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モルグ街の殺人

ミステリ
 ミステリの起源、とされている作品である。
 年の初めだから、ってわけでもないが、なんとはなしにこれを手にとって読んでみた。

 いまどきのミステリに比べれば、おそろしくシンプルな物語である。探偵役のデュパンと語り手の暮らしぶりが紹介され、モルグ街で二人の女性が殺された事件が語られる。デュパンは一度現場を調べて真相を分析し、それを語り手に説いて聞かせる。被害者や証人たちの人物描写などほぼ皆無。デュパンだって単なる推理機械だ。

 むしろ、「おはなし」以外のところが興味深い。

 たとえば、冒頭での分析的知性に関する講釈。これを「いつも書いてる幻想小説とはちょっと違うぜ!」という熱意のあらわれ、と見るのはうがちすぎだろうか。

 あるいは、事件当夜に現場で聞かれた声に関する記述だ。ある証人は、声の抑揚からそれをスペイン語だと言い、また別の証人はイタリア語、あるいはドイツ語やロシア語や英語だと言い、さらにはフランス語だと言い出す外国人まであらわれる始末。大都会としてのパリと、そこに生じる「隣は何をする人ぞ」的なコミュニケーションの断絶を感じさせる。

 もうひとつは、この事件の犯人が関係しているので、ちょっと書きづらい。
 というわけで、「モルグ街の殺人」を読んだことのない方はここまで。
 では、この事件の真相について書いてしまおう。

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