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ドラキュラ戦記

ホラー

吸血鬼が闊歩する、豪華な戦争活劇小説

ドラキュラ戦記キム・ニューマン / 創元推理文庫

時は1918年、第一次大戦のさなか。撃墜王・リヒトホーフェン率いるドイツ吸血鬼戦闘航空団が、西部戦線の空を血に染める。ドイツ航空団の拠点マランボワ城を探る指令を受けた英国情報部員は西部戦線へと向かう。

 一方、祖国アメリカを捨て、吸血鬼として生き続けるエドガー・ポオもまた、ドイツ皇帝のある依頼を受けてマランボワに向かう……。

19世紀末の大英帝国にドラキュラが君臨するという『ドラキュラ紀元』の続編。

ドイツ航空団の秘密兵器は、吸血鬼ものならではの怪奇趣味に満ちている。なにしろドイツ軍の上層部にいるのは、カリガリ博士やマブゼ博士といった「悪の科学者」なのだ(そういえば、リヒトホーフェンの二人の従僕って、20年代のドイツで「吸血鬼」の異名をとった実在の連続殺人者だ)。

そう、この作品の最大の特色は多彩な登場人物にある。リヒトホーフェン、マタ・ハリ、チャーチルといった実在の人物はもとより、さまざまな文芸作品や映画の作中人物が何人も登場する。ドイツの悪の科学者を筆頭に、前線で奇怪な人体実験を重ねるドクター・モローと助手のハーバート・ウェストやら、負傷して下半身付随になってしまうチャタレイさん、はてはフィリップ・マーロウの生みの親、レイモンド・チャンドラーまで顔を出す。

最も印象に残るのが、クライマックスで重要な役割を演じる、ある人物の存在だ。本当はこれを書きたかったのではないかと思えるほどで、著者がいかに吸血鬼好きかがうかがえる。

巻末には前作同様、膨大な登場人物事典が付いている。作中にでてくる人名のほぼすべてを網羅している。なにしろ、脇役にいたるまでほとんどすべての登場人物が実在、または原作つきなのだ。

 この事典、訳者が作ったようだが、もしかしたら翻訳よりも大変だったんじゃないだろうか。

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