日本語自然文検索実験で遊んでみる。土曜日も出勤なのに。
▼ 2004/02/03(火)
■本にまつわる連想
今週は書店が開いてる時間に帰宅できそうにないので、昼休みに職場近くの書店で時間を潰し、本を買い込んで帰る。
S.J.ローザン『苦い祝宴』ISBN:4488153062 , ラース・フォン・トリアー『ドッグヴィル』ISBN:4048973320 , 田雁『ブラックチャイナ』ISBN:4901784293 などなど。
最後の『ブラックチャイナ』の副題は「規範なき大陸の暗黒年代記」。このサブタイトルにつられて買ったと言っても過言ではない。
もうすこし自分の思考をふり返ってみると、
#「大陸」「暗黒」の文字を見る
#マイケル・スレイド『暗黒大陸の悪霊』ISBN:4167661462を連想
#小説の舞台はバンクーバー
#同じ街が舞台の馳星周『ダーク・ムーン』ISBN:4087745589 を連想
#『ダーク・ムーン』に限らず馳星周の小説には中国系の犯罪者がよく出てくる
#『ブラックチャイナ』
#おお、つながった!
冷静に考えてみると、連想がつながったからといって購入すべき理由はまったくない。だが、それでも買った当人は納得できてしまうのがマイケル・スレイドの恐ろしいところである。
ところで『暗黒大陸の悪霊』といえば、人と話しているときに何度か間違えて『暗黒大陸の浮気娘』と呼んでしまったことがある。「浮気」は『暗黒大陸の悪霊』という物語のキーワードのひとつでもあるのだが、間違いの理由はもちろん『暗黒太陽の浮気娘』ISBN:4151000100 だ。
『暗黒太陽の浮気娘』の舞台はSFファンの祭典。会場で起こった殺人事件に、新人作家が奇策を用いて謎解きに乗り出すというお話。舞台設定でSFファンの気を引きつつ、この奇策が昔のミステリへのある種のオマージュにもなっていて、そちらがお好きな人のハートもわしづかみ、という素敵な作品だ。
……こう書くとなんか傑作みたいだな。いや、私は傑作だと思うのだが。ミステリとしては別にたいしたことはないし、ベスト選びのたぐいに名前が出てくることはまずないだろうし、感動的でも衝撃的でもなければうまさが際立つわけでもない。とはいえ面白かったから忘れることもなくて、時々思い出しては愉快な気分になる──そういう慎ましやかな傑作である。バカバカしくてくだらない話なんだけどね。
▼ 2004/02/02(月)
■受賞
桐野夏生『OUT』がいつのまにか英訳されていて、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)のエドガー賞にノミネートされたそうだ(→http://www.nsknet.or.jp/~jkimura/edgar04.html)。
ほかの分野に比べると、日本はミステリに関してはこれまで圧倒的に輸入超過であったわけで、そういう中での「日本発」の成果として非常に喜ばしいことである。……なんてことは別にどうでもいいのだが、もしも受賞したら、桐野夏生は江戸川乱歩の名を冠した賞とエドガー・アラン・ポオの名を冠した賞の両方を受賞した、稀有な例になるわけだ。
※追記:残念ながら受賞にはいたらず。
▼ ミステリアス・ジャム・セッション

ミステリマガジンで連載中の日本人作家インタビュー記事をまとめたもの。本にする際に、各回(=各作家)に囲み記事を追加して、インタビューの舞台裏について語っている。おかげで、なかなか親しみやすい読み物になっている。
実を言うと、雑誌で見たときはちょっと堅い印象があった。今にして思えば、それは「堅さ」と言うよりは「密度の濃さ」だったのかもしれない。
というのもこの本、インタビューと銘打っているものの、インタビュアーと作家の会話形式を取っているわけではない。著者自身の文章でインタビュー対象の作家について語りつつ、要所要所に作家自身の声を差し挟むという形をとっている。会話体が持つはずの「すきま」が、著者による作家論で埋められているのだ。
そういうわけで、舞台裏について語っているのはプラスに働いていると思う。ちょっとした息抜きになっているだけでなく、雑誌連載では表に出てくることのなかったインタビュアー自身の顔──酒好き(でミステリや音楽も好き)──も見えてくるからだ。本一冊分の付き合いになるんだから、たとえ主役は作家だといっても、インタビュアーがどんな人なのかが分かるに越したことはない。