▼ 2006/06/07(水)
■[読了]文章探偵 / 草上仁
この本の校閲を担当された方の苦労がしのばれる。
なにしろこの小説、登場人物の誤字や誤変換、さらには表記の癖なんかが謎解きの重要な手がかりになっているのだ。なぜか変換できない、と思ったら実は伏線だったりする。誤字や表記のばらつきには、ちゃんと意味があるのだ(……という話の都合上、作中人物の書く文章は誤字が多い)。
タイプミスとおぼしき誤記をもとに、書き手がローマ字入力かカナ入力かを推理するのは序の口(←これは日常でもよくありますね)。「用件」を「要件」と書き間違えるのは、仕事で「要件」という言葉をよく使う業種の人である、とか。
こういう話が好きな人とか、仕事で文書の誤字をチェックすることが多いとか、そういう方には面白いと思う。『文章探偵』なんて題名にそそられる人なら、楽しく読めるはず。
で、これは伏線の類ではなく、単なる誤記だと思うのだが……p.235で、隣り合っているのは『U』と『O』ではなくて、『U』と『I』ではないだろうか。「かすか」を打ち間違えて「かしか」になった、という文脈なので。
■[読書中]悪魔の栄光 / ジョン・エヴァンズ
まだまだ序盤。『血の栄光』の葬儀シーンと同じく、本書もまた「イエスの自筆文書」という印象深いエピソードから始まる。
半世紀以上昔の小説でよかった。これが2~3年前に書かれた小説だったら、今ごろ帯に「ダ・ヴィンチ・コード云々」とか書かれているところだった。
■絶賛! 号泣!
歴史ネタが出てくるだけで帯に「ダ・ヴィンチ・コード云々」と書くのも、そろそろ下火になってきたようでほっとしている。そういえば「ダン・ブラウン絶賛」という帯のついた本もある。
そう、ダン・ブラウンは今や絶賛する側の人である。歴史伝奇ネタ方面では当面重宝するだろう。
ところで、絶賛界の巨峰といえばやっぱりスティーヴン・キング。「キング絶賛」といえば、「面白いかどうか」といった雑念とはもはや無縁。あらゆる価値判断から独立した、"純粋絶賛"とでもいうべきものである。
私が読むものでよく遭遇するのは「クライブ・カッスラー絶賛」。作品のできばえはともかく、傾向はきわめて明快。世界をまたにかけた、細かいところを気にしないほうがよい冒険活劇である。
▼ 2006/06/06(火)
■[読了]血の栄光 / ジョン・エヴァンズ
再読。非常に満足。
フリーランスとして生きてゆくためのしたたかさを備えた主人公(減らず口をたたいて我を貫きながらも、譲るべきところでは譲っている)。ストイックな描写。冒頭の異様な光景の意味がきれいに解き明かされる点に代表されるように、ミステリとしての構成は凄まじく緻密。自らの内面をむやみに語らないスタイルならではの驚きも用意されている。ラストの酷薄さも、今となってはどこかで見たような気もするけれど、それでも素晴らしい。
■[読書中]文章探偵 / 草上仁
中盤へさしかかる。新人賞の応募原稿に酷似した殺人事件が起きたり、主人公の身辺の事情が明らかになってきたり。
文章プロファイリングの過程を読んで、「ちょっと恣意的じゃないの?」と思う部分もあったのだが、そのへんを逆手に取るような展開に。こりゃいいね。
ちなみに、主人公が審査を務める新人賞では、個人情報保護の観点から、応募者の住所その他を主人公には明かさないようにしている。
が、私の経験の範囲では、原稿と一緒に応募書類もそのまま送られてきたりする(出版社によっては、ちゃんと個人情報を伏せているところもあるそうだ)。こんな扱いの難しいものまで預けられても……と少し困ってしまう。
▼ 2006/06/05(月)
■勝因
一度だけだと単なるまぐれの可能性もあるので、調子に乗って偉そうなことを述べるのは控えておきます。強いていえば、締切が来る前に書き始めたことでしょうか。>kozukataさん
まあ、ここに読みかけの本のことをあれこれ書いていたのも効いているかもしれません。もちろん、原稿にはここに書かなかったことも入れていますが。
なお、2時間どころではない前倒しです!>杉江さん
■[このミス大賞]去年の本数とか本を読む速さとか
去年は40本+αでした。>takagiさん
読むスピードは、こういう生活をしてると多少は上がるんじゃないかと思います。ただ、量を追い求めるのもあまりよくないですよね。時間をかけてじっくり読んだ方が面白い本も多いですから。そんなわけで、同じ本を再読することもよくあります。
■[入手本]悪魔の栄光 / ジョン・エヴァンズ
時は1940年代、私立探偵ポール・パインの一人称で綴るハードボイルド。「栄光」シリーズ第2作。第1作と第3作、そして番外編の『灰色の栄光』は訳されながら、これだけはダイジェストだけの紹介にとどまっていた。
そういえば典型的な私立探偵小説って、長いこと読んでないような気がする。