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永久凍土の400万カラット

冒険小説
永久凍土の400万カラット ロビン・ホワイト / 文春文庫

 シベリアのダイヤ鉱山で何かが起きている。誰かが、ダイヤを不当に横流ししているのだ。ノーヴィクの親友は調査を始めたが、何者かに暗殺されてしまう。その魔手は、やがてFSB(連邦情報局)の捜査官を、そしてノーヴィクをも狙う。いったい、鉱山で何が起きているのか? ノーヴィクは、仲間を連れて、荒野のまっただ中に広がる鉱山町へと乗り込むが……

 エリツィン政権末期のロシアを舞台に、正義感の強い主人公が巨大な腐敗の構図に挑戦する冒険小説。主人公は地方公務員で、義憤とちょっとした機転の他にはこれといった特技があるわけでもない。だが、彼を支える脇役は強力だ。異常に戦闘能力の高い元チェチェン・ゲリラの老人に、航空会社で一財産築いた飛行機乗り。頼れる仲間とともに、ノーヴィクは巨大な陰謀に立ち向かう。

 シベリアの苛酷な気候も印象深いが、それ以上に興味深いのはマフィアが君臨した当時のロシアの混乱ぶり。ソ連崩壊後のモラルの崩れた社会を背景に、きわめて稀な正義感を持ち合わせた男が、単純明快痛快無比の冒険娯楽活劇を繰り広げてみせる。主人公ノーヴィクは義憤に駆られて無鉄砲な行動に出ることの多い男だが、要所ではしたたかな智恵を発揮してみせる。当時のロシアのような混乱をきわめた地域で、腐敗せずにいられるには、それなりの強さと知性が必要だ。
 序盤はあくまでも静かに、水面下の駆け引きを。そして徐々に緊張を高めながら、鉱山で死闘を繰り広げるクライマックスへとなだれこんでいく。

 ちなみに、当時のロシア大統領エリツィンも登場する。我々が想い描く「いかにも」なエリツィンとして。
エリツィンはティーカップをのぞきこむと、大声で言った。「もっとしかるべきものをお出ししろ!」
霜で覆われたボトルが登場し、グラスが皆に回された。
 プーチンは酒は飲まないらしいが、本人が冒険活劇の主役ぐらいは務められそうだ。暴れん坊将軍か。

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