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素粒子

小説
ISBN:4480421777ミシェル・ウエルベック / 野崎歓訳 / 筑摩書房

この本の存在を教えてくれたのは、大学の後輩に当たる男。酒の席で、この本を読んだかと聞かれたので、読んでないと答えたところ、これはきっと気に入るはずだと薦められた。

大当たりだった。いやあ、とんでもない小説を読んでしまった。

主人公は奔放な母から生まれた、それぞれ異なる父を持つ二人の男。兄のブリュノは、女漁りが趣味の学校教師。そして弟のミシェルは、やたらと禁欲的な素粒子物理学者。物語は、この二人の半生をつづる形で進行する。さえない中年男の乱れた性生活とか、人付き合いの悪いインテリ野郎の地味な生活なんぞが延々と語られるわけだ。えらくこぢんまりした話だって? そうかもしれない。こんなふうに紹介すれば、ずいぶんおとなしい小説にしか見えないだろう。

でも、これが面白いんだな。性と俗、じゃなかった聖と俗の混交とでも言うのだろうか。若いねーちゃんのあんなところが見えちゃったよへっへっへ、という中年おやぢの淫靡なヨロコビと、二十世紀ヨーロッパ文明がたどり着いてしまったひとつの行き詰まりとが、まったく等価に扱われる。というか、この二つはつまるところ同じものかもしれない。

えー、あとは読んでのお楽しみ。結びの一行の壮大さはもうSF。

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