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カノン

ノワール

妄想ダメ親父が拳銃片手に大暴走。クソどもは皆殺しだ!

カノンギャスパー・ノエ / 奥田鉄人 / 斎藤敦子訳 / 角川書店

 ATTENTION!

 こいつはヤバい作品です。ページを繰るときはご注意を。

 生まれて間もなく親に捨てられ、娘に手を出そうとした男に暴力をふるって刑務所に行き、出てからはヒモとして生きている中年男。信じられるのは自分だけ。アラブ人とホモ野郎に敵意をつのらせ、生き別れの娘の姿を追い求める男。ヒーローと呼ぶにはあまりにも薄汚いダメ人間だが、どこかハードボイルドな空気を身にまとっているのも事実だ。

 世間とうまく付き合えずに生きてきたそんな中年男が、ふとしたきっかけで暴発する。この男の世界観はいびつで自分勝手で冷酷そのもの。

 ATTENTION!

 世間の常識からは許されないようなカタルシスを味わえます。良識派を自認されている方はご注意を。

 クライマックスの妄想親父のキレ具合は果てしなく官能的ですらある。

 これ、ギャスパー・ノエによる映画を奥田鉄人がコミック化……というのは正しくないな、コミック・ノベル化したものである。小説でもあり漫画でもあり、という表現方法がここではかなり効果を上げている。主人公の顔はその頑なさをあますところなく表現しているし、彼のいかれた思考を綿々と綴る文章も読ませる。タイポグラフィもかなり自由に使いこなしている(特にクライマックス)。

 鬼畜そのもののフィニッシュは、それでも哀切に満ちている。

 かくも刺激的な作品が世に出るのは楽しいが、こんな作品がリアリティを帯びてしまう現実というのは……。

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