【日常】
メッセージ欄
2006年2月の日記
▼ 悲劇週間
【小説】
矢作俊彦 / 文藝春秋
20歳の堀口大學が、外交官の父に呼ばれて、その任地であるメキシコに旅立つ……という物語。
つねに正義を貫けるわけではない外交の場で生きる父と、それを許せない息子との関係が話の軸になっている。
ただ、読んでいてまず印象に残るのは、「明治の日本青年」が外国の風物に接したときの新鮮な驚きだ。「何を」見たのかよりも、「どのように」見たのかを語るところに力を注いでいる。ストーリー自体はほとんど進まず、主人公がいろいろなものを眺めて回っているだけの場面でも、熱気と興奮を感じさせる。
ところで、登場する仏語教師の名前が「ドン・ルイス・ペレンナ」で、その息子が「アルセーヌ・ダンドレジー」だったりするのだが、これはやはり堀口大學がルパンものを訳していることに基づいたお遊びだろう。この先生、彼に『奇岩城』とおぼしき本をプレゼントしているのだ。
20歳の堀口大學が、外交官の父に呼ばれて、その任地であるメキシコに旅立つ……という物語。
つねに正義を貫けるわけではない外交の場で生きる父と、それを許せない息子との関係が話の軸になっている。
ただ、読んでいてまず印象に残るのは、「明治の日本青年」が外国の風物に接したときの新鮮な驚きだ。「何を」見たのかよりも、「どのように」見たのかを語るところに力を注いでいる。ストーリー自体はほとんど進まず、主人公がいろいろなものを眺めて回っているだけの場面でも、熱気と興奮を感じさせる。
ところで、登場する仏語教師の名前が「ドン・ルイス・ペレンナ」で、その息子が「アルセーヌ・ダンドレジー」だったりするのだが、これはやはり堀口大學がルパンものを訳していることに基づいたお遊びだろう。この先生、彼に『奇岩城』とおぼしき本をプレゼントしているのだ。
▼ 2006/02/20(月)
【日常】
■[読了]トーテム / デイヴィッド・マレル
来月刊行の「完全版」の解説執筆用に再読。
旧版はいろいろなところを削った短縮版。完全版の方は、田舎町のパニックを描くことよりも、主人公と事件との向き合い方に重点を置いていて、冒険小説として楽しめる。何より人物描写が深化しているので、旧版よりも心に響く小説になっている。
あと、クライマックスが全然違う展開に。旧作を読んだ方も、完全版を読んだ方がいいと思う。