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2008年7月の日記

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スノウブラインド

ミステリ
スノウブラインド 倉野憲比古 / 文藝春秋

不吉な伝説に彩られた洋館・蝙蝠館。館の主、ホーエンハイム教授に招かれた学生たちが集まった夜、惨劇の幕が上がる……。

というわけで、吹雪に閉ざされた洋館での連続殺人、である。
2008年の新刊で、ここまで「いかにも」な状況設定。これで正攻法の謎解きが繰り広げられたりしたら、かえって失望する。いかに無茶な方向に持っていくか。どんな反則をしてくれるのか、と期待してしまう。

で、そういう期待には応えてくれる作品である。あまりに無茶なのでちょっと嬉しくなってしまった。

著者の考えは、登場人物たちの探偵小説談議からもうかがえる。
人間の手によって産み出された探偵小説も、ひとつの芸術的有機体としての生命を持つならば、謎から解決へと直線的に進むのではなく、さっきも言ったように、謎また謎へと円環しなければならない。
推理小説って、大抵合理的な解決がついちゃうでしょ? あれがどうもダメ。合理、合理で押し切られるから、なんだか後に残らないっていうか
そのせいか、この物語も微妙にひっかかる点を残したまま終わってしまう(私が何か見落としているのでなければ)。
ただ、単に解決せずに宙吊りにするのは「謎また謎へと円環」とは違うので、そのあたりがやや不満。

1: 夏来 『へええ、それは早速入手せねば。』 (2008/07/08 26:00)

2: 古山裕樹 『へんなもの好きな方にはおすすめです。』 (2008/08/27 22:53)

ソリューション・ゲーム

ミステリ
ソリューション・ゲーム 伊園旬 / 宝島社

ブレイクスルー・トライアル』の作者の第二作。

副題は「日常業務の謎」。いわゆる「日常の謎」だったら犯罪が絡むことはほとんどないけれど、「日常業務」となると話は別だ。コンプライアンスがどうのこうのとるさい昨今、対応を誤ると会社の命取りになりかねないケースもある。

大学卒業後も定職につかない東一俊は、父が役員を務める大企業に就職するはめに。入社早々に出向を命じられて向かったのは、社長と経理部長の二人しかいない小さな関連会社。業務のほとんどは、親会社から持ち込まれるトラブル解決だった。ただし、その中には、法令遵守の観点からは危険な依頼も……。

第一話の「漏曳?」では、厳重に守られたサーバから、200人の個人情報が流出した理由を探る。ネットワーク経由で流出した様子もなく、CD-RやUSBメモリのような媒体が用いられた形跡もない。ではどうやって……? という謎を解くのだ。
探偵役を務めるのは社長の染屋。東はいわばワトソン役だが、その手のキャラクターにありがちなボンクラではなく、結構有能な人物である。この二人が、謎を解く以外にもさまざま方法で問題を解決する。時には不法侵入もやらかすし、「スティング」ばりの騙しを仕掛けたり……。主な業務はあくまでもトラブル解決。だから謎を解くだけでなく、その後の処理方法も提示しなくてはならない。そうした「落としどころ」の作り方も重要なポイント。
そうそう、連作短編形式のミステリならばぜひ欲しい趣向も、しっかり仕掛けられている。

ちなみに染屋は鷄ばかり食べている男として描かれているが、焼き鳥をどのように食べるのかが気になるところである。

1: イゾノ 『しまった! それをやるのを忘れていました(笑)。』 (2008/07/09 23:05)

2008/07/03(木) このミス大賞など

日常
また忙しさにまぎれてえらく間があいてしまった。
「このミス大賞」の一次選考も、ひとまず候補作を選び終えたので、忙しさも一段落……だといいな。