしているので、もっと執拗にねちねちと描いてくれてもよかったと思う。

[] 雪中の奇跡 / 梅本弘  (1)

ISBN:4499205360

 1939年。ソ連は人口370万の小国フィンランドに侵攻。旧式な装備の小規模な軍隊しか持たないフィンランドはあっさり敗れるかに見えた。だが、彼らは抵抗を続け、次々とソ連軍を壊滅に追いやる。その善戦は「雪中の奇跡」として世界に報じられた……という、「冬戦争」の全貌をまとめた書物。

 貧弱な軍隊で圧倒的な敵に挑むというシチュエーションが泣かせる。私にとっては、世界の中心で会いににいきます、とかそういうのよりも泣ける。

 著者もフィンランド軍に感情移入するあまり、ときどき地の文でフィンランド軍のことを「我々」なんて書いていたりする。別に『裁くのは誰か?』ISBN:4488256023みたいな趣向ではない(と思う)。著者はフィンランド人ではないので、『病める巨犬たちの夜』でもないはずだ。……というかですね、文章がとても下手なのが泣ける。

 そんなわけで泣いてばかりです。おもしろいけど。

2005/06/27(月) Musical Baton

日常

Musical Baton

mixi経由で霜月蒼さんから。最近、あちこちで見かけるアレだ。

「○○な人へのn個の質問」みたいだなあ、と思いつつ……

コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量

24GB。

最後に買ったCD

Sentenced "The Funeral Album"

ISBN:B0007Y08VK

フィンランド産ゴシック風メタルバンド、最後(嗚呼)のアルバム。

今聴いている曲

で、そのアルバムの中から"The end of the road"。もうおしまいですか……

よく聴く、または特別な思い入れのある 5 曲

最近よく聴くのはこんな感じか。なお、アルバム単位にした。

!Motorhead "No Sleep'til Hammersmith"

ISBN:B00005NHO3

サイト名の由来はコレ。最初から最後までヤケクソ気味の轟音がとぎれることなく鳴り響く。かっこいい。

!Black Crows "The Southern Harmony And Musical Companion"

ISBN:B000062XB3

渋い。

!Black Label Society "Mafia"

ISBN:B0007IA58C

骨太。ザック・ワイルドはだんだん歌い方がオジー・オズボーンに似てきているように思う。まあ、もともとオジー・オズボーンのところにいたわけだが、だからといって歌い方が似るのは不思議だ。

!Sentenced "The Cold White Light"

ISBN:B0000695TK

もともと荒涼とした雰囲気を醸し出すのが巧みだったけど、それが頂点に達したのがコレかな、と思う。

!The 69 Eyes "Paris Kills"

ISBN:B0000677FY

これまたゴシック風。Sentencedが荒野の激情なら、こちらは都会の憂鬱といったところか。

バトンを渡す5人

ふつうに回答しておいてなんですが、こういう「すべての人はつながっていて云々」みたいな空気を醸し出そうとするモノはあまり好きではないので、ここで止めちゃいます。あしからず。

女刑事の死

ミステリ
ASIN:4151756019ロス・トーマス / 藤本和子訳 / ハヤカワ・ミステリ文庫

(解説)ゲームはポーカー・フェイスで

 ディプロマシーというゲームをごぞんじだろうか。

 プレイヤーの数は六、七人。各自が二〇世紀初頭のヨーロッパ列強各国を受け持って、自国の勢力拡大を目指してしのぎを削る。サイコロを振ったりカードを引いたりという不確定要素は皆無で、プレイヤー同士の駆け引きがものをいう。史実の列強のように二枚舌外交を繰り広げて秘密協定を結び、ときには裏切りも交えつつ、合従連衡を繰り返して覇権を目指す……という、複雑怪奇な国際関係の雰囲気をうまく再現している。純真な方にはおすすめできない。相手を欺くことも辞さない、冷徹な交渉を楽しむゲームなのだ。

 一対一の駆け引きではない。それぞれの利害を抱えた多数の陣営による、錯綜した駆け引き。それは、ロス・トーマスが描く、多彩な登場人物の織りなす複雑な駆け引きの絵図にどこか似ている。



 ロス・トーマスのデビュー作は一九六六年の"Cold War Swap"。日本では『冷戦交換ゲーム』という題名で刊行された。

 舞台は東西冷戦下のドイツ。腕利きの情報部員パディロは、米ソの情報機関同士の密約によって、ソ連に亡命した数学者を取り戻すのと交換に、ソ連に引き渡されることに。所属機関に裏切られたパディロを、親友である酒場の経営者マッコークルが助けに向かう。

 冷戦を背景にしながらも、米ソの対立とはまったく別の対立軸を描いてみせたこの作品には、後の作品にも共通するトーマスの個性がたっぷり詰まっている。

 たとえば、癖のあるキャラクターの造形。あるいは、登場人物どうしの複雑な利害関係の網。同じ側に属していても、一枚岩なんてことはありえないのだ。そして、そんな構図の中で描かれる、裏切りと密約が絡み合ったコン・ゲーム風の騙し合い。

 キャラクターの造形、そして軽妙な会話の楽しさは、トーマス作品の土台を支える重要な要素である。また、登場人物たちの織りなす人間関係と、そこから導かれる先の読めないプロットは、トーマス作品ならではの独特のものだ。彼の物語の展開は、ときに難解と評されるくらいに錯綜している。というのも、登場人物たちが、さまざまな場面で相手と自分の手札を見極めて、虚々実々の駆け引きを繰り広げ、事態を複雑にしてゆくからだ。

 デビュー作の邦題にある「ゲーム」という言葉は、原題にこそ含まれていないものの、ロス・トーマスの作品世界を的確に表している。ここには、単純な熱血漢などいない。誰もが冷徹なゲーム・プレイヤーなのだ。勝負に臨むときはポーカー・フェイス。感情をあらわにすることはほとんどない。

 もっとも、ゲームの合間には、ふと心の底をあらわにする瞬間がある。このさじ加減もまた、トーマスならではのものである。



 本書『女刑事の死』も、そんなトーマスらしさを十分に備えた作品だ。

 妹の死を知らされた兄が、故郷の街に帰ってきて事件の真相を探る……という展開だけなら普通のミステリだ。だが、彼は実はある任務を帯びていて……と、次から次へと別のプロットが飛び出す。それでいて、物語は破綻することなく進行する。構成の緻密さでは、本書はトーマス作品の中でも頂点に位置する。

 主人公ベンジャミン・ディルは、ゲーム・プレイヤーとしての姿勢を貫いている。特に身を守るための切り札の残し方は巧妙で、ワシントンという政治の中枢で生き延びているだけのことはある、と思わせる。また、交渉のためにいささか過激な行動に及んだことを指摘されるくだりも印象深い。
「おれはずっとああいうやりかたをしてきたんじゃないかな」
「でも、演技ではあるんでしょ?」
「そうさ」とディルはいった。「演技さ」ほんとにそうなのだろうか、と彼には確信がなかった。
 演技なのかどうか、当人も確信が持てないくらいに、駆け引きのための振る舞いが身にしみついている。

 もちろん、ゲームの最中はポーカー・フェイス。感情を吐露することはほとんどない。だが、ディルが決して冷淡な人間ではないことは、あのラストシーンをお読みになった方ならばおわかりだろう。右の引用部で言及されている過剰な行動も、亡き妹を思うがゆえのものだったのかもしれない。



 語るべきことはまだまだたくさんあるけれど、そろそろ終わりにしよう。

 ロス・トーマスは一九九五年に亡くなるまでに二十五の長編を発表し、そのうち十六作が翻訳された。だが、二〇〇五年六月現在、新刊として入手できるのは本書だけである。

 本書が初めて訳されたのは一九八六年。それまで「好事家向け」だったトーマスの人気が上昇するきっかけになったのがこの作品で、本書以降の邦訳作品は年末の人気投票にも顔を出すようになったという。

 本書のハヤカワ・ミステリ文庫での復活をきっかけに、多くのミステリ・ファンのもとに、再びロス・トーマスの数々の名作が届くようになることを願っている*1

*1 : 2008年1月現在、他の作品はまだ復活していない。悲しい。

2005/06/23(木) ロス・トーマスとか

日常

[] 女刑事の死 / ロス・トーマス

ISBN:4151756019

 解説を書かせていただいた本が届いていた。以前ミステリアス・プレス文庫として出ていた本の、ハヤカワ・ミステリ文庫での再刊である。

 実はこれ、ロス・トーマスとしては異色の作品なのですね。マジメなところが。他の作品だと、登場人物はみんな必要以上に肩の力が抜けてたりするのだけど。願わくば、こいつが異色作であることが明確になるくらいにロス・トーマス作品がたくさん復刊されますように。

 ちなみに帯は「九代目林家正蔵氏絶賛」。氏が熱心なミステリ好きであるという事実を知ったのは、たしかスチュアート・カミンスキーのリーバーマン刑事ものを読んだときだった。なにしろ「解説・林家こぶ平」である。そういえば朝日新聞の記事でも、「私のヒーロー」としてあげていたのがマット・スカダーだった。

1: 杉江松恋 『あれ?いつの間にかblog化している。九代目は、文章になると途端にへタレになって毒にも薬にもならないことばかり書くのが難点です。...』 (2005/06/23 15:22)

2: ふるやま 『あはは。無難、ってのはあるかもしれませんね。』 (2005/06/24 25:33)